表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/53

アリスの秘密

迷宮から戻ったルークとアリスは、静かな村の中を歩いていた。

 薄橙色に染まる空の下、家々の窓からは暖かな光が漏れ、子供たちの笑い声が聞こえる。

 それは、昨日までのルークには少し遠い風景だった。


 「ここに住むの、初めてなんだ」

 アリスがぽつりと言う。

 ルークはその言葉に視線を向ける。

 「ずっと、外の村にいたんだけど……。ある日、魔物に襲われてね」

 小さく笑うアリスの目は、どこか遠くを見ていた。


 「それで、一人になった。薬師だったおばあちゃんも、村の人たちも、いなくなっちゃった」

 ルークは言葉に詰まる。

 何と言えばいいのか、わからなかった。


 「でも、この村なら……何かが変わる気がしたの」

 その言葉は、まるでルーク自身にも重なって聞こえた。



 翌日、ルークはガルドに頼まれ、鍛冶場で素材を運ぶ手伝いをしていた。

 「お前、迷宮に行くたび強くなってるな」

 そう言いながらガルドは笑う。

 「迷宮は、ただの試練じゃねえ。村に生きる者の誇りだ」

 重い鉄を持ち上げながらルークは頷く。

 「わかってる。だから、俺は――」

 そのときだった。



 「ルーク様はいらっしゃいますか!」

 甲高い声とともに、村の門から馬車が入ってきた。

 それは、豪奢な装飾が施された馬車で、明らかにこの村には不釣り合いなものだった。



 馬車から降りてきたのは、騎士と、それに続く一人の少女だった。

 淡い金髪を風に揺らし、青いドレスを纏ったその少女は、ルークを見るなり駆け寄ってきた。

 「あなたが、ルークですね!」

 「え……あ、はい?」

 ルークは困惑する。


 少女は両手を胸の前で組み、瞳を潤ませながら告げた。

 「やっぱり……間違いありません! あなたこそ、私の運命の人!」

 「……はい?」

 村の皆が沈黙し、空気が固まる。


 アリスは、隣でじっとルークを見つめていた。



 その少女は、王国の第二王女・セレスティアだった。

 彼女はルークが「運命の力」を持つと、ある占い師に告げられ、探しに来たという。

 「ルーク様、どうか……私と結婚してください!」

 「いや、ちょっと待って!? 俺、そんなつもりじゃ!」

 ルークは必死に否定するが、その姿がさらにセレスティアの好感度を上げることになる。


 「控えめなところも素敵……!」

 「違う違う違う!」

 村人たちは、ぽかんと口を開け、誰もが状況についていけなかった。



【ステータス更新】

■ルーク

・称号獲得:「王女に選ばれし者」

・効果:王国関係者の親密度が上がりやすくなる。

・隠し効果:???



 その夜、アリスは焚き火の前でルークに話しかける。

 「……あなた、本当に結婚するの?」

 「いや、無理だよ! 俺なんて村人だし、王女となんて!」

 だがアリスは、じっとルークを見つめる。

 「でも、あの王女は本気だった」

 その言葉は、どこか不安と嫉妬の混じったものだった。


 ルークは、そんなアリスの感情に気づきながら、答えを探していた。

 「俺は……まず、自分のことをなんとかしないと」

 その言葉に、アリスは小さく微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ