表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
混沌なき箱庭  作者: 天原ちづる
第3章 獅子と狼
15/86

3.獅子と狼 3-2

 沈黙は一瞬だった。

「ふぅん。面白いのは弟だけじゃねぇってか。というか、性格的にはお前の方が数段面白いな、葉月」

にやっと笑って、カーサが剣を引く。

腕を組んだまま成り行きを見守っていたブノワが、可笑しそうに笑った。

「なるほど。やはりカーサはたとえが上手いな。蛇とはよく言ったものだ」

「蛇……ですか?」

微かに眉間にしわを寄せる葉月。

蛇にたとえられて気分の良い女性などいないだろう。

だがカーサは意に介することなく、さらりと肯定する。

「なんかしつこそうだし、ずる賢いし、ぴったりだろ?」

「ひどい言われようですね。ではジークは何にたとえられますか?」

葉月が何気なく尋ねると、カーサは間髪を入れず答えた。

「黒豹」

「え?」

ジークの正体を知っている葉月は、驚いて目を丸くする。

その反応にカーサが首をかしげ、寝台のジークを見下ろした。

「何かおかしいか? なんかそんな感じがしねぇ? こいつ」

カーサがまったくの勘で言っていることに気付き、葉月は胸をなで下ろすと共にカーサの勘の鋭さに感心した。

苦笑を浮かべながら、首を横に振る。

「いえ。私もそう思っていたので驚いただけです」

女離れした膂力りょりょくといい、この勘の鋭さといい、この女親分は相当に侮れない存在だと確信する。

副長の方はまだよく分からないが、こちらも一筋縄でいく相手ではなさそうだ。

「ちなみに、こいつは赤獅子あかじしっていうこっぱずかしいあだ名がついてる」

ブノワがにやにや笑いながら、カーサを指さす。

指さされたカーサは、むっとした顔で指さし返した。

「お前だって青狼せいろうとか呼ばれてるそうじゃねぇか」

「は? 何だそれ? 初耳だぞ? どこで呼ばれてるんだ?」

驚いた顔をしたブノワに、カーサが追い打ちをかける。

「お前の部下が吹聴してたぜ? 部下の教育と情報収集がなっちゃいねぇなぁ」

「本当かよ。最悪だ……」

本気で嫌なようで、ブノワは頭を抱えてしまった。

葉月がそれを見て小首をかしげる。

「青狼なんてかっこいいと思いますけど、そんなにお嫌ですか?」

「じゃあ、君は白蛇の葉月とか呼ばれたいと思うのか?」

「死んでもごめんですね」

恨めしげな声で尋ねるブノワに、葉月は即行で否定の言葉を返した。

「だろう」

ブノワが葉月の言葉に深くうなづいていると、カーサが唐突に口を挟んだ。

「そうだ、ブノワ。葉月はお前の娘ってことにしろよ」

「は?」

「ちょっと待て、カーサ。今の話の流れからどうしてそうなる?」

カーサの爆弾発言に、ブノワと葉月は同時に戸惑いの声をあげた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ