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Ep.1.0 不穏な始業式と図書館の予告状

桜は散って萼ばかりが目立つようになった4月頭。東京湾沿岸部に位置する、東京都刹那区にあるきさらぎ学園では始業式が行われていた。私、暁七星が通う高校である。


校長「えー、本日は、えー、暖かい日和で、えー、えー、」


今はちょうど校長が挨拶している。ここの校長の話は定型文的な挨拶をダラダラと喋っているだけなので、眠り込みそうになるほどつまらないものである。ちなみに話の時間の平均15分くらいね。ところでこの校長「えー」と何回言ったんだ。


そんなことを考えていると、新理事長の話に移った。去年までの理事長は心臓発作で倒れたとか何とかで新しい人が来たそうな。まあ、歳だったから仕方ないのだろう。


理事長「皆さんこんにちは。新理事長の(キサラギ)薫です。授業等直接会う機会は少ないですが、皆さんの学校生活をよりよいものにしていこうと思っております。どうぞよろしくお願いします」


校長と同じで第一印象はありふれたおっさんだった。一つ違うところがあるなら、この人の話は一言二言で簡潔に終わったということである。これはありがたい。


その後他の教員の着任式があって始業式が終わる。


生徒たちは新しいクラスを確認するために外の掲示板にごった返していた。私も新しいクラスのメンバーは気になったが、人混みは嫌いなので落ち着くまで離れて待つことにした。


5分後。さて、そろそろ落ち着いたころだろうか。


七星「...なるほどねー」


名簿を確認すると私は2年E組に割り振られていた。去年同じクラスでそこそこ仲がよかった友達は全員別のクラスだった。


そしてメンバー構成を見てみると元同クラ1Aの陽キャ、元1Bのマジメ系、体育会系、地下アイドルとその取り巻きの4つのグループに分かれた。男子はあまり分からないけど、多分バリバリオタクの私の立ち位置はないも同然かもしれない。


七星「ぼっち確定演出ありがとうございまーす」


私は半ば諦めの気持ちで2年E組の教室に向かった。


教室に着くと予想通り女子たちはキレイに4つのグループに分かれていた。全員私が来たことには気付かずに話に夢中になっていた。こうなるのは名簿を見てから分かりきっていたことだけど少し寂しいものだ。


担任「はい、HR始めるから席に着いてー!」


すると新しいクラスの担任になった先生が教室に入ってきたので、生徒は話をやめて次々と席についた。


担任「えー、このクラスの担任になった白銀乙葉です。1年間よろしくお願いします」


新しい担任、白銀の教壇での挨拶はぎこちないものだった。新卒でいきなり担任になったのであろうか。


担任「今日は教科書を配布して連絡事項をお伝えして終わりです」


担任が慣れないせいか、教科書配布にかなり手こずり、なんと2時間もかかってしまった。


そしてHRが終わりやっと放課後になったので、私が所属しているオカルト研究会の部室へ向かった。


約1ヶ月ぶりに入る扉の向こうは電気がついていたので、誰かが既に来ているようであった。


七星「こんにちはー」


「ちわっす!」


軽快に挨拶をしたのはオカルト研究会の男子部員、花宮朱雀である。春休み前は黒髪マッシュだったが、今見たら茶髪で短めになっていた。


「あれ?花宮氏?久しぶり、随分雰囲気変わったね!?」


「そうそう、イメチェンしてみた。」


「へえ、前より良いじゃん!」


「本当?それはよかった」


「そういえば暁はどこのクラスになったの?」


「私は2年E組。花宮氏は?」


「俺はA組、結構離れてるね」


「授業で会うことはないか」


「あ、暁そういえば聞いた?伊木理(イキリ)は生徒会長になったからオカ研やめたんだって」


「伊木理?そんな奴いたっけ?」


「高一のとき6月の部会を最後に顔出してない金髪の」


「あー、あの生徒会長選でシャンパンコールしてたホストか」


「そうそいつ」


ちょうど二ヶ月くらい前の2月頭に生徒会長選があった。立候補者は複数人いたが、伊木理という男はご自慢のルックスとイケボで面食い女子とふざけた男子の票によって当選してしまった。


「部員がもう残り3人に減ったという訳で」


「そりゃ部存続の危機ですねぇ...うち1人は幽霊だし」


「新歓に期待するか。でもこんな廃部寸前の部活誰も入りたがらないか」


「どうだろう、オカルト好きな人を片っ端から勧誘したら少しは入りそうなもんだけど。部員多いとその分だけ補助金出るから幽霊でも良いから増えてほしいよねぇ」


「だよねぇ...」


話が一段落ついたところで、ふと思い出したことがあった。


「あれ、今日って何曜日だっけ」


「金曜日」


「やばい、2時からバイト入れてたからもう行かないと」


「そうなん?じゃお疲れ様!」


「お疲れー!」


私はそのままバイト先に向かった。



昇降口を出て僅か5分でバイト先の図書館に到着。というのも、その図書館というのはきさらぎ学園小学校附属の図書館だからである。


中高の図書館では主に図書委員が貸出作業や本の整理をしているが、小学校ではバイトがやっている。


高校生からOKとのことだったので応募してみたら即採用。時給が東京の最低賃金なので応募者は少ないのであろう。


「本返します!」


「あ、返却ボックス入れといていいよ!」


今日は中高の始業式であると共に小学校でも始業式だったので、いつもは私服の小学生も式服を着ていた。


「えー、ピってしてもらいたかったなぁ...」


「あ、えーと、ごめんね!今日は春休み明けで本を返す人多いから忙しくて!また明日ならピってできるよ!」


「分かった!明日また来るね!」


小学生、特に低学年はこだわりがある子もいるので少し対応に疲れてしまう。


「うーん...これは...」


「あれ、佐藤さんどうしたの?」


佐藤みよは私と同じく図書館でバイトをしている高校生である。

彼女はきさらぎ学園生ではないがここで働いている。


「あ、暁さん!何か返却ボックスの中に面白い手紙が入ってたよ!」


「面白い手紙?」


「これこれ」


佐藤さんが出したものは手紙というよりはカード状のものであった。


「予告状?」



予告状


明日の18時、貴殿のエリクサーを頂戴する。


†怪盗十面相†



「え、何これ?予告状?エリクサー?怪盗十面相?」


「多分小学生のいたずら?かな、これ将来見つけたら絶対恥ずかしいやつ」


「十面相って怪人二十面相の二番煎じかよw」


「でもこれ怪人じゃなくて怪盗って書いてあるよ」


「あ、怪人二十面相って元は『怪盗』二十面相になる予定だったらしいんだよね」


「え、そうなの?」


「盗っていう字が児童小説に相応しくないから『怪人』になったんだとか」


「へぇ、面白いな、児童小説にそんな規制あったんだ」


「どうするこれ、取っとく?」


「いや取っておいてもどこかで見つかったらこれ書いた子学校中で笑い者にされるよ」


「だよねー、じゃ勿体ないけど捨てよう」



//時は飛んでバイト終了後。


「それじゃあお疲れ様です!」


「お疲れ様でーす!」


「次の電車は18時15分。間に合うな」


駅へ向かっていると、中高校舎の方から喧嘩のような声が聞こえた。


「返せ!何たっていうんだ!」


「予告通りエリクサーを頂戴したのみだ」


「予告って何だよさっきから!人のもの取っていいわけねーだろ!」


「おい!待て!」


(あー、また喧嘩か。絡まれたら面倒くさそう)


私は声が聞こえる方を避けて帰路へついた。

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