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第7話 最初の発表回

楽しんで頂ければ幸いです。

エリカと協力して、ゴーレムの改良を進めていく事になったルイン。そんな彼がまず最初に問題として取り掛かったのが、ロック・ゴーレムの関節に関する問題だった。最初は良いアイデアが出なかったものの、ルインはとあるアイデアを閃くのだった。



~~~~

ルインが割れたクッキーをヒントにしてアイデアを閃いた翌日。朝。ルインはメリルを伴って、馬車でクリスフォル家の屋敷に向かっていた。


昨日はアイデアを思いついたものの、時間も時間だったので、アイデアの検証などは明日に、となってしまったのだ。


そんな屋敷に向かう馬車の中で、ルインはただぼうっと車窓の景色を眺めていた。

「あの、ルイン様?」

「ん?どうした?」

「ルイン様は、緊張していないように見えるのですが?それは私の検討違いなのでしょうか?」

「え?いやまぁ、少しは緊張してるけど、どうかしたのか?」

「いえ。何というか、これから実験があると言うのに、その割には落ち着いている様子だったので少し気になって」


「あぁ。そう言う事?」

ルインは納得した様子で彼女の方に向き直る。


「今言った通り、緊張してないって言えば嘘になる。けど、今回の実験はそんな大がかりな物じゃないからな。そこまで緊張してないんだよ」

「で、ですが今回の実験は、成功すればゴーレムの常識を変えるのではないですか?ロック・ゴーレムの関節は硬く、まともに動かす術は無い。そんな常識を変えるかもしれないんですよね?」

「あぁ。最も、『成功すれば』の話だがな」


「でしたら、尚更緊張されるのではないですか?それなのに、ルイン様は何というか、いつも通りに思えるのですが?」

「あ~~。なんて言ったら良いかな~」

メリルの言葉に、ルインは少し間を置いてから答えた。


「確かに、メリルの言うとおり成功すれば、これまでのロック・ゴーレムの常識を変えるかもしれない。『稼働時間もそこそこあってそこそこ動けるロック・ゴーレム』を俺やエリカさんで生み出せるかもしれない。けど、こう言うのは実験してみない事には何も分からない。要はこれからやろうとしてる実験ってのは、俺のアイデアが『使えるかどうか』なんだ。だから俺の中では、アイデアが上手く行ったのなら『やったっ!』って感じだし、上手く行かなかったら、『何がダメだったんだろう?』とか『別のアイデア』を考えないと、ってそんな感じなんだよ」

「つ、つまり、実験の結果にそこまで拘ってない、と?」

「まぁ端的に言えばその通り、かな?上手く行ったら喜ぶ。ダメだったら問題点を洗い出して改善するか、また別のアイデアを考える。それだけだよ。それに、俺は俺の理想のロボットを作る。そのためには今後、いくつもの実験を繰り返すことになると思う。だからこんな実験一つで心臓バクバクになるくらいに緊張してたら、俺の心臓が保たないっての」


そう言ってルインは苦笑を浮かべた。

「そうですか。……ともあれ、今日の実験、成功すると良いですね」

少し心配そうにそう呟くメリル。

「……あぁ、そうだな」

その言葉に、ルインは静かに頷き、再び車窓から見える景色へと視線を向けるのだった。まるで、『実験が失敗したらどうしよう?』と囁く不安から目を逸らすように。


如何にメリルにあぁ言ったとは言え、やはり未知数の実験だ。緊張は少なからず、重圧となって彼の背中にのし掛かっていたのだった。



それから少しして、馬車はクリスフォル家の屋敷にたどり着いた。昨日と同じように中へと通されるルインとメリル。すると……。

「おはようございます。良くおいで下さいました、ルイン様」

「ッ、シモンズ様。おはようございますっ」


屋敷の中に入って早々、クリスフォル家の主であるシモンズが2人を出迎えた。そんな彼に驚きながらもルインは会釈をする。もちろん後ろに居たマリルもだ。


「確か、今日は何やら実験をするとの事でしたかな?娘のエリカから聞きましたが」

「えぇ。ロック・ゴーレムの問題点を解消するために、少しばかり実験をするつもりです」

「いやはや。そのお歳で実験などとは。ルイン様は大変勤勉なのですな」

「いえ。ただの趣味の延長みたいな物ですから。お褒め頂くようなことは何も」

「ははっ、そう謙遜なさる事はありませんよルイン様。新しい物を生み出すと言うのは、簡単ではないのことを私も知っています」

「恐縮です」

笑みを浮かべるシモンズにルインは気恥ずかしそうに頬を赤く染め、笑みを浮かべながら頭を下げる。


「あぁ。そうだそうだ。実はルイン様にお願いがあったんでした」

すると何かを思い出したようにシモンズが手を合わせる。

「お願い?自分にですか?」

「えぇ。実験には娘のエリカも関わっていますし、どうせなら父親として娘がどんな物を作っているのか興味がありまして。良ければ実験の様子を見学させて頂けないでしょうか」

「そうですか。しかし、一応エリカさんの意見も聞いてみない事には何とも。……それに、今日はあくまでも私が考えついたアイデアを試すだけです。成功するかも分かりませんので、正直お見せして良い物かと」

「むぅ。そうですか。……私としては、娘の成果をこの目で見ておきたいのですが……」


ルインの言うとおり、実験が成功する確率は未知数だ。だから見せられる物ではない、と言ったのもその通りだ。しかし一方のシモンズも、娘の成果に興味がある様子。すると……。


「あの、一つよろしいですか?」

「ん?どうしたマリル」

そこに声を上げたマリル。2人の視線が彼女に集まる。


「メイドの私から提案、と言うのもおこがましいのですが、よろしいでしょうか?」

「あぁ。構わないよ。良いですよね、シモンズ様」

「えぇ構いませんが。その提案、と言うのは?」


「本日ルイン様はエリカ様とロック・ゴーレムの実験をされますよね?」

「あぁ」

「しかし成功するかどうかは分からない未知数の物。そこで提案なのですが、今日はルイン様とエリカ様だけで実験を行い、これが無事に成功したのなら明日にでもシモンズ様の前で実験の成果をお披露目するのは如何でしょうか?」


「つまり、上手く行ったら研究成果をシモンズ様に発表すると?」

「はい。その通りです。しかし実験が上手く行かなかった場合はその発表の日程を無期限延期。新たな策が出来、それが成功したのであれば発表する、と言うのは如何でしょうか?」

「成程。実験が成功すればその成果を発表し、ダメならばまた後日、と言う事か。それであれば私は構いませんが。如何です、ルイン様」

「えぇ。自分もそれで良いと思います。実験が成功したのであればこちらもちゃんとした成果をお見せできると思いますし」


シモンズの言葉にルインも頷いた。

「それと、つきましてはシモンズ様にお願いがあるのですが、よろしいですか?」

「あぁ良いとも。何かね?」

「もし、明日発表が行われるのであれば、その際にルイン様のご両親であるマックス様とアリシア様をお呼びしたいのです。お二人もルイン様のゴーレム研究に興味を持たれていますので」

「成程。確かに子供が何をしているのか親が気になるのは当然。構いませんよ、私は」

「ありがとうございます、シモンズ様」


こうして発表が行われる場合、マックス達も参加する事になった。

「発表に関しては、まぁ明日やるかもって話だが。マリル」

「はい」

「お前は一度馬車で屋敷に戻ってくれ。明日、父様と母様の予定が開いてるかどうか確認して、それが出来たら戻ってきてくれ」

「かしこまりました。ではさっそく、一度屋敷に戻ります」

「あぁ、頼むぞ」


と言う事でメリルは一旦馬車でクリスフォル家を後にした。1時間ほど掛けてトレストリア家に戻ってきたメリルは、すぐさま屋敷にいたマックスとアリシアに発表の事を話した。


「成程。ルインとエリカさんの成果を僕達に見せる、と言う訳だね」

「はい。本日の実験の結果次第、と言う事になりますが。可能であれば明日にでも発表を行う事になります。そこでお二人のご予定を確認したいのですが」

「そう言う事ね。私の方は大丈夫よ。あなたは?」

「あぁ。僕も大丈夫だ。幸い明日はこれといった予定は無いからね。それじゃあメリル。悪いけどクリスフォル家に戻って、シモンズさんに明日で大丈夫だと伝えてきてくれ」

「かしこまりました。失礼いたします」


二人からOKをもらい、メリルは再び馬車でクリスフォル家へと戻った。そして執事に案内されたのは、いつもの試験場だ。


「ルイン様、戻りました」

「おっ、お~~メリルおかえりっ。どうだった?」

試験場近くに、休憩用に作られた簡易な東屋でルインはエリカ、レトシアと共にクリスフォル家の給仕の者が淹れたお茶を飲んでいた。


「お二人とも、明日の予定は無く問題無いそうです」

「そっか」

「逆にルイン様。こちらの首尾はどうでしたか?」

「へへっ!そりゃもうばっちしっ!」


メリルの言葉に、彼は白い歯を見せるように最高の笑顔を浮かべながらピースサインを浮かべる。

「さっきまで一通りのテストをしてたけど、その時もこれといった問題や不具合は無し。見落としがあるかもって一抹の不安はあるけど、今の所俺のアイデアは成功したって感じかな」

「それは何よりです」

楽しそうに話すルインに釣られてメリルも微笑を浮かべる。


「では、明日は予定通り、シモンズ様や旦那様達に成果の発表ですね」

「あぁっ。エリカさんからもこの試験場を使って良いって許可貰ってるし、明日はここで俺とエリカさんの成果の発表会だっ!」

「うぅ、発表と聞くと、少し緊張してしまいます」

「大丈夫ですよ。いざとなったら俺がメインに喋りますから」


緊張した様子のエリカをフォローするように、そう言って笑みを浮かべるルイン。


「とは言えルイン様。曲がりなりにも成果を発表するのですから、簡単でも良いので原稿を用意する事をお勧めしますよ」

「あ~~。確かに。発表するとなると話す事多いからなぁ」

レトシアの言葉に頷き、若干頭を抱えるルイン。


「今から原稿、作ってて間に合うかな?」

そんな心配が彼の脳裏をよぎり、言葉となって出てくる。


「大丈夫ですよルイン様、良ければ私もお手伝いしますので」

「え?良いんですか?レトシア先生に手伝って貰っちゃって?」

「えぇ。提案したのは私ですし。今日はこれから特にこれといった用事もありませんから」

「なら是非お願いしますっ」

そう言って笑みを浮かべるルイン。



その後、ルインはエリカやレトシア、メリルらと協力して発表のための原稿をまとめていく。クリスフォル家の一室を借りて行われた原稿の作成が終わる頃にはすっかり日も落ち、空がオレンジ色に染まっていた。


「ん~~~!何とか今日中には仕上がりましたね~」

ずっと座ったまま原稿を書いたりしていた為、凝った体をほぐすようにルインは体を伸ばす。

「お疲れ様です、ルイン様。しかし時間も時間ですので、今日はもう戻りませんと」

「っと、そうだな」

メリルの言葉を聞き、彼は窓の外の空を見上げながら答える。


「それじゃあエリカさん、レトシア先生。俺達はこれくらいで」

「はい」

「分かりました」


ルインは二人の言葉を聞くと席を立ち、まとめた原稿の一部を手に取る。そして彼はその原稿に視線を落とす。

「……発表、か」


そして彼は小さくポツリと、初めてと言う不安と、自分達の成果を周囲に知らしめる興奮を思わせる声色で呟くのだった。



そして、翌日。朝。トレストリア伯爵家の玄関にて。

「それじゃあ父様、母様。俺とメリルは先にクリスフォル家に行きます。発表にも準備がありますので、少し時間を置いてからおいで下さい」

「あぁ分かった。ルインの発表、楽しみにしているよ」

「メリル、ルインの事をお願いね」

「かしこまりました、奥様」


先にルインとメリルの二人が馬車に乗って家を出た。発表の準備の為だ。馬車に乗り、クリスフォル家に向かったルインとメリル。そして二人は屋敷にたどり着くなり、すぐさま試験場へと向かった。


昨日と同じ東屋では、既に動きやすく汚れても良い服装のエリカとレトシアが待っていた。

「おはようございますっ、エリカさん、レトシア先生っ」

「おはようございます、ルイン様」

「あっ、お、おはようございます、ルイン様」

彼の声に気づいたレトシアとエリカがそれぞれ挨拶を返す。


「い、いよいよ、ですねっ」

そんな中でエリカはガチガチに緊張している様子だった。

「え、エリカさん?めっちゃ緊張してますね?」

「う、うぅ。だ、だってお父さん達はともかく、ルイン様のご両親まで来るんですよね?それに無数の人を前にすると思うと……」

苦笑を浮かべるルインの問いかけに、エリカは半泣きの表情で答える。


「あ~~。エリカさん、俺の両親に会った事って」

「確か数回は顔を合わせたことがあるはずですが……」

彼の問いかけに答えたのは姉であるレトシアだ。

「う、うん。あるにはあるけど、でもまともに話した事も無いから」

「成程。……まぁ、ホント俺がメインで喋りますし、無理そうだったら下がって良いですからね?ホント、無理だけはしないでください」

「うぅ、ありがとうございます、ルイン様」

「いえいえ。それより、まずは準備を進めましょう。作業とかもしてれば、気が紛れるかもしれませんし」

「はい」

「分かりました」

彼の言葉にエリカとレトシアが頷く。


その後も発表の準備が進み、後はルインの両親であるマックス達の到着を待つばかりとなった。


そんな中で気分を落ち着けようと言うレトシアの提案で、今は東屋でお茶をしながらマックス達の到着を待ちつつ、静かにくつろいでいた。

「うぅ、何だか待ってるだけなのに緊張しちゃう」

しかしそんな中でもエリカの緊張がほぐれた様子は無い。

「だ、大丈夫ですよエリカさん。いざとなったら俺がフォローしますってっ!」

そう言って彼女を勇気づけようと彼は笑みを浮かべる。が……。


「ルイン様は、緊張してないんですか?」

「え?」

「だって、家族や親しい人相手とは言え色んな人に自分達の研究成果を見せるんですよ?失敗したらどうしよう、とか考えないんですか?そのせいで、不安になったりは……」

「……そりゃぁ、不安くらいありますよ」


『嘘を言ってもはじまらないか』と考え、彼は静かに口を開いた。

「発表中に噛んだらどうしよう。俺達が考えついた新型ゴーレムを動かしてる時に、問題が起きたらどうしよう。原稿の内容を忘れたらどうしよう。……不安なんて挙げだしたら切りが無いですよ」

彼は不安げにそういって息をついた。


「けど」

しかし直後、彼はうって変わって笑みを浮かべ始める。

「今はそれ以上に楽しみなんですよっ」

「楽しみ、ですか?」

「えぇ。何せ今日俺たちが発表するのは、これまでのゴーレムとは一線を画す存在ですっ。それは俺やエリカさんが生み出した物だっ」


ルインは嬉々とした笑みを浮かべながら語り、3人はそれに見入っていた。

「例え家族や知人数人とは言え、誰かに俺たちの成果を発表出来るって思うと、俺は楽しみなんですよっ。不安も緊張もあるけど、どっちかって言うと発表する事自体が楽しみで、そっちの気持ちの方が大きい、って言えば良いんですかね?」

彼はそう言って笑みを浮かべる。


そんな楽しそうな表情を見つめていたエリカだが、不意に彼女はどこか自虐的な笑みを浮かべ始めた。

「やっぱり、ルイン様はすごいですね」

「え?」

ふとした言葉に、彼の理解は追いつかず疑問符が漏れる。


「それはどういう意味、ですか?」

「ルイン様は、全く新しいゴーレムを作ろうとしています。そのために私に協力を仰ぎましたが、ルイン様は結果的にご自身のアイデアだけで、ロック・ゴーレムが抱えていた問題を解決されました。結局のところ、私がした事と言えば試験場やゴーレムに必要な魔石を提供した程度。自分の力で困難を乗り越えてたルイン様は、私などよりよっぽどすごい方なのですね、と。思ってしまっただけです」

「エリカ」


自虐的な笑みを浮かべながらの妹の言葉に、レトシアは不安そうな表情で妹を見つめている。すると……。


「ねぇ、エリカさん」

「はい?」

「エリカさんは俺を天才か何かと勘違いしてない?」

「え?」

今度はエリカの方がルインの言葉に疑問符を漏らした。それを見たルインは静かにお茶に口を付け、カップへと視線を落とした。


「確かに、問題解決のためのアイデアを出したのは俺ですけど、それって裏を返せば『それだけ』なんですよ。今のところね」

「で、でもアイデアが出る事ってすごい事なんじゃ……」


「そうでもないですよ。きっと頭の回転が速い奴なら、俺が思いついたアイデアくらい考え着くと思いますよ。……正直、俺は自分が天才だとか全っ然思ってないです。むしろバカなんじゃないかとさえ思ってます」

キッパリと彼は言いきった。自分が天才などではない、凡人程度なのだと。それは彼自身がよくわかっている事だからだ。


「俺は、まだ10歳かそこらのガキですよ。レトシア先生の持つ魔法の経験や知識量には到底及ばない。エリカさんほどゴーレムについて知識があるわけでもない。俺が他人より優れているとすれば、それは精々『アイデアの多様性』。それくらいです。でも、これって見方を変えれば奇抜なだけ。そんなもんなんすよ。天才的な頭脳があるわけでも無いし、神がかり的なスペックの肉体があるわけでも無いし、強運と呼べるほどの運も無い。魔法の才能は、まぁ人よりはちょっとあるみたいですけど、でもそれだけだ。神の天才や、それこそ神に愛されたと言われるような才能の持ち主の前には、俺なんて凡人より少し優れている程度でしょうよ」

そう言うと、彼はカップをソーサーに置く。3人とも、静かに彼の言葉に聞き入っていた。


「けど、だからこそ俺は人を頼る。頭を下げようが何をしようが、夢のために手を尽くす。自分1人じゃ足りないのなら、他人を頼る。他人の力を借りる。……だからこそ、俺はこうしてエリカさん、あなたと一緒に新型ゴーレム開発をしてるんですよ」

「あっ」


その時、エリカは思い出した。初めて会った時、彼が言った事を。


『様々な知識、経験、技術。自分に無い物を持っている人の協力が、俺の夢には必要なんです。だから俺は、エリカ様。あなたに協力をお願いしたく、今日こうして話し合いをお願いした次第です』


更にはあの日のルインの言葉を思い出し、エリカは頬を赤く染める。あの日、自分の趣味を、ゴーレム好きな自分を強く肯定してくれたルインの姿が脳裏をよぎる。


だからこそ、彼女は頬を赤く染めながらもどうしても聞きたい事があった。


「……私って、ルイン様に、必要とされてるんです、よね?」

「そりゃもう。当たり前ですよ」

彼女の言葉にルインは即答した。


「俺は、俺の欠点を、俺にない物を補ってくれる仲間を探している。そしてこれからも、俺はたくさんの仲間を求めると思います。いや、恐らく確実に求めるでしょう。そんな中で手に入れた最初の大切な仲間があなたです、エリカさん」

「ッ」


優しい表情と共に呟かれた言葉にエリカは顔を赤くする。乙女として、大切な、という言葉には否が応でも反応してしまうのだ。


「だから、私などより、なんて事は言わないでくださいよ。むしろ、これから俺はエリカさんに頼る事が増えるかもしれませんから。だからこれからも、俺の大切な仲間で居てください。お願いします」

そう言って、彼はエリカに手を差し出す。


「えぇ。喜んで」


彼女は、笑みを浮かべながらその手を取り改めて握手を交わした。その様子を微笑ましそうに見守っているメリルとレトシア。するとその時。


「皆さま」

屋敷の方からメイドが1人、やってきた。


「トレストリア伯爵家のお二人がお見えになりました。まもなくこちらにお越しになるでしょう」

「えぇ、分かったわ」

メイドの言葉にレトシアが答える。


「さぁて、そんじゃあ観客も揃った事ですし、いよいよ発表と行こうじゃないですかっ」


ルインは、ニッと白い歯を見せながら、どこか獰猛な、しかし輝いた瞳と共に笑みを浮かべる。その笑みに同意するように、3人が静かに頷く。


そうして、ルイン達の生み出した全く新しいゴーレムが、人の前に姿を現す時がやってきた。


     第7話 END

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