「地球人」捕獲任務
20XX年、ある異星人が地球に迫っていた。
「もうすぐ地球か、退屈すぎる船旅だったぜ。」赤いカマキリのような異星人がそう語る。「下等生物を捕まえるだけのためにこんな辺鄙な星系まで来ることになるとは思わなかったな。」青いハチのような異星人がそれに答える。「二人とももう少し真面目にやれ。奴隷回収は我々の重要な任務だ。」リーダーと思われる黄色のカブトムシのような異星人が他の2体を諫める。
この異星人達は数百万光年の彼方からわざわざ地球までやってきた。彼らの星では労働力が不足していた。偶然環境の近い地球を見つけ、奴隷として地球人を連れて行こうと考えたのだ。
「でもボス、任務って言ったってそこの装置を起動して地球人全員を5次元ケージに詰め込むだけでしょう。」赤カマキリが億劫そうに答える。
「それでも任務は任務だ。今のうちに準備資料を読んでおけ。」緑カブトムシがホログラムを見せる。
「あーはいはい…『地球人はアミノ酸と糖の高分子で構成された下等生物で、非常に大きな群れを作って暮らしている。最大の特徴は直立二足歩行である。よく働き、繁殖力も高い。惑星の北半球に多く生息している。』とっくのとうに読んでますよ。」
青ハチがモニターを見て声を上げる。「おっ、もう地球だ。どうしましょうか。」「地球人の少ない南半球に迎え。下等生物とはいえ、大勢で攻撃してくるかもしれないからな。」
宇宙船は南半球の大陸の上空に移動した。赤カマキリがモニターを覗き込む。「うようよ地球人がいるぜ。確かに二本の足で間抜けな顔して歩いてやがる。にしても数が多いな。」
緑カブトムシが尋ねる。「念の為テレパシー受信機を見ておけ。我々の存在が察知されていないかチェックするのだ。」
「連中、全く気づいていませんよ。思考の内容も『飯が食いたい』だの『交尾がしたい』だの『別個体が憎い』だの低レベルですね。さっさと捕獲しましょう。」青ハチが答える。
「よし、5次元ケージ起動だ。全地球人を捕獲しろ。」緑カブトムシが司令し、機械のスイッチが押される。
「地球人は全個体捕獲できたか?」緑カブトムシが尋ねる。「はい、この星にはもう1匹もいませんよ。」
「よし、任務完了だ。このまま母星へ帰還する。」
宇宙船は太陽系を離れて彼方へ飛び去った。
「地球人の様子はどうだ?」一息ついた緑カブトムシが赤カマキリに尋ねる。「何の問題もないっスよ。ギャーギャー喚いてますがここからの脱出は不可能です。」「そうか、なら大丈夫だな。」
その頃人間達は困惑し、嘆き、悲しんでいた。地球上のペンギンが一斉に消えてしまったのだから。