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彼の背中③大和の父

作者: 若松ユウ

 わたしの記憶の中にある父の姿は

 角帯を貝の口にきりりと結び

 いつも必ず背中を向けています


 大学で国文学の教授を務めていた父は

 お勤めだろうとお休みだろうと

 いつでも和装で通しておりました


 お出掛けの際は決まってカンカン帽を被り

 学会などの長旅には柳行李(やなぎごうり)を携え

 雨の日には番傘を差して行きました

 

 お仏壇の上に飾られているセピア色の父は

 眼光鋭く厳めしい表情をしてますが

 学生さんからは非常に慕われておりました

  

 寡黙で冗談一つ言わない性格で

 常に女子供とはどこか距離を置いていて

 遊んでもらった記憶はほとんどありません


 けれども旅先からの手紙や葉書では

 わたしたち家族のことを心配する様子が

 流麗な筆致で(つづ)られておりました


 不器用で感情表現が苦手な父は

 気恥ずかしさを悟られてしまわぬよう

 あえて正面を向かなかったのかもしれません

 

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] 静かな優しい素敵なお父様ですね(*´▽`) 和装のうしろ背もまた良きですね~。 ありがとうございました!
2021/06/28 21:06 退会済み
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