ぬくもり
階段を上がる昴は妙にわくわくしている。部屋に入るや否や昴は、夏生の手を取りベッドに押し倒す。
「えええ、なになに、こわいこわい、」
身を守る様にシーツにくるまる。
グイッと夏生を仰向けにし、手を重ねる。指を絡めオドオドする夏生の唇にキスをする。唇だけじゃ我慢できず、頬や顔や瞼にキスをしていく。
くすぐったさに夏生は声を上げた。
「も、う、やめろ、」
押し倒され下から見上げる昴の表情は嬉々としている。
「夏生、お前が言ったんだろ、『後で』って。」
「・・・・あ、」
ポカンと口を開けた夏生は(しまった。)と。
「ああ、もう!そうゆう事かよ!!俺のばかーーーー!」
両手で顔を隠し身もだえる。
「だからな、お前の負け、大人しくしろ。」
顔を両手で隠す夏生の服に手を滑り込ませる。
「ちょちょい待ち、すばる!」
「やだもーん、」
夏生の制止を無視に昴の手は夏生の素肌を撫でながら
シャツを捲り、身体にキスを続ける。
「お、くっきり痕、残ったな。」
細い首筋には洗面所で咬みつけ昴に吸われた痕が赤くなっている。
満足げに昴は言う。
「俺のモノ。浮気するなよ、」
言ったが後、バフンと昴に枕を投げつける。
「浮気なんかするか、このアホっ!お前が物好きなだけだ!」
「ああもうどけよ、俺はねみぃーんだよ!」
暫く攻防戦が続く。
「夏生、俺のこと嫌いなの?」
「はあ?何言ってんの、」
ベッドから体を起こしながら夏生は言う。
「お前はどうなんだよ、」
「好き、大好きだよ、お前が、」
そう言う昴の頬をすり抜け夏生は昴の唇にキスをする。
「俺も一緒、」
夏生の不意打ちに昴は顔を赤くした。
「だから、昴、」
夏生は言いながら赤面する昴の首にがぶりと咬みつく。
「いたい、いたい、いたい、夏生、それはマジ咬みぃ」
夏生は存分に昴の首に咬みつくと。唇を離す。
「キスマーク、」
テーブルに置かれた鏡を昴に渡す。
「え、めっちゃ咬み痕。キスマークじゃない!」
「ふん、」
見事に出来上がった咬み痕を見つめ夏生は鼻をならす。
「このツンデレェ!マジで咬むかよ普通ー」
鏡を見ながら昴は声を上げた。
「はあ、お前バカ。俺は寝る!」
シーツをなおし夏生は毛布にくるまる。
「・・・昴、」
毛布からちょっと顔をだすと嘆いている昴の名前を呼ぶ。
ちょいちょいと手招きする。
手を招かれ静々とベッドに近づく。
「おりゃ、」
夏生は昴に抱き着き毛布を被せる。
「一緒に寝るぞ、」
「はい、昴、腕枕。」
ぱたぱたと布団を叩きこっち来いと催促する。
もそりと毛布にもぐる昴の腕を取り自分の頭をのっけた。
「おやすみ、昴。」
「おやすみ、夏生、」
夏生は昴の頬にキスをした。
「このツンデレ、」
「ふ、」
昴の腕の中で夏生は笑みをこぼす。
突発的に昴の家に泊まる事になってしまった夏生はドコか、安心したように呟きそっと目を閉じた。
「愛してるよ、」
耳元で甘い言葉を呟いた。
こくん、と頭が動く。
(ああ、純愛だな、愛おしい。愛おしすぎてどうしようもない、)
腕の中で眠りについた夏生は、すぅ、と寝息をこぼした。