2人
掃除機をかけ、床に張り付いた嘔吐物を拭き上げていく。
キッチンに割れて散らかった食器を片付くけてる時、コップの破片で指を切った。
「いった、」
血が滲む指先を口にし舌で舐める。
「最悪、俺やりすぎたな、」
後悔しながら食器を片付けていく。
「よし、」
割れ物も燃えるゴミも燃えないゴミも全部いっぺんにゴミ袋に入れる。
奇麗になった家の中。開けっ放しの窓から風が吹きぬける。
外はもうすぐ夕暮れだ。
傾き始めた夕日に窓を閉めていく。
夏生は洗面所にいき肩先につく伸びた髪をまとめ上げる。ポンポンて縛り上げれば僅かなポニーテールができる。
自分の目がコンプレックスの夏生。猫の様なツリ目がちな大きな瞳。鏡をるのが大嫌いだった。
蛇口を回し顔を洗う。さっぱりとしたようにタオルで顔を拭き上げる。
そのまま冷蔵庫を開けるが何もはいってない。
「買い出し、行くか・・・・、」
パタンと冷蔵庫をしめる。
静かな家の中。
(こんなもんだろ、)
夏生は玄関に向かう。靴に履き替え玄関のドアを開けようとした時、タイミングよくチャイムが鳴る。
ガチャリと開けると立っていたのは昴だった。
「昴、びっくり、」
「はは、行き違いになるとこだった、」
バッグを片手に昴は良かったと、ため息を吐いた。
「どうした?」
「うん、お前が心配で。ほら、朝会えなかったから、どっか行くのか?」
「夕飯。買い出し、」
「そ、そうか。俺も一緒に行っていい?」
「うん、いいけど、時間大丈夫なのか?」
「うん、実はさ、今日・・・・お前んち、泊まろうと思って、え、と明日土曜日だろ?・・・・母さんにはもう言っちゃたし、ダメかな?」
「・・・・ほんっと、お前バカ。・・・・はい、バッグ。貸して、」
昂からバッグを受け取り、夏生は玄関の鍵をかける。
「てか、その髪型、」
縛り上げたポニーテール。
「かわ」
「いいとか言うなよ、」
「いや、じゃあ似合ってる。」
「どっちも一緒だバカ。・・・・ほら、行くぞ」
「え、いいのか?」
「うん、何食べたい?」
「夏生、料理できんの?」
歩きながら昴は尋ねる。夏生は頷く。
「殆ど一人だったし、飯は作ってた。昴のおばさんみたいなのは作れないけど、それなり。何がいい?」
「夏生に任せる。」
夏生はポニーテールを揺らしながら歩く。昴の手が夏生の洋服の裾を引っ張る。
「ん、なに?」
「手、」
「お前は子供か、」
察した夏生は昴の手を握る。
手をつなぎながら近所のスーパーにたどり着く。
「・・・・。」
かご持ちの昴。夏生はひょいひょいと食材をいれていく。
「こんなもんかな、」
会計を終わらせスーパーを後にする。
「重くない?」
「大丈夫。・・・・夏生の手料理、楽しみだな、」
「普通だよ、片方持ってやる、」
買い物袋を片方ずつ持ちながら二人並んで歩く。
夕日が2人の長い影をつくる




