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流星の泪  作者: 退廃さん
19/22

現実

「おばさん、お世話になりました。」


「昴に顔を見せたかったけど、」


「学校、ですよね。俺は大丈夫です、」


「そうね、ごめんなさいね。」


「何かあったら連絡してちょうだいね、逆に気を使わせてしまったわね、」


「そんな事ないです、ご飯美味しかったです、ありがとうございました」


昴の母親は夏生の両手を握り心配そうに眉を寄せる。


「あなたは一人じゃないから、」


「はい、じゃあ、帰ります。・・・・ありがとうございました。」


玄関のドアを開けると昴の母親に見送られながら歩き出す。


久しぶりの様に見上げた空は青々しく晴々と澄み渡っていた。


歩く夏生。5日間同じ時間を過ごしていた。


もっと一緒に居たい、もっと傍に居たい。


無理なワガママだと知ってる。それでも幸せだった5日間。夏生はそっと胸にしまう。


これからどうすればいいのかなんて分かるはずもない。


自宅に戻ってそれからどうするか、頼れる人は父親側の両親、祖父母か。


(それじゃあ、昴に会えなくなるな、)


コロコロと変わる思考回路。あっちいったらこっちに変わる。


夏生は頭を振る。


考えても仕方ない。たどり着く先は大体分かっている。


でもソレは、それだけは避けたい。


『昴に会えなくなる。』その事が今の夏生にとっては一番のダメージだ。


「はあ、」


自宅に着き玄関を開けようとするが鍵が掛かっている。


「あ、そうか、」


垣根を搔き分け縁側の窓をあける。


「・・・・これが現実か。」


散らかったリビングを見渡し、重いため息を吐く。


「まずは片付けなきゃな、」


全部の窓をあけ、片付けていく。


ふと、夏生の手が止まる。


(お悔みの手紙)


散らばった数枚の手紙を拾い上げ、胸に当てる。


「おやじ・・・・。ばかだな、・・・・俺も大概だけど、」


涙が滲む。


「ん、]


泣き声が今にも漏れそうだったが、大きく息を吸って涙をこらえる。


「・・・・ふ、ふっ、く」


ポロリと大粒の涙が溢れる。心は正直だ。


手紙を握りしめうずくまる。


「・・・・あんたは、もう、・・・・帰って来ない、・・・・なあ、あんたは・・・・幸せだったか・・・・、」


二度と帰らぬ父親、問いかけても答えはない。


「俺を一人残してどこいくんだよ、」


胸が締め付けられる。とても苦しく悲しすぎる、嫌いなはずだった父親。


死んでしまえばどんな酷いことでもいい思い出へと変わってしまう。


「卑怯だ・・・・、クソ親父、」


夏生は涙を零しながらライター拾い上げキッチンへ向かい握りしめた手紙に火をつける。(お悔みの手紙)は直ぐに燃え上がり灰になる。


「おやじ、ばい、ばい」


もしも天国があるならそこで見守って欲しい。切ない願い。


「は、地獄かもな・・・・、」


夏生は涙を拭う。その後は黙ったまま部屋を片付け始めた。


もうすぐ夏の始まりを告げる梅雨が始まる。


ある程度奇麗になったリビング。夏生は頬かすめる風に髪を揺らす。


縁側の窓にもたれかけ夏生はタバコに火をつけた。


一息つく。煙が風にかき消される。金銭はまだ少しの余裕がある。


七万。これが底をつくまでやれることを全てやろう。


夏生は思考を巡らす。考えたくもないが行くあてはある。


タバコを灰皿にネジ消し、玄関に周り郵便箱を開ける。


チラシや勧誘、たくさん詰め込まれている。その中に夏生宛ての手紙が数枚投稿されている。宛名は父親の両親、祖父母からだった。


家に戻り手紙を広げる。


内容は戻っておいで、一緒に暮らしましょう、と綴られている。


気になって電話に向かう。


留守電が何件か溜まっている。再生する。


「夏生ちゃん、おばあちゃんと一緒に暮らしましょう、」


「帰っておいで、」


「無事なの?」


どれも心配する祖母のメッセージだった。


「ばあちゃん、」


呟く。いつか夏生がたどり着く場所はそこだろう。


「すばる・・・・ばいばいか、」

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