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流星の泪  作者: 退廃さん
14/22

流れ

「なっちゃん、どう?」


夕飯を作りながら母親は心配そうに昴に尋ねる。


「ぐっすり眠ってる、」


「そう、よかったわ。なっちゃん夕ご飯食べるかしら、」


昴は首をふる。


「今は寝かせてあげたい、」


「・・・・そうね、それがいいわ。」


「いきなり連れてきてごめん、」


「いいのよ。・・・・あの眠り顔、余程疲れていたのね、」


「うん、」


昴は冷蔵庫からお茶を取り出しコップに注ぐ。


[・・・・どうなってんだ、」


「・・・・かわいそうに、」


「早く見つけられたら、」


「なっちゃんのお父様は居なかったの?」


「うん、いなかった。生活感がまるでなし、」


コップのお茶を飲みながら昴は呟く。


「あいつ、一人だったのかな、」


(どうして、もっと早く見つけられなかったんだ俺は、)


「母さん、俺、今日の飯いらない、夏生の家行ってくる、」


「今から?」


「うん、ちょっと確かめたい事がある。」


昴の母親は困った様に昴を見つめるが、しょうがないと、頷いた。




「じゃあ、夏生の事、よろしくね、」


「分かったわ、気を付けて行くのよ、夕飯は準備してるから、」


「母さん、ありがとう。」


「うん、なるべく早く帰るのよ、」


「分かった、行ってくる」




玄関のドアを開け夏生の家へと昴は駆ける。


(絶対何かあるはずだ、)


夏生の家に着いた昂は玄関がカギで閉まっているのを確認し、縁側へと足を運ぶ。カラカラと開け、靴を脱ごうか考えたが、あの部屋の様子じゃ素足は危険そうだと思い「土足ですいませんと」呟き靴を履いたままリビングに向かう。


「電気は、と」


手探りで電気のスイッチをつける。


パチパチと音と共に電気がついた。薄暗かったリビングが電気を下に明らかになる。リビングは想像以上に散らかっている。


テーブルには食べかけの弁当や飲みかけのお茶やジュースがある。


床にふと目を落とす。夏生が吐いたのであろ嘔吐物が合った。


(夏生、)


どんな生活をしていたのか、所々に夏生が吐いたと思われるあとがある。


昴は言葉をなくす。


(もっと、早く気付いてれば、)


自分への怒りがこみ上げてくる。ドンと壁を殴る。


「どうして・・・・!」


呟きながら壁にもたれる。ズズズッと座り込む昴。夏生がどれほど酷い生活をしてきたのかと、涙が零れる。


「全然、平気じゃねぇじゃねーか、」


振り落した手にガサリと何かが触れた。


昴が拾い上げたそれは(お悔みの手紙)だった。


「は、なんだよ、これ、」


ガサガサと手紙を広げれば(日向省吾様。)と達筆な字で書かれていた。


(享年57才、4月28日。永眠。)


「省吾、夏生の父親、」


辺りを探ると数枚の(お悔みの手紙)を見つける。


「なつきーーーっ!」


昴は手紙を握りしめ叫んだ。ボロボロと涙があふれてくる。


「な、なつき・・・・、な、なにもないって、」


「俺、おれは、」


「なつき、一人で・・・・、」


床に頭をつけ昴は泣き叫ぶ。涙が止まらない。


夏生はずっと一人で何をしていたんだろう、どれほど思いでこの広い家に一人でいたのだろう。考えれば考えるほど自分の情けなさに涙がこみ上げてくる。


「・・・・恋人失格だな、」


早く、夏生の元に帰らなければと涙を拭い立ち上がる。


合いたい、抱きしめたい、愛してると言いたい、大好きだと言いたい、たくさんキスをしたい、思いっきり甘やかしたい。思いが昴をかきたてる。


1通の手紙を握りしめて、夏生の家を後にする。

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