00,プロローグ
「平民のあなたが私と同等であると?…分を弁えなさい!!!」
そう言って彼女の手を払い除けようとしたのだが足を捻って転んだ挙句、頭の打ち所が悪く意識はブラックアウト…
「ベルモンド様!」
薄れゆく意識の中、嫌ってる彼女が私を呼ぶ声が聞こえたような気がした。
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夢を見た。
はっきりとは見えないが、2人の少女?が四角い液晶画面の前で言い争っている夢。
「だから〜アメリアは絶対意地っ張りなだけで婚約者のウィル王子の事が好きなんだって!」
「いやいやここは譲れないね!アメリアは王子との政略結婚にプレッシャーを感じていただから彼女のその心を癒す為にも優しいフォード先輩とくっつくのが妥当よ!」
「それこそ、フォード先輩は作中で悪役令嬢だったアメリアに当たり強かったじゃん!!」
「これは、IFストーリー!作中で全ルート破滅エンドのアメリアを供養するための自己満なんだから推しとか関わらせたいんだよ!」
「本音それだろ!ならどっちがアメリアを幸せに出来るか勝負しよう」
「望むところ!……というわけで資料集めのためにももう1度周回しますかね」
「賛成!そいえば、私まだ隠しルート見てないんだよね〜」
言い合いがひと段落したのか少女らは再び画面に向かい直す。
しかし、私はそれどころではない『アメリア』それは私の名前…
だんだんと視界がクリアになっていき画面に写っているものを見て確信した。
「悪役令嬢って私の事!?」
そう叫んで飛び起きる。
幸いな事に周りに人はおらず奇異の目に晒されることは無かった。
いや、それよりも先程の夢…どう考えても私の事だ。
液晶画面に映る私と見慣れた人たち、少女たちが行っていた婚約者の名、私に当たりの強い先輩の名…すべて今の私に当てはまっている。
ということは、彼女らが話していることが真実を語っているとするなら…
「破滅エンド…破滅エンドってなんなの…」
今の私にはそれが一番恐ろしかった。
全ルートがなんの道を指しているのかわからなかったが彼女らは『破滅エンドのアメリアを供養するため』と言っていた。確実にろくなことではないのだろう。
突然、ズキリと頭に激痛が走る。
寝起きに頭を使いすぎたのか、昼間に頭を打った場所が悪かったのか、原因不明の痛みはどんどん酷くなっていく。
「うう……私が何をしたというのよ…」
私の孤独な泣き言は誰の耳にも届かない。
ズキズキと痛む頭を押さえながら、再び私は意識を手放した。