〜出逢い〜(ジバス・タガーside)
「ジバスゥウウウー、ほんんんっと、何拾ってるサ!」
「あぁ、うん。俺もびっくりしてるんだよ……」
ホントに、俺はびっくりしてる。同居人に責められる位の拾い物……もとい拾い赤子だな。こんな事を口にしたら、また、怒られるななんて考えたり、俺も動揺してる。どうして、こうなったか思い振り返ってみる。
この拾い赤子に出会うまでの俺は、その日、俺の住んでいる場所から比較的近い村に出稼ぎに行ってんだ。ここ最近、魔物の数が増えているらしく、村にいる冒険者だけでは捌ききれなくなっている話だそうだ。なので、ここ数週間、俺ともう一人で魔物退治の依頼をバンバンこなしている。魔物が増えようが俺のレベルなら、この辺の魔物は蹴散らす事は容易いし、もう一人も俺と変わらないレベルなので、ほぼほぼこの依頼も落ち着きつつあった。
その帰り道よ。もう一人は、とっくに俺の住む家に帰り、俺は村のギルドから依頼料と同居人の買い物の材料を背中に背負って歩いていたら。
「ゴルルルルルルルルル――」
腹から響く様な鳴き声、しかも、もう一鳴き、一瞬でこの付近に生息するホワイトウルフだと分かった瞬間。
「おああああああん!!」
俺はその声に気付いて、俺のスキル“音速超加速”と“位置把握”を発動。直ぐ近くだったので、大剣を引き抜きながらホワイトウルフの後ろに駆け寄り物凄い速さとその振りで横に真っ二つにしたんだ。
「あーら、よぉっと」
「ゴガッ――ッッッ――」
断末魔と血飛沫上げて息絶えるホワイトウルフ。ちと、血塗れなんで、風を操る魔法で大剣に付いた血やら腕についた血も振り払い、後は腰にある布切れで大雑把に拭ぐわねぇと、赤ん坊は、清潔にだったか。それを捨て、未だに泣いてる白い布の塊に急いで近付いて抱き上げたわ。
「だ―っ!な、泣くなっ」
こんな場所に赤ん坊を捨てる馬鹿が居るらしい。それに、俺もかなりあせっていたんだが……俺が抱き上げたら、まだひくついているけど、落ち着いたらしい。よーく見てみると上質で真っ白な綺麗な布だ。こりゃ、街じゃねぇと見られん代物だろう、それに、赤ん坊の顔は白よりの淡い赤に近い色だ、ふっくらとしてて髪の毛は凄く薄くて、デコが広い。
赤ん坊の特有の小さな唇、泣いちまってて目は閉じてるが、正直……ムズムズする。村の女の子供でも感じなかったのに、この子はなんだが保護したくて堪らんかった。ふと、視線が、下に落ちると、上等な白布に何か付いてる。
その付いてるのは、どうやらアクセサリーみたいだ、この世界の神の模様で、金色に光り輝いてる。それで、俺は分かっちまった。この子はどうやら“神が導く愛し子”なのだと、この世界の伝説で、俺の親父の曾祖父さんが居た時代に現れた特別な力が宿る光の存在だと、聞いていたのさ。が、それにともなっての国のごたごたも、確実にあるだろうとも、想像がついちまって。
「……どうしたもんかねぇ、弱った」
本音が漏れちまったよ。伝説の謂れがある赤ん坊が俺の腕の中に居る、責任なんてここ数年無かったもんだ、俺の決断一つで、同居人達に迷惑が掛かるとも予想がつくのは、もう、俺の中で一つの決断が出てる。俺よりも、小さく弱いこの子は、俺以上に困ってんだからな。
「……っく、っく、っく、ふ、ぇ、ぇぇ…」
落ち着いていた赤ん坊が、また、泣き始めたよ。やっぱ、この子は俺が守らんといかんな。男は度胸、決めたものは最後まで筋を通すのが道理って奴なんだ。……結婚しねぇで、赤ん坊育てるなんて、同居人に二人に言ったらさぞかし、驚くだろうな。やべ、んな事より。
「あーあーあー、一先ず……」
村に戻って、赤ん坊の食い物とご機嫌取り用の土産も準備だわ。そう俺は考えつつ、出来る限りの優しい振動を心掛けて、村に戻って準備をし――冒頭に戻る。