〜プロローグ②〜(山主side)
暗い暗い闇の底に、私は落ちている気がする。何せ、目は開けられず力は出ないし声も出せない。何も出来ない私は少しずつ気持ちが下にも落ちていく―“悪い子だったから”とか“出来損ないだったから”とか“言う事がきけなかったから”とか……下向きの言葉が、今も私を簡単に苦しめる。
忘れたい、忘れたいのに、過去の言葉の羅列は、私を離してくれないんだ。泣きたいのに、泣けない。叫びたいのに、口が動かせない。
――絶望しかない――とまで思った、その時だった。
目は開けられないのに、瞼の先に光を感じる。黒から薄い白を感じて、動かせない身体全てに優しく闇底を払い除ける温もりが染み込んできたんだ。理屈じゃない気持ちが沸き起こってくる。その気持ちに押されて、私の口は自然に動いていたんだ。
「生きたい」
はっきりと、一言口に出せた。
「私は、生きたい」
もっと、私は言葉を出せた。力が、力が、湧いてきて止まらないの。
「私は、生きたいんだ!!」
力の入らなかった瞼が、私の叫びと共に開く。もう、目前に迫る大きな光があって、私を思いっきりその光の中に吸い込まれてしまった。先程とは打って変わって、真っ白な世界。けれど……聞こえてくる。私に話しかけるその人の声が。
『――生き望む生者に、第二の人生を与える――』
『――生きよ、神に愛されし、生者よ――』
理屈じゃない確実に安心するその声が、私の頭に響いてね、七色に光る大きな手が私を包み込んでくれた。何もかも、身を任せられる安心感をくれるその手の中で、私は眠気に襲われる。けれど、その眠気は抗うって気持ちは起こさせない程の気持ちが良い……眠気。私は、そのまま、深く眠りに入ってしまったんだ。