表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Last danceは勇者(キミ)と踊りたい  作者: アセトアルデヒド
5/10

4.初対面

私は目を覚ました。

ゆっくりと視界が見えるようになってくる。

そこは私がさっきまでいた場所ではなかった。

あの、焦げた臭いも、赤い壁もどこにも見当たらない。

ここにあるのは私にはあまりにも不釣り合いなベッドや部屋の装飾、そして部屋のすみにいる一人の人だった。


今まで普通の村で過ごしていたような少女が火災によってこんな豪華な部屋にくるとは、さすがヒロインと言わざるを得ない。


「起きたようですので旦那様にご報告して参ります」


部屋のすみにいたその人はしゃべった。

女性か?とおもったが所謂執事の格好をしていたので男のようだ。

彼が出ていって、改めてこの部屋を見渡す。

今まで見たことのない景色過ぎて何て言っていいのかわからなかった。一人で使うには広すぎるベッドにいるとものすごく寂しくなる。

きれいに飾ってあり、光が指す部屋なはずなのにものすごく寒く感じてしまう。


ドアが音を立てて、人が現れる。

これからの人生を共に過ごさないといけない家族が現れる。

一番最初に入ってきたのはバサラブさんであった。


髪は部屋にさす光をすべて吸い込みそうなきれいな漆黒だった。

目は藍色で光が入ると宝石のような美しさだった。

顔が完璧な上にスタイルまでもが完璧。

慎重が180は余裕でありそうだ。

ドアからゆっくりと近づいてくるその人から目をそらすことができなかった。

足音が一つ聞こえる度に緊張が高まっていく。

ついに彼が私の横にたどり着いた。

遠くで見たらわからなかったが、きれいな肌だった。

白すぎずだけど陶器のような美しさがあるように感じた。


「大丈夫か?」


怒っているのだろうか。

私を見る目はものすごく冷たく感じた。

声は低く、私を威圧してくる。

低い声が私の頭のなかに響く。

まだ、体が完全に治っていなかったのだろうか。

頭痛がし始め、つい、頭を押さえてしまう。


「…っ」


彼はイラついてしまった。

すぐに返事をしなかった私が原因だろうか。

どうしたらよかったのだろう。

私と彼の間には確実に教養の差がある。

それに私の口から出た言葉が日本語で彼と会話ができなかったらどうしたらいいのかわからなかった。


「くそ、あの医者め。ちゃんと治せと言ったはずなのに」


どうやらものすごくやさしい人らしい。

そう考えると起こっているのではなく心配しているのだろうか。

威圧ではなく気遣っているのかもしれない。

ヒロインは確か学園にいたとき華族とうまくいってないといっていたがもしかしたら彼のこの性格に気付けていなかったではないか。

このひと、本当はすごくいい人なんだと思った。


「大丈夫です。治っています」


私は彼のほうを向いて笑って答えた。

当たり前だが言葉は通じた。

冷静に考えてみればあのときだって言葉は通じていたじゃないか。

彼は私の顔をみて、驚いてどこか悲しげに微笑んだ。

私に向ける目があまりにも美しかった。


「すまなかった」


彼は私に向かって謝った。

一体なににむかって謝っているのだろう。

なんの流れかわからずに謝られるのはこれで2回目だ。


「私が、もっと速くあの場にいたら…」


あの場所から私をつれてきてくれたのはどうやらこの人らしい。

そうか、あの場所から連れ出してくれたのは彼だったのか。

自分の両親が死んだはずの火事を他人事のように感じてしまう自分に悲しくなった。

私と、彼の関係は一体どこで繋がるのだろう。

あとで教えてもらえるだろうか。


「ここは…?あなたは…?」


彼が悲しげにしているのに平然としてしまう私に私は気付きたくなくて彼に質問をぶつけてみる。

もちろん、なんて答えがかえってくるかも私は知っている。


「…私が誰かわからないのか」


あれ?こんなやり取りゲームにあったっけ?

私も一応冒頭だけやったはずなんだけどなぁ。

学園に入るところまでやったんだけどなぁ。

咲菜が剣術あるよって言うから少しだけみたはずなんだけど…

もしかして、ゲームはヒロインのいいようにカットされてるのでは?

私が覚えてないだけってことはないとおもうのだが…


「私は…アヤ…それしかしらない」


彼の顔を見れなかった。

彼の台詞がとても悲しく感じたから。

私はうつむいて答えることしか出来なかった。


「両親が誰かもしらないのか…?」


彼が震える声できいてきた。

泣きそうなのだろうか、それとも怒っているのか。

とにかく今までで一番低い声になった。


彼はなにも言わず私を抱き締めてくれた。

どこか懐かしい感じもする。

きっとヒロインにとって、彼は昔の知ってる人なのかもしれない。

私は自分の両親が死んだことにたいして泣けなかった。

ただ、彼に抱き締められて胸は苦しく感じていた。


「さっきの質問に答えよう」


彼はそういって、私から離れた。

私は彼のほうを見る。

悲しげな表情のままだった。


「私の名前はバサラブ・ウォーノック

今君はウォーノック家にいる。

君のことはこの私が引き取ることにした。」


ウォーノック家は侯爵として王家を支える昔からの家柄。

この国の人はほとんど知っていることである。

たしかこの人、この怖い表情から

『冷徹のウォーノック』で有名という設定だった気がする。

ヒロインがイケオジ好きだったら確実に攻略対象だっただろう。


「君はしばらくここにいるといい

落ち着いたら私の家族を紹介しよう」


彼はそういってドアの方に向かってあるいていった。


「そうだ、一ついい忘れていた。」


彼がこちらを振り返る。

もう悲しい表情はなくなっていた。


「私はお前の顔が嫌いだ」


そして静かに立ち去った。


部屋の空気がさっき以上に冷たく感じる。

え、最後のはなんなんだ?

いや、たしかゲームでもあったような…

今までの対応はなんだったんだ?

あの人、優しい人ではないんじゃないか? 

え、え?もう全然わからない

くそ、これだから乙女ゲームは嫌いなんだ。

バトルしてレベル上がってハッピーとは大違いだ。

人とのコミュニケーション反対!!


これからのことが不安でしかなくなってしまった…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ