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Last danceは勇者(キミ)と踊りたい  作者: アセトアルデヒド
10/10

8,家族

結局あれからまた私は3日寝込んだ。

いや、体弱すぎません?

ゲームのときのヒロインってこんなに体が弱い設定だったのだろうか。

まさかの、この六年のうちに体力も底上げが必須なのか?

でないと普通に学園にも通えない気がする。


私はベッドから起き上がる。

本当に私はこれからどうなるのだろう。

ま、なんとかなるか。

こういうときこそなにも考えないほうがいいにきまっているのだ。


「アヤ様、おはようございます。」


ミルがいつも通り私のところにタオルをもってくる。

ミルって私が起きるまで毎日まってくれているのか。

早く体力をつけないとな。


「起きてすぐで申し訳ありませんが、今日は皆さんと会っていただきます。」


ミルは優しい笑顔でそう告げた。

ふぇ、まじですか。

嫌い宣言された方々に会わないといけないのか。

おそろし!


「わかりました。着替えます」


私はいつもきている寝間着からこの前外にでたときと同じ格好に着替えた。

髪を前回と同じように編み込もうとおもって鏡の前にたつ。


「あれ?」


あれあれあれ?

ブロンドの髪の量が明らかに増えている。

一体何があったんだ?

何に反応してこの髪のいろは変化するんだ?

そうか!ゲームのときまでにこの髪はブロンドに戻るんだ。

それか戻さないといけないのか。

ま、このことはあとで考えよう。

とりあえず今考えないといけないのはこれから会う人たちのことだ。

これから家で平和に、ついでに学園にはいってから困ることがないように兄弟との関係をよくしないといけない。

ルーナは、うん、大変そう。

あの、何を考えているのかわからない上に話すと苦しくなるあれをどうにかしないといけない。

無意識であんなに人を苦しめられるならもうノーベル賞ものだよ。

ノーベル平和賞の反対が存在するなら初代確定だよ。

それでも彼は最終的に攻略対象にはいっているし、記憶を取り戻せば仲良くなれるのでは?

ほどよく仲良く!これが目標だな。


「感謝はほどほどに、お礼は一割増し。

そして恨みは三倍返し」


「え?」


「なんでもない」


なんと、口からでてしまっていたか。

ちなみに今のは私が所属していたチームの方針。

懐かしいなぁ、皆元気に退治してるかな。

私のドラゴン、ちゃんと変わりにぼこぼこにしてくれてるかな。


きれいに編み込みができたところで部屋をでるためミルについていく。

私がこの家でいったことがあるのは浴室と庭だけ。

それ以外に行くのははじめてのことだ。

3日も寝込んでいたせいでまた体力がおちた。

階段を降りることがこんなにきついとは思いもしなかった。

くそ、早くエレベーターの開発が望まれるぜ。


「こちらの部屋です」


ミルが私の目の前のドアをあける。

なんだろう、このデジャブ感。

庭に行くときもこんなノリだったなぁ。

けど迎えてくれる空気が全く違った。


庭とは違い、そこに広がるのは多くの人だった。

私の正面にバサラブさん。

横にルーナとたぶんサバトさん。

そしてそこから執事らしい人やメイドさんが並んでいる。


「アヤ、なかにはいれ」


バサラブさんに言われて部屋の中心へと進む。

みんなの視線がささってくる。

優しいとは言いがたい空気だった。

私はこの空気を知っている。

体験したことがある。

だからここでしないといけないこともわかっている。

ここで心がおれて震えでもしたらこちらの敗けである。 

この空間は精神が強いものが勝つのだ。


「この場に宣言する。

これからこの娘、アヤは私の娘となる。

ウォーノック家として恥ずかしくないようにしっかり支えろ」


バサラブさんがそう告げた。

ルーナは面倒そうにサバトは少し楽しそうに微笑んだ。


「これからは私のことを父様と呼ぶように。

細かいことに関してはお前の体調に合わせて考える。」


バサラブさん、父様は自分の言いたいことだけいって去っていった。


「これからはよろしくね、妹ちゃん」


一言一言が体を締め付けてくる。

この人は本当に無意識でやっているのだろうか?

言葉が蛇のように体を動きまわる。

彼はクスッと笑い部屋をでていった。


残りは使用人を除くとサバトだけになった。

サバトの印象は黒だった。

髪も目も父親譲りの黒色系だがきっと他の部分が母親に似たのだろう。

怖い印象よりも柔らかいのほうが似合いそうな姿だった。

だけど、彼から感じられるのは黒。

どこかおもい、そこ一体が別の世界のようななにかを感じる。

そういえば彼も攻略対象にはいってる?

このゲームはスマホゲームのせいでまだキャラが全員発表されていない。

つまり、誰が攻略対象かわからないから迂闊に行動することができないのだ。


「あれは無意識だよ」


おもったより高めの声だった。

まぁ、当たり前か。私の1つ年下に当たるのだから。

まだ9歳にしてこのオーラ。

将来が恐ろしいとおもった私は悪くない。


彼が一歩ずつ近づいてくる。

彼が出す黒色が近づいてきてそのなかに私も入る。

そうすると私の体にいた蛇がどんどん闇のなかに消えていった。

え、この弟魔術が使えるの?

それとも無意識に兄のだす力を回収してるの?

本当に二人で1人とはこのことを言うのかと思った。


彼はルーナとは違う意味でクスッと笑って立ち去った。

なんて家族だ。

これからこんなメンバーと学園が始まるまで仲良くしないといけないのか。

うん、先が思いやられるぜ。


「改めてお嬢様、私から挨拶をさせてください」


家族たちの無意識の攻撃に疲弊していた私にミルが声をかける。

ミルを含めた使用人の人たちがさっきとは違った暖かい視線をくれる。

あぁ、この人たちは本来は根が優しいひとなんだな。

父様といい、本当は優しい人の集まりなんだな。

みんな、警戒心が強いだけなんだと思った。


「これからお嬢様の側でお仕えするミルと申します。

ほかにも多くのものがおりますがそれはまたお会いしたときに1人1人ぜひ挨拶をしてあげてください。」


ミルが私の前で跪く。

それに合わせて他の使用人の人たちもどんどん跪きだした。


「私たちはウォーノック家に命をかける所存でおります。

使用人がと思うかも知れませんが私たちはそれぞれ旦那様にお世話になりました。ですのでお嬢様もこれから何かあればなんでもおっしゃってください。」


そしてミルは私のほうに近づいて優しく笑った。


「私たちはお嬢様がここにくることを歓迎しますよ」


私はまわりにいる人たちの顔をみる。

みんな、優しく笑ってくれていた。

あぁ、ここにきてやっと愛されてるって実感した気がした。



「アヤ・ウォーノックといいます!

これからよろしくお願いします!」


私はやっとこの世界で一歩を踏み出した気がした。

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