《第一章 桜色 》
みなさんこんにちはkurunikuです。
この話を読んでいただき本当にありがとうございます。わたしはこの作品が初めてとなります。
ハッピーエンドが好きではないのでみなさんの納得のいく終わり方をするかはまだわかりませんが、精一杯書いていこうと思うのでぜひ暖かい目で見てくださると嬉しいです(*^^*)
《第一章 桜色》
僕と彼女が出会ったのは中学2年生の春だった。
「おはよう、奏」
今朝もいつも通りの光景だ。母は朝食を作りながら僕に挨拶をして、父は何も言わず新聞を読んでいる。
「おはよう。」
今日はいつにも増して朝起きるのが辛かった。そのわけは、今日から新学期が始まり尚且つ新しいクラスに溶け込まなければならない。
僕は去年もクラスで目立つ方では無かったし、部活も運動部ではないので何かの結果も期待できない。
「あなた、今日から新しいクラスでしょう?もっとこう、楽しみ!みたいな顔出来ないの?」
母は笑いながらそう言った。
出来るわけがないだろう。僕は学校生活を楽しくしたいとも思わないので自分から何か行動に起こすというのはまずない。学生特有の恋愛だとかも興味がない訳では無いが、しなくていいのならばしたいとは思わない。
「はい、お弁当。さ、もう時間よそろそろ『友達』くんが来る時間じゃない?」
「そうだね。そろそろ行くよ。」
僕は玄関にある姿見で身なりを整えた。
ピンポーン
「おはようっ!!!」
「おはよう」
どうしてこう『友達』はいつもこんなに元気なんだろうか。「だるい」とか「疲れた」などの言葉とはまるで無縁に思える。
「じゃあおばさん行ってきまーす!」
「行ってきます。」
「はい、いってらっしゃい。」
既に1年間毎日通っていたこの道もこの季節だけは特別に思える。夏は蝉がうるさく泣き、冬は氷で滑って転びそうになるようないやな道だが、美しい桃色とその隙間に見える綺麗な青はとても美しい。
「今年も桜きれいだねーっ」
「そうだね」
桜のことや、新しいクラスは一体どうなるのだろうかなどの他愛もない話をしているうちにいつの間にか学校についていた。
僕は入口の前のボードにはられたクラス表をみた。
そこに ー2年1組 出雲 奏《いずも そう》ー という名前を見つけた。ついでに、ー『友達』ーという名前もみつけた。
すると、『友達』が速攻飛びついてきた。
「今年もよろしくねっ!」
「はいはい」
僕達は真ん中の2年生の下駄箱へ向かい上履きに履き替えるといつもは通ってなかった方の慣れない廊下を歩き教室へ向かった。
「ねーねー奏ちゃん!2年生の教室って桜めっちゃ綺麗に見えるね!」
「ほんとだ。」
僕は少しラッキーだなと思った。何故なら、座席が窓側の一番後ろだったからだ。目立つことなく桜も見える。なんて素晴らしい座席なんだろう。
「奏ちゃんいいなー。窓側〜」
「だろ。」
「ほらー、席ついてー。10分後に出席番号順に並んで体育館に行きますからねー。」
いつの間にか先生が来る時間になっていた。たしかあの先生は若くて綺麗だと有名な先生だ。
「ねーねー奏ちゃん!あの先生やっぱめちゃかわじゃない?」
『友達』は結構チャラくて女子からもそこそこモテる奴だ。去年は先輩から5人に告白されて結局誰とも付き合わなかったらしい。何故なのかは僕には分からないし、気になりもしない。ただ、今年も新しくクラスメイトになった女子で『友達』を見てソワソワしている女子も一部いるというは事実だ。
そんなことより、僕は少し気になっていることがある。隣の席の女子が登校時刻を過ぎてもまだ来ていないという事だ。この女子がどんな子なのかということに疑問を持っている訳ではなく、クラス替え初日から来ないというのは大丈夫なのだろうか。女子の友達関係は複雑だと聞いている。きっともうグループや仲良い人が固まり始めているだろう。
「はーい。じゃあ体育館向かうので並んでくださーい。」
みんなはだるいだの、めんどくさいだのといいながら並び始めていた。『友達』と僕は出席番号が前後なので僕の前に並んでいた。
「奏ちゃん!新入生にかわいい子いるかな〜」
「しらない。」
「なんだよ〜。ドライだな〜笑」
そりゃそうだろう。僕は恋愛をしたいと思っていないから女子にも興味はない。必然的なことだ。
「じゃあ並び終わったら前から座ってねー。」
担任がそう声をかけると前からドミノ倒しのように座っていった。この後も教頭の司会で始業式は進められ、長い割に需要はあるのかと疑問を覚える校長の話を聞き、式は終わった。
「始業式だるかった〜」
「ほんとだよ。一体あの校長の話になんの利点があるって言うんだよ。」
「そこだけは奏ちゃんに共感〜笑」
「じゃあみんな席ついてね!今日は転入生を紹介します!」
中途半端な2年生から転入?まあでも新学期と同時ならみんなまだ仲良くないからかえって溶け込みやすいのかもな。
「隣の県の埼玉から引っ越してきました。緒弥 奏羽です。よろしくお願いします」
僕は黒板にかかれた名前にひかれた。なんて珍しい苗字なんだろう。どこかの地方の苗字なんだろうか。
「みんな仲良くね。じゃあ緒弥さんの席は窓側の出雲さんの隣ね。」
僕は彼女が隣に座って声をかけてくるまでこの 緒弥 という苗字のことで頭がいっぱいだった。普段なら他人のことなんてどうでもいいのに、何故か今だけは僕の頭の中はこの名前に支配された。
「出雲、くん?」
僕は我に返った。焦って声をかけられた方を向くとそこに彼女はいた。かわいいというより綺麗という言葉が似合い大人らしい顔立ちだけどどこか中学生の幼さもあるような顔だった。
「あ、はい、出雲です。」
「よろしくね。わたし今年からだから教室の場所とか全然分からなくて教えてくれると助かるな。」
「あ、いいよ。」
「ありがとう。奏って綺麗な名前ね。それに、わたしの奏羽の一文字目と漢字一緒だ。なんか親近感湧くな〜。」
僕はその時の彼女の笑顔に心を撃ち抜かれた。いつも恋愛してる暇ならなにか別のことに時間を使う方がよっぽど有意義だと思っていたこの僕が不覚にも一目惚れをしてしまった。彼女の笑顔はとても明るかった。ひまわりのようではなく優しい微笑みだった。
そう、まるで桜のような。
《第一章 完結 》