8、本を読もう♪
自己紹介があった翌日からテレサちゃんは有言実行とばかりに、毎日本を1冊から2冊抱えてこの部屋を訪れてくれます。
有難いことです、有難いことですが…持って来た本はそのまま置いて帰ってしまいます。
なので後でリリとラテーネさんが片づけます、典型的なやりっぱな性格の様です。
最初、テレサちゃんは俺を足の間に収めて、後ろから抱く形で本を見せながら読もうとします。
これには俺が嫌がります。え?理由?ちょっと暑いというのが建前で、9歳でも女の子、女性です。良い香りがします、赤ちゃんですから当然反応はしませんが、精神的にキツキツです。
という俺の想いと、後ろから抱く形はテレサちゃんも本のページを捲り難いことから、ただの読み聞かせに変更です、俺はベットに寝たままで、その横にテレサちゃんが椅子に座って本を読んでくれる状況です。
その状況で本を読んでくれるのですが、この世界の本の内容は少しおかしいのでは?と思います。
いや、結構変です!子供が読む内容じゃありませんでした…。
それでは少し内容を…。
内容は勇者が魔王を倒す冒険活劇です、よくあるお話です。
勇者が魔王を倒して魔王の財宝をアイテムボックスに収納して持ち帰る…俺の感覚ではよくある話なのですが、この世界ではそこでハッピーエンドで終了ではありませんでした。
財宝を持ち帰った勇者は犯罪者となります。窃盗罪だそうです(´・ω・`)
この世界、魔王でもその財産は配偶者の物となってるみたいで、勇者は窃盗罪で投獄されます。
魔王を倒した殺人罪は適応されません……不思議な世界です…。
おそらくこの物語の勇者は転生者だったのではないでしょうか?
次は英雄の物語です。
基本日本の桃太郎と似てました、英雄の青年が旅の途中で僧侶(女)、魔法使い(女)、戦士(男)を仲間にして4人で魔族に苦しめられている街の為に、その魔族を討伐しに行くお話です。
英雄の青年は魔族を討伐して、その功績で貴族になり一緒に戦った僧侶の女性と魔法使いの女性と結婚します。
あ、この世界は一夫多妻制オッケーみたいです。
ハッピーエンドですね…でもこれも続きがありました、2人と結婚した英雄の青年に戦士の男が嫉妬します、ある貴族にあることないこと吹き込んで、その結果、英雄の青年は貴族の権力闘争に巻き込まれて、無実の罪で処刑されます。
そこで残ったのは英雄の青年の妻2人…魔法使いの女性は戦士の男が、僧侶の女性は戦士が唆した貴族が…NTRなお話でした…。
子供に読み聞かせる話ではないと思うんですけど…まあ、童話は本来、戒めや教訓とか結構残酷お話が多いです、だからこれらの話も戒めや教訓と考えればありなのかな?とも思いますが…次のはダメでした。個人的に…。
とある騎士たちの物語…魔族や魔物との戦闘の中で騎士たちが友情・信頼を育むお話です。
はいお気づきですね、育むのは友情と信頼だけではありませんでした、愛情も育みます………BLでした(´・ω・`)
しかも1対1の2人愛情ではなく、騎士団全体で愛が育まれます。BLで大乱交…
まあ、そこまでの表現はないんですが、俺の頭にはその言葉が浮かびます…。
この世界にまともな童話はないのか!
1冊読み終わる度に俺はぐったりです。
とある日。
俺の部屋を訪れた母がテレサちゃんが置いて行った本をパラパラと目を通します。
「あらあら、テレサはこんな話をジークに読み聞かせてるの?ジークにはまだ早いわ。」
と言ってます、それを聞いて俺は安堵しました、ちゃんとした童話もあるのだと…。
母は部屋を出て行き、本を2冊持って戻って来ます。
テレサちゃんがやろうとして出来なかった、後ろから抱く形で母は本を読んでくれます。
胸の柔らかさが丁度後頭部に来てちょっと幸せです♪
1冊目は動物、テイムされた魔物のお話です。絵本の様で描かれている犬型の魔物が可愛かったです。
主を助け、主の為に果敢に魔物と戦うといった内容です。良いお話です、不覚にも涙を流してしまいました…最後の方で。
最後に強敵が現れます、主も死にかけます、主はその犬型の魔物を囮に逃げます。
それだけなら酷い話ですが、その犬型の魔物は知ってか知らずか、主が逃げ切るまで懸命に強敵と戦い続けます。
勝てないと分かっていても主の為に戦います、足が1つ無くなろうとも戦い続けます。
そして…主が逃げ切ったと判断したところで力尽きます。
俺もテイムを持っているのでこの物語の犬型の魔物のような良い魔物をテイムしたいと思います。
この物語の主もこの犬型の魔物に感謝して、悲しんでるに違いありません、俺はこのような状況にならないように気を付けねばと決心します。
「ジーク、この話は実話なのよ。この物語の主は公爵家の3男でね騎士になりたくないと家を飛び出して冒険者になって、今では商人になってるの。使えないのをテイムしたって文句言ってたわ…。」
そんな裏話聞きたくなかったです…俺は再度涙します。
母が持って来た最後の1冊は騎士と貴族の令嬢との恋愛ものでした。
魔王軍との戦いの毎日、いつ命を落とすことになるか分からない状況、そんな中での騎士と令嬢の恋の物語。
毎日戦いに明け暮れ、いつ命を落とすことになるか分からない騎士。
ある日魔物に囲まれている1つの馬車を見つけ護衛騎士に助力します。
助けられた貴族の令嬢はその騎士に恋します。
よくあるパターンです。
貴族の令嬢は父親に猛反対されますが、隠れてその騎士との逢瀬を続けます。
そんなある日、大規模な魔族との戦闘が起こり、騎士はその戦闘に参加することを令嬢に告げます。
この戦闘で生きて戻れるかは分からないと…。
令嬢は悲しみます、悲しんで状況が変わる訳ではないと思いなおし、それならばとその令嬢は騎士に一晩の思い出をと想いを告げます、騎士は迷います、迷いますが令嬢に押し切られる形で一夜だけの関係を持ちます。
甘い!口から砂糖を吐きたくなるほどの甘々なセリフと展開が描かれてます、赤ちゃんに読む内容ではないだろ!と思います。
それから数年後、その騎士は無事に戻って来ます。
その戦闘での功績で叙爵され、反対していた貴族の令嬢の父親も子供が2人居ることで渋々ながら2人の結婚を認めます。2人は結婚して幸せです。
初めてのハッピーエンドです、ハッピーエンドなのですが…。
ん?あれ?このお話何処かで…あれ?
「このお話はね、うふふ♪私とジャンのお話なのよ♡」
出来れば両親の恋物語なんぞ聞かせて欲しくなかった…。
俺の目はおそらく死んだ魚のような目をしてるのでしょう、リリが少し心配してる感じで俺の様子を見ています。
それに気づかずに母は話を続けます。
「お茶会でね、このお話をしたら是非物語にしたいって、恥ずかしかったけど了承したのよ♪」
「奥様、今日はこの辺りで…ジークフォルト様もお疲れのご様子です。」
さすがラテーネさん、ここで救いの手を差し伸べてくれました。
「あらあら、もっと聞かせてあげたかったけど、それならしょうがないわ。」
そう言って、母は俺をベットに寝かせて、俺の頬をぷにってから部屋を出て行きました。
俺は思わずため息をつきます。
「はぁ~ぁ…。」
「赤ちゃんがするため息じゃないです。」
「お疲れ様でした、奥様はこのお話を必ずされます、カーレス様はまだ2歳で幼かったですから理解出来てなかったのでしょうが、クロヴィス様とテレサ様は5歳でした…今のジークフォルト様はその時のお二人と同じ目をしてますよ…。」
あれをクロ君とテレサちゃんも聞かされたのか…心から同情します。
それでも母のお陰で初めて文字を見れた…テレサちゃんが持って来た本も母が持って来た本も表紙は煌びやかな感じだが、表題といったものはなかった。
だから文字を見るのは今回が初めて、言葉が理解できてることから日本語かとも期待してたが、全然知らない文字でサッパリ理解できなかった……どうなってるんだろ?
会話らしきものは出来るのだが、文字を覚えないと本も読めない…。
「ほん!」
「本でございますか?それは…先程の…。」
それは嫌です!出来れば2度と読みたくないです!と俺は頭を横に振る。
「それなら…。」
「もじ、おぼーる。」
「文字、オボール?…おぼある、おぼいる、おぼうる?…おぼえる?…文字を覚えたいんですか⁉」
横でリリが驚く。
「文字を覚えたいのですか?」
ラテーネさんの問いに俺は頷く。
「………分かりました、その手に良さそうなのを何冊かお持ちします。」
ラテーネさんの返答に頷いて「よろー。」と答える。
本当は自分で見て魔法関係の本とかも選びたいです、でも表題がないし文字も分からないから、今回はそれで我慢です。
ラテーネさんは俺の要望の為部屋を出て行きます。
「ジークフォルト様が文字を…普通の赤ちゃんとは違いますね。何者です?」
と言い出した。さすがにビックッと反応しそうになるのをなんとか我慢する。
「な~んてね♪どう見てもジークフォルト様は赤ちゃんですね。」
はぁ~急にそんなこと言い出すからビックリしました。
しばらくするとラテーネさんは本3冊とブックスタンドを持って来てくれました。
ブックスタンドも用意してくれるとはさすがです。
ラテーネさんは俺をベットの隅に座らせて、スタンドの高さを調整してくれます。
早速ラテーネさんが持って来てくれた本を読んでみます………ふっ…サッパリです。
ということで、ラテーネさんやリリに聞きながら文字を覚えて行きます。
日本語で言うところの50音ですね、50音のわりに本が分厚いと思ってたら、その文字が最初に来てる簡単な単語が一緒に載ってるみたいです。
日本語で例えるなら、あ:あめ・あか・あめんぼうみたいな感じです。
因みに縦読みじゃなくて横読みです。横読みは苦手なんですけど…。
横読みは読んでる途中で数行ズレたりします、縦読みに慣れてるからでしょうか?
まあ、この程度なら問題はないんですけどね。
それからしばらく時が流れます。
今ではブックスタンドのお陰?スタンドの所為?でテレサちゃんが俺の横に座って一緒に本を読んでます。
内容はどれもそんなに変わらないです…。
テレサちゃんが持って来てくれる本は最後がハッピーエンドのお話が全然ありません。
あとは…BLっぽいの。
この頃にはクロ君もこの部屋に来るようになりました。
クロ君も本を持って来てくれます、地図や歴史物がメインです。
「ここが僕たちの領地で、ここからここまでがアルゼン公爵の領地、こっち側が魔族領…。」
と教えてくれます、俺は理解することが出来ますが…1歳と少しの子供に教える内容なのでしょうか?
クロ君に子供が出来たときに心配になります。
そして、俺が2歳になる前に兄弟の誕生日です、俺は動けないので家族以外が集まる誕生会には出席しません。
代わりにクロ君とテレサちゃんにはこの部屋に来たときにお祝いの言葉を伝えてます、でもカーレス君はまだこの部屋に来たことが無いので、ラテーネさんに頼んで伝えてもらってます。
クロ君とテレサちゃんが10歳、カーレス君は7歳です。父は30歳で母が28歳ですね、みんな俺より誕生日が早いみたいです。
もう直ぐ2歳の誕生日というところでカーレス君がこの部屋を訪れます。
最初は俺もリリも驚きます。
カーレス君は無言で俺に近づき、徐に1冊の本を開きスタンドに乗せ指を指します。
「ここ。」
初めて会ったときもそうでしたがあまり喋りません、貰う能力をテレパスか何かの能力にすれば良かったかと少し考えてしまいます。
開かれたページに目を通すと、さっぱり分かりませんでした…書いてある文字1文字1文字は理解出来ますが、内容が専門的過ぎて理解出来ません。
描かれてる絵を見ると、どうも蜘蛛の足のような絵が載ってます。
「これは?」
「足が動かなくても移動できる。」
「ほんと⁉」
「だた貴重。」
「きちょう?」
カーレス君はだた頷くだけです。それでも俺の為に探して来てくれた資料ですから、ちゃんとお礼は言います。
「あーとうござーます♪」
カーレス君は俺の言葉に少し表情を緩めて、頷いてから部屋を後にします。
「驚きましたねジーク様。」
リリが驚いたと言ってきます、俺の1歳の誕生日からしばらくしてある程度会話らしい会話が出来るようになってから、ジークフォルト様は長いから、家族と同じジークでいいよと伝えてます。
「そーだね。」
「それでこれは何ですか?」
「分かんない。」
「どうされますか?これ。」
「よむよ。」
「それを探してきたカーレス様も凄いですけど、それを読もうとするジーク様も大概ですね…。」
「リリ、ひどい。」
「あ、すいません。」
全然悪いと思ってないリリの謝罪を受けて、カーレス君が持って来てくれた本に目を通します。
もう直ぐ2歳の誕生日です♪
今週は3話投稿出来ました、来週は…どうなるのか不明です。