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5、誕生。

とある執務室。

コンコンとドアがノックされる。


部屋の主、ジャンデル・オリフィスが「入れ。」と返事が返って来る。


その返答に髪に白が混じりだした初老の男性がドアを開けて入室する。


「ダール何かあったのか?」


部屋の主は落ち着いているつもりではあっても、ダールと呼ばれた初老の男性からすればソワソワして落ち着きがない印象を受ける。


「旦那様落ち着いてください。」


「俺は落ち着いている!」


「声を荒立ている時点でご自身で認めているようなものですよ。」


「う…そう言われると否定も出来んが…やはり心配になるではないか。」


「4人目ですから多少は慣れても良いと思いますが…そこが旦那様なのでしょうな…。」


「男なのか女なのか、メアリーは無事出産出来るのか…とか色々心配でな…。」


「そこは我々男ではどうしようもないところですよ、神のみぞ知る領域です。」


「それはそうなのだがな…出来れば子とメアリー両方が無事であれと…。」


ダールは自分の主人の気を落ち着かせようと質問してみることにした。


「旦那様は男の子と女の子のどちらがよろしいのですか?」


「男でも女でも無事に産まれて来てくれればそれだけで良い、俺はそれだけで嬉しいのだが…男だと与えられる物がほとんど無いからな、出来れば女の子の方が良いのだが…。」


「………そうですな、家督は長男のクロヴィス様が、その補佐と万が一の為に次男のカーレス様がいらっしゃいますから。」


「ああ、3男には何も与えてやれん、だから女の子が望ましいのだが…こればかりは神のみぞ知ると言った所か…。」


と執務室の主とダールが話しているとドタドタと駆けてくる音が近づいて来る。




執務室の主とダールは何事かあったのかと顔を見合わせているとノックもなく扉が乱暴に開かれる。


「だ、旦那様ー!」


「リリ!落ち着きなさい!ノックもなしに扉を開けるとは…。」


「ダールさん⁉いや、それどころでは…いえ、すいませんでした。」


ジャンデルは何があったのか不安でリリを急かしたいが、主として無様な姿は見せられないと無理にでも落ち着いているように見せかけリリに問いかける。


「リリ、深呼吸をしろ。」


「は、はい!ヒッヒッフ~。」


「それ深呼吸じゃないだろ。」


「す、すいません、さっきまでこの呼吸法でしたから、つい…。」


「それで何があったのですか?」


「あ、はい、御産まれになられました。若様です!」


「無事に産まれたか!メアリーは無事か?」


「はい、奥様は御無事です、さすがにお疲れのご様子ですが…。」


「メアリーは?…メアリーはと言ったな!何があった!」


「はい!すいません、すいません。」


「すまん、咎めてる訳ではない、何があったのか早く申せ。」


「はい…産婆さんの話ですと…若様はその…。」


「リリらしくないですね、何があったのかハッキリ言いなさい。」

早く結果を聞きたい主人となかなか本題を言い出せないメイドにダールは少し穏やかに語り掛ける。


「すいません、産婆さんの言うことには若様の下半身が…ま、麻痺しているかもと…。」


「な………何!!!」


「ヒッ⁉すいません、すいません、すいません。」


「いや、こちらも大声を出してすまなかった。それで、かもと言うことはまだ麻痺していると決まった訳ではないのだな?」


「はい、御産まれてからなかなか泣かれなかったので、最初は太腿を抓ったりしたのですが…反応がなくて、もしかしたらと…偶に抓っても反応しない赤子も居るからとは言われてたんですけど…。」


「そうか……それでもメアリーと赤子は無事なんだろ?」


「はい。」


「ならば今はそれで良しとしようではないか、不安もあるが…それでも俺の妻と子が無事であったことを喜ぼう。」


「左様でございますな。」


「ダール、今日は祝いだ!」


「畏まりました。」


「俺はメアリーとジークの顔を見て来る。」


「ジークと仰いますと?」


「ああ、もちろん俺の子の名前だ、正式な名前は…メアリーの後だな。」


「畏まりました、私は今夜のパーティーの手配をしてまいります。」


「…いや、ちょっと待て。」


「どうかなさいましたか?」


「その…あれだ、祝いはメアリーの体調が回復してからにしよう、うん、それが良い。」


「左様ですか…それならば今夜はご家族の分だけでも手配しましょう。」


「うむ…そうだな、クロヴィスやカーレス、テレサも弟の誕生を祝ってやらねばいかんな、それで手配を頼む。」


「畏まりました。」

ダールは一礼してその場を離れて行く。




ジャンデルは妻と子の元へ向かう、その後をリリが従ってついて行く。

ジャンデル本人は普通に歩いているつもりだが、その足取りは自然と早足になっている。


ジャンデルは目的の一室に辿り着くと確認もせずに扉をバン!と開く


「こら!ジャン、赤ちゃんがビックリして起きるじゃないですか、さっき眠ったばかりなんですから。」


「あ…うむ、すまない。」


「ほら、そんな所で突っ立ってないで赤ちゃんの顔を見てあげてください。」


「あぁ…。」


ジャンデルが中に入るのと入れ替わりに助産婦達が一礼して退室していく。


「リリもすまんが外で控えていてくれ。」


「畏まりました。」


リリを部屋の外に残しジャンデルは部屋の中へ入り扉を閉め、赤子とメアリーの側まで歩を進める。


「おぉぉぉぉ、赤子と言う者は何度見ても可愛いな、パパでちゅよ~♪」


「クスッ。」


「な、何が可笑しい⁉」


「いえ、4人目なのに毎回その喋り方になるのは何ででしょうね?と思いまして。」


「そう言えば何でだろうな?普段でちゅよ~とか言わんのだが…はて?」


「私としてはジャンのその言葉を聞くと無事に産まれて来てくれたんだなと…実感できますよ。」


「ならそれはそれで良いではないか、ありがとうメアリー。」


「はい……でもこの子の下半身が…。」


「その件はリリから報告を受けている…まだそうだと決まった訳ではないのだろ?」


「そうですけど…下半身が本当に麻痺してたらと思うと…。」


「今は考えるな…仮にそうであったとしても俺とメアリーの子であることに違いはないのだ。

それに運が良いとは口が裂けても他の者に言えんが、魔王も討伐されて6年、魔物や魔族の動きも落ち着いてきている今なら…例え体に欠陥があったとしても無事に生きていけるさ。」


「そうです…そうですね。この子はジャンと私の大切な子であることに違いはないですね。」


「そうだとも♪」


「それでこの子の名前は決めてるんですか?」


「この子の名前はジークフォルト、ジークフォルト・オリフィスだ。」


「ジークフォルト、ジークですね、フフフ♪」


メアリーは寝ているジークフォルトの頬をぷにぷにと突っつく。




この話を書くときに色々調べたんですけど…。

多くは書きません、皆さんは悔いのないように。

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