13、冒険者ギルド。
冒険者ギルドの扉を開ければ…。
受付と思われる場所に居る人、食事も出来るのか座って飲み食いや雑談している人たち、中に居る強面の人達全員の視線が一斉にこちらへ集中します。
その視線を受けながら父が話し出します。
「おぅ、お前ら楽しんでるか?楽しく生きてるか?」
「「「おぉぉぉー!」」」
何でしょう…この山賊か海賊の集会みたいなノリは…あ、女性の人も叫んでますね…。
その雄たけびの中普通の職員のような人が近寄って来て父に話しかけます。
「お待ちしておりましたオリフィス様。ゾイさんは執務室です、ご案内いたします。」
「悪いなお願いする、おい、お前ら!この可愛い子が俺のとこの三男のジークフォルト・・オリフィスだ!まだ2歳だから顔覚えてもしょうがないだろうが、よろしく頼む。」
父は職員の人に言葉を掛けてから、俺を高々と持ち上げ周囲に見せます……俺は優勝トロフィーか何かでしょうか?
「「「おぉぉぉぉー!」」」
また雄たけびが上がります…ここの人達は全員こんなノリなんでしょうかね?
母が父の後ろから姿を現しニッコリと笑うと、雄たけびを上げてた強面の人達が一斉に静まります。
はて?何が起こってるのでしょうか?
職員の人の案内でギルドマスターの執務室へと案内されます。
「よぉ、ジャン♪よく来たな、少し遅くないか?」
「すまんなゾイ…少し遅くなった。」
この人がゾイさんなんでしょう、父と親しそうにガッチリと握手してます。
強面のまとめ役だけあってこの人も十分強面です。父ほどではありませんが背も高いくて、がっしりした体系でランチャーでもぶっ放しそうな渋めの人なんですけど…頭…髪の毛が残念です。
「ジャン、入り口で止まられると私達が入れません。」
「ぁ…すまんメアリー。」
「なんだ?今日は天災も一緒なのか?」
天才?天際?天災?テンサイ?
「それで今日は何の用だ?天災にガキ…奥方とお子さんまで連れて来て。」
ゾイさんは母の笑顔に引き攣りながら、奥方とお子さんと言い直してます。
「外に出るついでにジークをゾイに紹介しておこうと思ってな。」
「そうか…俺がこの街の冒険者ギルドのギルドマスターのゾイニック・ジグレシアだ。」
「初めましてジークフォルト・オリフィスです。ゾイニックさんは…。」
「ゾイで良いぞ、ゾイニックって言い難いだろ。」
「ありがとうございます、ゾイさんも僕のことはジークと呼んで下さい。」
「ジャン…このガキ…お子さんは何歳なんだ?見た目2、3歳ぐらいなんだが…。」
「ジークは今年が3歳の祝天際だ。」
「マジか…俺がその年の頃は…記憶に無いが、こんなに賢く話せなかったのは確かだぞ?」
「だよな、俺もゾイと同じ気持ちだ…。」
「賢いなら良いのじゃないかしら?」
「あぁ…そうだな。」
「あぁ…それで何が訊きたいんだ?」
「てんさいってお母様のことですか?」
「そうだ、天の災い…。」
「ゾ~イ~。」
「いや、何でもない…。」
ゾイさんは歯切れ悪く説明してくれました。
まとめるとこんな内容です。
ゾイさんはジグレシア侯爵家の五男だそうで、騎士のような規律に縛られるのが嫌で冒険者になったそうです。
母についてですがジグレシア侯爵家とハイネル侯爵は古い付き合いだそうで、年齢の近かったゾイさんと母は幼馴染で、母は魔法の才があり、母の魔法の練習にゾイさんは巻き込まれる…そして母は意図せずに周囲に被害をもたらす、一種の天災とのことです。
ゾイさんの歯切れの悪さからどうもそれだけではないような気がしますけど…。
父とは魔族との最終戦で父と知り合って、同い年でもあったので意気投合。
父の雄姿と男気に惚れて父の領地に来たそうです。
ここに集まっている冒険者も似たようなもの…だそうです。
だからここの居る冒険者はあんなノリなんだとか…。
「ジークは魔族と聞いたらどんなのを想像する?」
「魔族ですか…。」
一言に魔族と言っても、魔族も人族と同じで色々な種族に分かれてます。
亜人や妖人族、鬼人族も魔族に含まれます。
「魔族と言われても…正直会ったことも見たこともありませんから、物語では人族と争ってる種族…でしょうか?」
「…いや、これは俺が悪いな、2歳の子供に訊く話じゃなかった。」
「どうして急に魔族のことを?」
「いや、戦争中のジャンの話をしてやろうかと思ったんだが…それは別の機会だな。」
「ゾイ…メアリーの話から俺の話題で話を逸らしたかったんだろうが、それは悪手だったな。」
「違いない♪仕方がないから本題に入って茶を濁すとするか…何で俺にジークを紹介しようと思ったんだ?」
「正直…分からん。」
「分からんって…。」
「ここに来た用は依頼の確認とジークとゾイの顔合わせの為なんだが…何で今日だったのか…サッパリだ♪ははっは。」
「笑い事じゃないんだがな…。」
「あ、これはジークの案なんだがな、巡回を冒険者にも依頼したいんだが…どうだ?」
「どうだと言われてもな…巡回なんって兵の仕事だろ。」
「そういう巡回じゃなくてな、兵では気付かない部分だな、自警団の様な感じのを新米連中に斡旋できないだろうか?」
「新米にか…それをジークが提案したのか?」
「そうだ。」
「ふむ…分かった検討してみよう。」
「頼む。」
「俺からも訊いて良いか?」
「なんだ?」
「ジャンじゃない、ジークにだ。」
「僕にですか?」
「あぁ、この冒険者ギルドをどう思う?」
「またざっくりな尋ね方ですね…冒険者の人が怖かったです。」
「はははは♪そうだろうな。」
「ということは他の人も同じで気軽には入り難い雰囲気があるってことですよね?」
「…ふむ。」
「そんな雰囲気があると、依頼を出したいけど…入り難いからもう少し自分で、自分達で頑張ってみようと考えて状況が悪化とか、頼みたいけど、自分でも出来ないことはないから依頼は止めとこうと思う人も居るかもしれません。」
「……。」
「子供は特に依頼し難いでしょうね、例えば…母親の誕生日に花を贈りたいけど、城壁の外だから諦めてその辺の花で済ませるとか、家族が病気で薬草が欲しいとかですかね?」
「ふむ…薬草は教会で分けて貰えるが…花なんていうのは依頼で見たことないな。」
「でも花の為に高いお金を出す子供が居るか?」
「お父様の言う通りですね、花の採取だけならお金が高くなるでしょうけど、何かのついでで近くを通る人に頼めばどうですか?」
「郵便みたいなシステムか…。」
「それなら気の良い奴なら子供の依頼だからついでだって言って受ける奴はいるかもしれないな。」
「正直本当にそんな依頼があるのかは僕にはよく分かりませんけど、ギルドに入ったら視線が一斉に集中するのはどうにかした方がいいと思いますよ?あれは怖いですから。」
「確かに…。」
「そうか…あれは怖いのか…。」
「ゾイたちは慣れてるから気付き難いだろうし俺みたいなのもそうだな、でも子供や女性は怖がるかもしれんな。」
「ちょっと配置を変えるかな…参考になったありがとう。」
「いえ、あとは…金額ですかね?」
「おい、ジークそこまではさすがに深入りし過ぎだぞ。」
「いや、ついでに聞かせてくれ。」
「おいゾイ!」
「いいじゃないか、俺たちじゃ思い付かない話が聞けるかもしれんし…その逆かもしれんがな。」
「僕はまだお金のことは良く知りませんから…。」
「そりゃそうだ、だが何か案があるだろ?それなら聞かせて欲しい。」
「…依頼の金額設定が分かりませんから、仮金額ですけど…1万ルセの依頼があったとします。」
「1万か…。」
「これが高いのかどうかは分かりませんけど…。」
「1万は結構な金額だぞ?」
「え?そうなんですか⁉」
「一般的の普通の奴らが年の稼ぎが4万から5万だからな。」
僕の血がサーッっと引く感じが分かります。一般の人の年収4万から5万ということは、俺の生前の年収が450万前後ですから400万から500万ってことで、あの指輪は…。
「お。お父様、あの指輪…。」
「ジークは気にするな。」
「でも…。」
「俺なんか不味いこと言ったか?」
「いいや、自分が強請った金額が思ったよりも高額だったと分かって気に病んでるだけだ…な?」
父は僕の頭を撫でて気にするなと言ってくれます、今後は気を付けよう…。
「そうか…それで?」
「え?…あ、はい、さっきので1万ルセが高額なのが分かりました。」
「いや、そうじゃなくてな…依頼の金額の件だ。」
「そうでした…1万ルセは高額です、依頼したい、でもその金額でしか受けてもらえない、依頼したいけどお金が無いという人の為に依頼料の半分とか1/3の金額で依頼を受けて、残りは何回かに分けて払ってもらうとかどうですか?」
「それは依頼達成後に残りの金を払わずに逃げる奴が出て来るかも知れんからダメだな。」
「それなら逃げられる心配がない村とか街ではどうですか?」
「あ~それなら…いけるか?」
「そこの判断は難しいな…どうしてもってことなら俺の方に陳情してくるだろ?」
「それもそうだな…。」
「そこはさっきの入り難い雰囲気と同じですよ、お金が払えないから自分たちでどうにかしようとして、状況が悪化したり、陳情もギリギリまで頑張ってからでしょうから…。」
「確かにな…俺たち兵が動くときは最悪な状況のばかりだからな…。」
「そうだな、こちらに早目に依頼が来るようになれば、酷くなる前に処理できる可能性もあるか…特にモンスター関連は早い方がいいからな。」
「そうだな…早ければ助かる人も多くなるし、被害もその分抑えられるだろうな。」
「その辺は兵の助力が必要になるかもしれん。」
「そこは後日人を送るから、その前にこちらでも検討してみるが、ギルドの方でも検討しといてくれ。」
「分かった。」
「そうだジーク、依頼者以外…冒険者側で何か気になったことはないか?」
「冒険者ですか?僕は冒険者について全然知りませんよ?」
「それもそうだな。」
「ゾイも無茶言うな、ジークは今日初めて外に出たんだからな?」
「街じゃなくて、外に?」
「あっ、これも伝える為にここに連れて来たんだった…ジークはな…生まれつき足が動かないんだ。」
ゾイさんはチラッと母の方を見ます。
母は欠伸を堪えているようです…話が仕事関係で退屈なのでしょうか?
「…そうだったのか。」
「そういうことだ、成長すればジークから依頼が来るかもしれんからな、その時はひとつ頼む。」
「いやいやいや、成長したらって…ジャンはいったい何十年後の話をしてるんだ?」
「依頼ぐらいならそんなに何十年ってことは無いと思うが?」
「ジャンの名前で依頼すればいいだろ?」
「俺の名前で依頼した方が良い場合はそうするが…ジークの名前で出した方が良い場合もあるだろ?」
「そういう場合もあることはあるが…まあいい、気に留めておく。」
「ああ、それで頼む。」
「あと…ジークの足のことは冒険者連中に話しても大丈夫なのか?」
「別に構わんが?」
「お父様ちょっと待ってください。」
「どうした?」
「僕の足の件はゾイさんだけにしておいた方がいいです。」
「何故だ?周知してた方が色々良いぞ?」
「そうでしょうけど、僕の足のことを知るのはこの街の人や善良な人達ばかりじゃないんですよ?お父様やお母様、それ以外にお爺様たちに悪意を持つ人たちに知られれば僕は良い的になります。僕が原因で何か不利になる状況になるのは嫌ですよ。」
「むっ…。」
「ははは、ジークの考えは尤もだな。ジークが自衛出来るようになるか、護衛を付けるか…それまでは伏せといた方がいいだろうな。」
「そう…か…。しかし自衛か…。」
「そこはメアリーの息子なんだから魔法のの才能があるかもしれんぞ?」
「護衛は既につけてるから…自衛については今年の祝天際で判断だな。」
「え⁉護衛が付いてるんですか?」
「当然だろ…といっても屋敷の中では夜だけだがな。」
「あ~それで全然知らなかったんですね。」
「ははは♪さすがに2歳の子供に気付かれるような護衛じゃダメだろ。」
「え?どういう意味ですか?」
「いくら自分の領地の街だからと言って、護衛も付けずに外に出る訳がないだろ?」
「はぃ?護衛は…。」
僕は視線をミトさんとフェルさんに向けます。
「確かにミトもフェルも護衛でもあるがな…メアリーは兎も角、男の俺が女性に守られるのは…な。」
「私はそれでも構わないんですけどね…。」
「いやいや、そんな格好悪いことはしたくない。」
「この部屋も1人入り込んでるぞ。」
「いや、3人だ。」
「な!全然気配を感じないぞ?」
「あ~あいつらは最近腕が上がって全然気配を感じさせないんだ、俺でも居るのかどうかすら分からん、分からんが今日はジークも連れてるから頼んでおいたから居るはずだ。」
「はぁ~、凄いもんだな。」
父とゾイさんが話してる間、僕は焦って今までの行動を思い出してます。
え?何故かって?変なことをしてないかをです、別に知られても困りませんが、その姿を護衛だとしてもこっそり見られてたかと思うと…ちょっと思うとこはありますよね?
屋敷まで…辿り着きませんでした(´・ω・`)




