♥ 宿屋 5 / 宿泊室 5 / 「 ジャックと豆の木 」の原作 5
マオ
「 多少??
何で『 多少は── 』なんだ? 」
セロフィート
「 そうですね……。
国を防衛する軍隊には、稀にですが優秀且つ有能な軍師が居る時があります。
回復役,補助役,援助役,攻撃役,防御役──等々、マギタを多数に分けて配置させる軍師も居れば、敢えてマギタを囮として配置させる軍師も居ます。
マギタを魔法の攻撃から守る為に、魔法で罠を仕掛け、自滅を誘う軍師も居ます。
マギタを潰す事に拘り過ぎても勝利は出来ません 」
マオ
「 軍師かぁ……。
軍師って凄いんだな 」
セロフィート
「 そうです。
逆に軍師を先に潰してしまえば、勝算もあります。
──王国軍にも優秀で有能な軍師が居たのかも知れません。
友人のジャックとの約束を果たす事が叶わないまま、心半ばで生き絶えてしまう結果となった巨人は、激しい後悔に襲われ、自分の無力さ,不甲斐なさとジャックへの申し訳なさに対して、悔やんだに違いありません 」
マオ
「 ……………………。
ずっと…出会った日から何年間も、巨人はジャックの嘘に騙され続けてたんだもんな……。
大好きな友人のジャックに間接的に殺されちゃったんだよな……。
…………ジャックは悲しくなかったのかな?
友人だと信じて疑わずに接してくれた親切で善良な巨人に対してジャックは何も感じなかったのか? 」
セロフィート
「 マオ……。
──ジャックに良心の欠片でもあれば、巨人も死なずに済んでいたかも知れません。
ですが、巨人は倒され死にました。
ジャックにとって1番邪魔な存在が居なくなったのです。
喜ばない筈がないでしょう。
悲観するどころか、ジャックは歓喜に打ち震えていました。
巨人の屋敷は晴れてジャックの私物となったのです。
ジャックが新たな国王に即位した時、ジャックの私物となっていた≪ 天空の大地 ≫を国民に開放する記念として、 “ 天空の楽園 ” と名付けました。
地上は近隣諸国が土地取り合戦を始め、何時被害が及んでもおかしくない状況になりつつありました。
国民を守る為に、予め≪ 天空の楽園 ≫へ人を派遣し、何時でも避難が出来る様にと内密に開拓をさせ、準備を進めていました 」
マオ
「 国民を守る為に≪ 天空の楽園 ≫を開放するなんて、ジャックは心を入れ替えたのか? 」
セロフィート
「 さぁ?
其はどうでしょう?
改心したのか、していないのか────。
其は此の物語を創作した作者にしか分かりません。
近隣諸国との戦争に巻き込まれる前に全ての国民を≪ 天空の楽園 ≫へ避難させたジャック国王は、≪ 天空の楽園 ≫と地上を繋いでいる豆の木を切り倒しました。
こうして地上を捨て、≪ 天空の楽園 ≫で生き続ける道を選んだジャック国王の成り上がり人生物語は幕を閉じます。
世界が≪ 地上界 ≫と≪ 天上界 ≫の2つに分かれる原因となった物語でもあります。
此が『 ジャックと豆の木 〜 天空の楽園 〜 』の原作版です 」
マオ
「 ………………何かさ、モヤモヤする終わり方だな……。
なぁ、セロ。
其の≪ 天空の楽園 ≫ってさ、実在すんの?
本当に唯の想像の物語なのか??
空想の作り話なのか?? 」
セロフィート
「 はて?
其はどうでしょう?
マオはどう思います? 」
マオ
「 オレ?
…………オレは実在しててほしいな──って思うよ。
不思議が溢れてる世界なんだからさ、夢や浪漫があってもいいんじゃないか──って思うんだ!!
だってさ、 “ 空に浮いてる大地 ” が実在してたらワクワクするじゃんか!! 」
セロフィート
「 ワクワク…です? 」
マオ
「 そうだよ! 」
セロフィート
「 …………………… 」
マオ
「 セロ?
どうかしたの?? 」
セロフィート
「 いえ…… 」
マオ
「 ふ〜ん?
でもさ、どうやって大地が空に浮くんだろ??
現実的に考えると無理があるかもな〜〜〜…… 」
セロフィート
「 そうでもないです 」
マオ
「 は??
どゆこと?? 」
セロフィート
「 “ 不可能ではない ” という事です 」
マオ
「 えぇっ?? 」