セロフィート
「 巨人の屋敷を物にする──という家族の目標を達成する為には必要な事ですからね。
──王国を守る最強の軍隊を動かせるのは国王だけです。
国王から絶大な信頼を得なければ、軍隊を動かしてもらう事は出来ません。
国王を手玉の様に転がす為だけに、ジャックは頑張りました。
婿の言葉を疑わず信じた国王は、着々と巨人と対抗する為の準備を始めました。
其の一方でジャックは巨人と会い、思い詰め、鬼気迫る迫真の演技で「 隣国が軍隊を率いて王国を攻めに来ている 」と言う嘘を吹き込みます。
「 隣国の軍隊から王国を救う為に力を貸してほしい 」と頭を下げ、涙を流し、巨人に助けを求めました。
巨人はジャックの言葉を信じ、王国を救う手助けをする事をジャックに約束しました 」
マオ
「 巨人……ジャックに騙されちゃったよ…。
巨人は、どうなっちゃうんだ?? 」
セロフィート
「 ──多くの軍隊を豆の木に登らせる訳にはいきません。
手っ取り早く邪魔な巨人を倒すには、地上へ下りて来させるしかありません。
ジャックは国王に軍隊を二手に分けて配置させる様に提案しました。
挟み撃ちにして巨人を倒す為です。
二手に分かれ配置に着いた軍隊の準備も整い、後は巨人を迎え撃つだけとなりました。
待ちに待ったXデーが来ました。
巨人はジャックに教えられた通りに、夜の内に豆の木を下り、夜明けと共に目的である隣国の軍隊が陣取っている場所へ向かって歩き出しました。
王国軍は西の山から向かって来る巨人に気付きました。
ジャックの言葉は本当だったのです。
王国軍は王国を守る為、巨人を倒す為に攻撃を仕掛けました。
巨人は王国軍をジャックの暮らす王国を襲う隣国の軍隊だと思い込んでいます。
巨人は唯一無二の親友であるジャックの為に敵国の軍を全力で蹴散らします。
3日3晩の激しい戦いの末、とうとう王国軍は巨人を倒し、首を討ち取る事に成功しました 」
マオ
「 巨人……負けちゃったのか?? 」
セロフィート
「 そうです。
──多勢に無勢でした。
幾ら巨人が強くても、大勢の人間を1体だけで相手にするには限界があります。
少しずつでも体力は削られますし、巨人は一睡も出来ず、食事を取る機会もありません。
傷や体力を回復させるアイテムも持ってません。
巨人には援軍も来ません。
長期戦に持ち込まれてしまえば、巨人には不利な戦いとなります。
人間を食用とする巨人ならば、合間に兵士を喰べれば空腹に悩まされる事はなかったでしょう。
然し、此の巨人は草食系でした。
人間を喰べる巨人の種族ではなかったのです。
其に巨人は魔法も使えませんでした。
巨人が魔法を使える種族ならば、甚も簡単に形勢を逆転させ、人間に勝利する事も容易かった筈です。
戦をする迄もなかったでしょうね。
巨人の魔法は元から広範囲ですから、魔法を2,3発程放てば、5分も掛からず決着は付きます 」
マオ
「 …………魔法って恐いんだな… 」
セロフィート
「 其の通りです。
魔法とは実に便利な殺戮道具の1つです。
使い方を間違えれば、最強最悪の殺戮兵器へ早変わりします。
1度に大量の人間を消し去りたいならば、惜しみ無く魔法を使うべきです。
戦争となった時には、敵陣の後方に控えているマギタを、如何に多く且つ迅速に叩き潰し、全滅させるかで勝気も多少は変わるでしょう 」