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1章 竜の卵
僕はキョウジ。
十六歳だ。
僕は今日、『リウグラント』と呼ばれる亜人や幻獣しか居ない、無人異世界に旅立つ。
未知の異世界なんて、本当なら十六なんて年齢で行ける場所ではない。
それでも僕が行くことが決まったのは、異世界との入り口が現れると同時に『共鳴』という現象が起きたせいだ。
共鳴によって変な能力を身に着けた人々が現れた。
僕もその一人。
僕は共鳴現象によって、幻獣達の感情の色が見えたり囁き声が聞こえるようになった。
そんな能力を持ったものだから、リウグラントへの『幻獣調査隊』に同行を頼まれた。
「君は初日から運がいい。今日は特別な日だからね」
調査隊隊長のリデルさんが言う。
「何せ、竜の卵が孵る日に立ち会えるんだから」
そう。僕らはこれから竜の孵化という貴重な瞬間を目にするのだ。
そして、生まれてくるその竜の子どもは僕らの仲間になるという。