『やってもできない子』が努力する今の製造業、特採チート
エッセイで『やってもできない子』に論ずるものがありました。読んでみて、うん、一理ある、とは思うものの、なんだかモヤモヤとする思いを感じてました。
この『やってもできない子』というのが、何やら自分のことのように思えるのがモヤモヤの原因か? それなら自省しないと。
そんなふうに考えてました。
が、
この『やってもできない子』が元気に主役やってる業界がありました。自分、そこで働いていたってのに気がついて、モヤモヤの根本が解りましたよ。
それが今の製造業。偽装問題が表に出て、ようやく溜まった膿が出てきた感じの製造業です。
『特採』
製造業にある特別採用という名前の慣習。
特別採用とは不適格製品、できの悪い素材や、寸法がズレた部品類などの取り扱いの手法。
国内の素材・部品業界での一般的な商慣行です。
顧客が要求した品質ではないけれど不良にするのはもったいない。納期を考えたら、誤差の範囲として取り扱ったほうが得になるもの。
こういったものを最終製品の品質に影響を与えないことを前提に、顧客に許可をもらって出荷すること。
ただ、この特採はあくまで応急措置で、できるだけ早く正規の品質基準に合わせるのが本来の使い方。なんだけど……。
現状はクレームさえ無ければければいい、として、規格外の不正品を正規品として扱ってます。
私がかつて仕事してた工場では、電子部品を作ってました。細かい部品を手作業で組み立ててました。
本来、ホコリが無いクリーンルームで作らなきゃいけないものだけど、そのクリーンルームが無い。
ぶっ壊れたもとクリーンルーム、今はクリーンじゃないルームがあるけど、修理する金が無い。
そんな工場で作ってました。
で、これが数が多いので内職にも出してます。
このテの内職をしてくれる方というのは、小さなお子さんがいて働きに出るのが難しい女性が多いですね。
お子さんの面倒をみながら自宅で内職して、できた部品を持ってきてくれます。
ちっちゃなお子さんが側にいる状況が、できた部品からうかがえます。
お菓子の包み紙の破れたもの、お菓子のかけら、溶けたチョコ? なんか黒くてペタッとしたの。
そんなものが部品を入れたケースに入ってます。
これをクリーンルームで作ったように見えるように、頑張ってエアー噴射でゴミとホコリを飛ばして綺麗にします。
こういう作り方してることは親会社にはヒミツですよー。内職を使ってることも内緒ですよー。
これが日本の電子部品の作り方。
親会社が視察に来る、となると「隠せ! 隠せ!」と、倉庫の奥とか食堂に運んで見られないように隠します。
見つからなきゃいいんです。そこでは。
『今はクリーンルームが無いけれど、いずれはクリーンルームを修理して、ちゃんとホコリの無いところで作ります』
と、言っておけば、これでオッケー。
そのための努力はしてますよ、のポーズが大事。何年もクリーンじゃないルームはそのまんま。
『なかなか修理する予算ができなくて、銀行も貸し渋りですし。でも、製品を良くしようと努力はしています』
という、成果に結びつかなくても、努力してる姿勢を見せることが大切。
今後良くします、と、言っとけば特採でなんとかなるし。
東レはこの特採で、不適格製品の出荷を品質管理担当者の判断で許可。三菱の子会社も特採を悪用。『顧客からクレームがなければ問題ない』ということで、規格外の不正品を正規品として出荷していたわけで。
ぶっちゃけ、クレームさえ無けりゃ何やってもいいんじゃー、と、デタラメなもんです。
ちゃんとやってるとこはあるんでしょうけど。ヒドイとこは際限無くヒドイもんです。
運転免許持ってないバイトにフォークリフト運転させたり。
私も熔接の資格持ってないけど、他にできる人がいないって言われると、仕方無いか、と熔接したりしてました。
ほら、ちゃんと資格持ってる人を雇ったら、人件費が高いから。
日産も、無資格検査が問題になりましたね。
偽装と不正のチキンレースは、今も継続中。
日本の製造業の暗部は『やってもできない子』の見せかけの努力と、それを守る特採で作られています。