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サンライト日記 ~呪いのアイテムに愛された異世界道具屋~  作者: カタリ
一品目 因果応報の指輪
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道具屋と武器屋のコミュニケーション

「カアーーー!この一杯の為に生きてるって至言よね!まさにその通りだわ!」

 一気に半分以上ジョッキを空けてそんな事をのたまうエリィ。

ランドも酒には強い方だが彼女のペースには着いては行けない。

 「あんまり飲み過ぎてはダメですよ?」

 「な~によ~、このくらいでアタシが酔っ払うとでも思ってんの~?・・ハグッ!」

 「・・行き過ぎるとまた妹に口にキノコ突っ込まれますよ?」

 「モグモグ・・・うぐ・・それはイヤだけどね・・・」

 今朝彼女はこの世の物とは思えない味覚を味わっていた。強烈な二日酔いが、どうでもいい事に思える程不味いキノコ。

 二日酔いが治ったのが『酒消茸』の効能ではなく『不味さ』じゃないかと思える程だ。

 「ランド君、何であんなもんリリィに売ったのよ~!・・・ハグッ!」

 「二日酔いに効く物はウチではアレしか無いんですよ、それに飲み易くする方法はリリィちゃんにも教えましたよ?まあ、不味いまま食わせる気満々でしたけど・・」

 「おかげでアタシは朝からあんな物食わされたんだからね!・・モムッ!」

 「それは知りませんよ。元々昨日あげた『どぶろく』をエリィさんが全部飲んじゃうからいけないんですよ。強いから少しづつ飲むように言っておいたのに・・」

 「あんな美味しいとは思わなかったもん!モグッ!・・・それに『保存すると悪くなる』って言ってたのランド君じゃん!・・ムグッ!」

 「保存を間違えるとって言ったんです!大瓶一本一晩で飲み干す必要がありますか!」

 「だって美味しかったもん・・・ハグッ・・」

 「あの・・・ところでエリィさん?」

 「なに~?・・・ハグッ・・・」

 ランドの不満げな言葉にエリィは全く悪びれた様子も無くモグモグ口を動かした。

 「巻いたそばからパスタを奪うの止めてくれませんかね・・。僕も食べたいんですが・・」

 さっきからハグハグ言っていたのはエリィがランドがフォークに巻いたパスタを横から勝手に食いついて奪っていたのだ。ようは強制的な摘み食い。

 「あれ?バレた?」

 悪戯っぽく笑って見せるエリィ。

そんなおふざけが出来るほど、そしてその行為が間接キスになっているのに気にしないくらい二人は気安い関係であった。

 周囲から見たら付き合いの長いのに未だラブラブなカップルにしか見えない。

 そんな様にこの酒場では一つの賭けが常連の間で横行している事を二人は知らない。

 賭けの内容は『この二人が何時男女の関係になるか』だったりしていた。

 そんな事をしているとエリィは一つ噂話を思い出した。

 「あ!そう言えばランド君、今日なんか凄い物を買い取ったって聞いたけど?」

 「は?何をですか?」

 「宝石よ、宝石。なんか大層な物を売りに来たって・・」

 「あ~~~、あれですか・・・。どっから聞いたんです?」

 ランドが真っ先に思い出したのは中年兵士の駐在さんだが、あの手の連中は基本的に守秘義務がしっかりしている。

 犯罪に結びついては困るからであるが・・。

 「何かリリィが市場に行った時にオバ様たちが噂してたってさ。『サザナミで近々高級な宝石が売りに出される』って・・」

 ランドはその噂話で思い至った。

彼の店は道具屋兼喫茶店である。そういえばあの時間帯話し込んでいる奥様たちがいた。

 「・・しまったな~あんまり話を広めたく無かったんですけど・・」

 「・・どういう事?」

 「・・実はですね・・」

 ランドは本日あった宝石の買取に関する事を駐在に持って行った事も含めて説明した。

 段々とエリィが肘を付いて呆れ顔でランドを見始めていた。

 「・・バッカね~、いらないってんなら貰っちゃえば良いのに・・」

 「そうも行きませんよ、道具屋として金銭の発生しない物は受け取れませんよ」

 そう言うランドはあくまで真剣である。

エリィも内心では『ランド君らしいな』と思い微笑んでいた。

結局この二人はプロ意識を持った似た者同士であった。

「それで?その宝石はどうしたの?預かるにしても・・・・」

「・・ああ、実は家に置いて置くのも不安で・・・今も持ってるんですよ・・」

ポケットを叩くランドにエリィは眉を潜める。

「そりゃ『ランド君だったら』持っていた方が安全かもしれないけど・・、大丈夫なの?」

「まあ、気をつけてはいますけどね・・」

エリィはジョッキのワインを飲み干してお代わりを要求する。本日三杯目だ。

「ねえ、ちょっとだけ見せてもらってもいい?その宝石」

「ん?んん~、まあいいか・・」

ランドとエリィは内緒話をするように隅っこに顔を寄せ合う。

さすがにおおっぴらに見せるのはこの場では気が引けたからだが。

その格好でランドはカウンターの上に例の指輪を布袋から転がし出した。

青い宝石がランプに照らされてギラリと光る。

あからさまに高そうな宝石を目にしてエリィは色めき立った。

「うわ!これか・・・、確かに高そうな指輪ね・・」

そのままではマズイと思ったらしく、エリィはハンカチを使って指輪の金属部分を持つ。

「こんな物を前にして良くまあ『受け取れない』なんて言ったものね・・」

「いや、こいつに見合った値じゃないと買い取れないって言ったんですよ。こんな物買い取った日には、それだけで店が潰れます」

「金はいらないって言われているのに・・まったく君は・・・・ん?」

言いながら宝石を眺めていたエリィの顔が一瞬で曇った。

「どうかしましたか?」

片目を瞑って手にした宝石を見るエリィは顔をしかめる。

「ん~? いや~? な~んかどっかで見た事あるような雰囲気を持っているような・・」

 

『マズイ!この女『鑑定眼』の持ち主か!?』指輪は慌てて自らの気配を押し止める。


「何かあるんですか?」

ランドの言葉にエリィは首を振って指輪をランドの掌へ返した。

「ううん、気のせいみたいだ。一瞬『呪いの武具』に似た気配を感じたんだけど・・」

「・・・・そうですか」

 ランドの掌で宝石は今は控えめに輝いていた。

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