魔人の腐った追憶
相当昔の話だ。
私の家は名家と国からも認められている貴族の一族。
だが、栄えある我が家の歴史の中で、常に上に立つのは『年端の行かぬ女性』であった。
理由は我が家に伝わる『純潔の聖女』のみが纏う事のできる『聖女の神衣』があったからだ。
それは纏えば強力となり、攻撃は羽の如く受け付けなくなり、驚異的な回復力を持ち、尚且つ纏っている間は不老と化す、まさに神の如き力を得る衣服だ。
名の通り当然女性しか纏う事は出来ない。
その為に戦地に借り出され武功を上げるのは姉や妹たち、男である自分は『お家の存続』を優先的に考えた一族の総意で戦争に行く所か満足に家を出る事すら禁じられた。
それでも自分も男のつもりだった。
例え世間で自分を『女の陰に隠れる男のクズ』と揶揄されようとも、いざと言う時には自分が家族を守るつもりでいたのだ。
あの時までは・・・・。
『男が剣の一つも振れないでどうする』と衛兵から剣を借りようとした時、一つ上の姉が慌てて剣を取り上げて言ったのだ。
「何をしているのですか! 貴方にそんな物は必要ありません! 貴方の役目は我が家に確実な跡取りを作る事です!」
その言葉で自分が『この家』でどう思われていたのかハッキリわかった。
こいつらにとって私は体の良い『種馬』以外の何者でもないという事が・・。
そうして私は思った……一騎当千の戦士気取りの者共は果たしてどれくらい強いのかな?
その者たちが自分の守るべき者では無い事が分かってから、急にそんな考えが私の中によぎった。
果たして『聖女の神衣』を着ていない時にどれくらい強いのか?・・・・と。
結果は面白くないものだった。
結局姉たちは『聖女の神衣』に踊らされていただけだったようだ。
そうでなければ戦場に出た事もない、まともに剣すら振ったことの無い、そんな非力な私の剣を“入浴で服を脱いだからといって、真正面から心臓に食らうはずが無い”。
まあそれはそうか、着ただけで最強の力を得てしまう服だ。
それだけで力強く動いて攻撃を受け付けないのだから武術など必要なかったのだろう。
ド素人の突きを受けた姉は何か口をパクパク動かしてはいたのだが、次第に動かなくなって倒れ付した。
「あっけない……」
そんな時床に脱ぎ捨ててあった『聖女の神衣』に倒れた姉から噴出した血液がドンドンと染みこんで行き、白かった服は次第に赤く染まって行く。
その様を見ていると、自分の中である閃きが生まれた。
「・・・もしかしたら・・・・」




