呪いの指輪が見る夢
それは悲しき恋の物語。
ある村に手先の器用な男の子がいた。
男の子は、ある日昔から好きだった近所の女の子に手製の指輪をプレゼントした。
当然宝石など買う財力など無い彼は偶然にも青く光る綺麗な石を山中で見つけた。
男の子は石を指輪に加工して『婚約指輪』としたのだった。
子供の約束と大人たちは笑ったのだが、その時の幼い二人は本気だった。
本当に将来一緒になる事を誓い合っていたのだ。
だが、そんな微笑ましい約束も悪意ある他者によって引き裂かれた。
『純度の高い聖女』そんな下らない理由から少女は命を狙われる事になってしまう。
その邪悪な者、男の子の何倍も大きい者に男の子は小さいナイフを手に果敢に挑んだ。
ただ、少女を守ろうとして・・。
しかし現実は残酷である。
少女は動けなくなった少年の目の前で胸を貫かれ殺されてしまった。
少年は“残った右手”で冷たくなった少女の左手を握り締め、息絶える瞬間まで呪詛を繰り返していた。
『ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・・・』
翌日、村の片隅で手を取り合って殺されている二人の子供が発見された。
全身を引き裂かれながらも少女を守ろうとした少年は以降、村の英雄とされ、更に二人の葬儀は両家の希望で結婚式としても執り行われたのだった。
皮肉にも死後に二人の約束は果たされたのである。
ただ、二人の間で交わされた『婚約指輪』だけは見つかっていない。
少女の左手薬指に確かにはまっていたはずなのに。
そして、二人を殺した犯人も……未だに見つかってはいない。
「夢?」
店内のカウンターで休眠していたインガは、自分を照らす朝日に気が付き目が覚めた。
実体化して目をこすると、さっきまで見ていた夢を思い返してみる。
『体験した事でもないのに、妙にリアルな夢だったな・・』
とある少年少女の悲劇、そんな話を自分が好んで聞いた覚えも無いのに。
『俺が発現してから約二百年、今まではそんな事も無かったのに最近は何か考える事が多くなってきた気がするな・・』
今までインガは『呪いの指輪』として所有者の因果律を早める事のみに終始していた。
その為にそもそも自分が『思考』していたのかも良く分からないのだ。
最近は自分が『呪いのアイテム』として活動していないせいか違う事を考える機会が増えている。
そもそもコーヒーの入れ方やお菓子の作り方など必要ない知識だった。
『店長・・・そろそろ起きたかな?』
自分の変化の第一要因である男の居住スペースである二階を眺めてインガは呟いた。
「窯に火・・・入れとくか・・」




