昨夜の真実
証言③駐在兵士ノール
「ノ・・ノールさん、何?今日は定休日なんだけど!?」
突然の闖入者にエリィはあからさまに声を荒げた。
まあ誰がどう見ても怪しい反応である。
駐在兵士ノールは男女が慌てて離れた状況で何かを察したようだ、物凄く申し訳なさそうな顔になった。
「あ~~~すまん、もしかして・・お邪魔だったか?」
「いいえ!決してそんな事はありません!」
「そうだよ!いったい何がお邪魔だっての!?」
全力で否定に掛かる二人、自分が本格的に良い雰囲気をぶち壊したとノールは目を伏せた。
「いや、本当にスマン、昨日の二人の状態があんまりだったから心配で・・ちょっと様子を見に来ただけだったんだが・・」
『『ん?』』
ランドもエリィもノールの物言いに同時に違和感を感じた。
『心配だった』……昼間の聞き込みでは無かった感想だ。
大抵好奇心からの『その後どうなった?』って反応だったのに。
「ごめんな・・邪魔しちゃって・・・」
「「ちょっと待って!」」
申し訳なさそうに帰ろうとする駐在さんを二人は全力で引き止めた。
「ノールさん、心配だったってどうしてですか?」
「私たちに昨夜何かあったの?」
勢い込んで聞く二人にノールは面食らった。
「・・昨日の夜の巡回で酒場に行ったけど・・二人とも酔いつぶれていたからな・・」
「酔いつぶれていた?」
いぶしかげに聞くエリィにノールは頷いた。
「ああ、結構早い時間でな・・」
・・それではおかしい・・ランドは瞬時に本日の聞き込みを思い出す。
どう考えても昨夜自分たちが取ったと言う行動は潰れていては出来ないはずなのに・・。
「ノールさん・・その辺もう少し詳しく教えてもらって良い?」
エリィの真剣な表情に気おされてノールは昨日の記憶を搾り出す。
「う~~~ん、多分だが、夕刻の鐘が鳴るよりも相当前だったと思う・・。部下たちと巡回の為に酒場に入ったら、君らがいつもの席で潰れてたな・・ワイン2~3杯くらいで・・」
「2~3杯?」
それではミリンの証言と合わない。
そもそもその程度で自分たちが潰れるのはおかしい。
「君らが結構な酒豪なのは町の皆が知ってる。そのくらいで潰れたなんて体調でも悪いのか? と心配したくらいで・・」
そう思ったからこそ、ノールは定休日の武器屋にわざわざ尋ねたのだった。
お役所仕事で片付けない良い駐在さんである。
ノールの証言にランドとエリィは顔を見合わせた。
「・・・おかしくない?」
「ええ・・昼間の聞き込みと証言が違い過ぎますね・・」
そもそも昼間の聞き込みを行ったのは、二人共『酒場からの記憶が無かったから』だ。
その点だけを考えると『酒場で潰れていた』と言うノールの発言が正しく聞こえる。
ノールは更に続けた。
「俺らも“このまま寝かしとくのはいかん”って思って家に送ってこうか?って話したんだがな・・『いや、いいです』って言われて・・任せて帰ったけどよ・・」
ピクリ・・・二人の耳は決定的な違和感を聞き逃さなかった。
「ノールさん・・最後に聞くけどさ・・・」
「任せたって・・・いったい“誰に?”」
疑わしげに聞くランドとエリィにノールは何でも無いことのように“その人物”を答えた。




