胎動する呪い
『惨殺の裂傷』世間で俺はそう呼ばれているらしい。
しかし真実を知っている者は存外少ない。
手にした者が操られて周囲の者に殺戮を行うのは正しいのだが、それだけでは半分だ。
呪いの武具は火により浄化される。
確かに大抵の物であれば、それで浄化できる。
だがもしも『火により浄化できない呪い』があったとしたら?
俺を製作した鍛冶師の男は狂っていた。
男が夢見たのは唯一つ、『自分の作品が永遠に人を切り殺す』事だった。
そして、その男はついに『火で浄化できない呪い』を編み出したのだった。
呪いの代償で男は俺の製作時に灰も残さずにこの世から燃え尽きた。
だがそいつにとって自分の死など、どうでも良い事なのであろう。
何故なら燃え尽きる瞬間まで男は笑っていたのだから。
男の編み出した呪いのおかげで、俺は高温で溶解されても存在を消される事は無い。
新たな剣として蘇っても俺は存在している。
そうして呪いの剣『惨殺の裂傷』は受け継がれていくのだ。
ほう・・今回の鍛冶師は女か・・・。
どうやらある程度の『鑑定眼』はあるようだが、溶解で全ての呪いが消えるのを常識と考えている辺り、まだまだ甘いな・・・。
紅い剣は溶解されてなお、魔鉱炉の中でほくそ笑んだ。




