昨夜の聞き込みは恥辱の極み 道具屋編
ランドとインガはとにかく昨夜の行動を追跡してみる事にした。
何かのアクションを起こさないと自害しようとするランドにインガが提案した結果だが。
「とにかく最初は酒場『ファイア・ワイン』からだな。店長、昨日の晩で覚えているのはココまでなんだよね?」
「う・・・うん・・」
普通の調子のインガに比べてランドの表情は今もって暗い。
まだ自分が犯罪を犯したという疑念に囚われているからだが。
「店長、ノリで俺も言っちゃったけどさ、そもそもあんなに強いエリィさんが無理やりどうこう出来るとは思えないけど?」
インガも仕事の都合上、武器屋を訪れた事があり、エリィの強さを目撃したことがある。
「ん・・・・?」
「抵抗も何も無しにどうこうは出来ないでしょ? 例え酔ってたとしても、店長無傷だったし・・」
「・・・・・」
考えてみればそうだ。
流れで酔い潰してどうこうと言う妄想をしてしまったが、そもそもエリィ相手に無傷で強姦は無理がある。
「・・・そうか、そうですよね!」
ランドは少しだけ調子を上げた。
「よし、まずは昨日の自分の行動を洗ってみよう!」
そう言い、昼間から酒場の扉を開けるランドにインガも付いて行った。
証言①ウェイトレス・ミリン
「あら? ランドさん、まだ準備中だよ?」
客のいない酒場のホールではウェイトレスのミリンがテーブルを拭いていた。
バケツやモップも準備されている事から、どうやらお掃除中のようだ。
昼間の明るい酒場はいつも見る夜の風景とは違った雰囲気を持っていて新鮮であった。
「ミリンちゃん、悪いけど今日は客として来たんじゃないんだ・・」
ランドは緊張の面持ちで切り出す。
「実は昨夜の事なんだけど・・・」
その瞬間、ミリンは喜色全開の表情でランドに詰め寄った。
「あー! そうそうランドさん! 昨夜はどうだったんですか?」
「え?」
聞こうとしていた事を聞き返されてランドは面食らってしまう。
「どうだったって?」
「も~とぼけちゃってぇ! エリィさんと一緒に行っちゃったから、ついに賭けの決着が着くか! って盛り上がっていたんだから!」
酒場で横行している賭けの内容を知らないランドは何を言われているのか分からなかったが、前半ミリンが聞き捨てならない事を言ったのは分かった。
「ちょちょちょっと待って! 誰が誰とどうしたって?」
慌てて聞き返すランドにミリンはキョトンとする。
「だから、ランドさんがエリィさんと一緒に夜の闇へと・・」
ミリンがそこまで言うとランドは拭いたばかりのテーブルに両手を“バン”と付いた。
「お願いします!その辺の話をもっと詳しく!」
*
「記憶が無い? 本当に?」
ランドの説明(パンティーの件は無し)にミリンはガッカリと言うより若干軽蔑の篭った眼差しで聞き返した。
「責任逃れの男の常套句じゃない? 本当にぃ?」
「・・誠に遺憾ながら・・、それで昨夜の自分の行動を追っているんですけど・・」
ミリンの疑わしそうな目付きをランドは真正面から見ていた。
ミリンの目付きは恐らく男が女性から向けられるには最高に辛い目なのだが、そんな物よりも更にランドは怯えているのだ。
見えない何か、昨夜の自分自身に・・・。
「頼みます! どんな細かい事でも良い、詳細を教えてください! もし何かをやらかしていたなら僕は何らかの責任を取らなくてはなりません!」
「わお!」
「場合によっては僕の命で!」
ミリンは『責任』の辺りで感心するが、『命』の下りでランドがナイフを取り出したのを見て、インガと一緒に大いに慌てた。
「わあ! ランドさん分かった! 貴方の誠意と覚悟の程はよーく分かった! 教える、私の知っている限りの詳細を教えるから!」
「店長! あんた、まだ持ってたのかよ!」
ナイフは結局二人掛かりで取り上げられた。




