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サンライト日記 ~呪いのアイテムに愛された異世界道具屋~  作者: カタリ
二品目 目覚める殺戮の剣
14/55

お宝拝見

「さ~て、本日の商品を見せて貰おうかな?」

新しいシャツに着替えたエリィはランドの持って来た武器防具をカウンターに置いて一つ一つ吟味し始める。

先ほどとは打って変わって真剣な眼差し。

ランドも商売人モードに切り替わって商品の説明をする。

「今月はコレで全部ですね。内訳は普通の武器で剣が3本、ナイフが16本、槍が 2本に斧が1つ、メイスが1つ、珍しい所でメリケンサックが2つ・・」

「へえ~意外と劣化損傷は少ないね、コレならそのまま商品に出来そうだ・・」

「防具は皮製鎧が3つ、鉄製1つ、但し錆つきが酷いね・・」

「どれどれ・・・うわ、本当だ。チッ手入れも知らない奴がほったらかしてたな・・」

「後は兜が5つ、鉄製の盾が2つ、まあ盾は性質上損傷は仕方がないけど・・」

「まあね・・・でも・・うわ・・凄いねこの爪あと・・」

目利きの出来る者同士、一つ一つの武器防具の説明も少ない言葉で交わされ行く。

何気ない会話の中にも商談が入っているのだ。

ちなみに武器に関しては『劣化損傷が少ない』と言ったのは、エリィ側が『それなりの値で引き取る』の意を示していて、『錆付きが酷い』『損傷が仕方ない』は ランド側が『捨て値で良い』と言っているのだ。

そんな調子で『普通』の物が捌かれると、今度は『普通じゃない』物の商談へと移る。

要するに『呪われた武具』の事だ。

「では、次の商品に移りますか・・」

「はいはい、ちょっと待ってな・・」

そう言いつつ、エリィは皮製の手袋に符術の描かれた物を両手にはめた。

呪いの発動は各種様々あるのだが、基本『直接手を触れる』事が引き金になる事が多い。

そんな理由から呪いの武具を扱う際には魔術耐性の手袋が必須なのだ。

しっかりと手袋を手首で縛ってエリィはカウンターに並んだ物に向き合った。

「・・今回はこの5品?」

「はい、全部旅人の持ち込んだ代物ですね・・・」

内容は右から鎖鎌、盾、脛当て、鎧、剣である。まず最初にエリィは鎖鎌を手に取る。

黒光りする鎖が動かす度にジャラジャラと音を立てる。

肝心の鎌は刃こぼれが酷く、対にあるはずの分銅が見当たらない。

「これでは武器として使えないな?ランド君、これには何の呪いが?」

ランドは表情も変えずにポケットからメモを取り出して読み上げた。

「それは緊縛の鎖鎌ですね、何でも相手のいないMな男が縛ってもらいたい一心で作り上げた伝説の武器で、真のMが使用した時のみ縛ってくれると言う・・・」

「あ~もう良い、分かった・・・」

エリィは頭を抱えて『溶解処分』と書かれた木箱に鎖鎌を放り込んだ。

「次のこれは?」

全体的に赤色の装飾が施されている見た目鉄製の盾だ。

しかし先ほどの盾と違って傷一つない。

盾は主に攻撃を受ける事を前提としている為に防具の中では一番損傷が激しい。

先ほどランドが『性質上仕方がない』と言ったのはそういう意味もあるのだ。

「それは『熱血な盾』ですね・・・」

「熱血な?熱血の・・じゃなくて?」

武器職人の中にはそう言った暑苦しいネーミングを好む輩もいる。

実際そんな名前の武器をエリィ自身見た事がある。強度、扱い易さ、装飾、どれをとっても素晴らしい出来だったのにネーミングでガッカリするパターンだ。

だがランドは首を振る。

「熱血な・・で当ってますよ・・・持ってみれば分かります・・・」

微妙な顔で言うランドに促されて、エリィは盾を構えてみる。

その瞬間に盾の装飾と思っていた部分が目と口になって話し始めた。

「心配するな!お前は俺が守る!俺が死んでもお前の中に俺の魂が生き残り・・・」

延々と熱血に『お前を守る』と言い続ける盾、エリィは盾に傷一つ無かった事を納得する。

確かにこんな盾は使い辛くて仕方がない。

「なるほど・・・『熱血な』・・ね」

ガランと『溶解処分』の木箱の中に投げ入れると盾は急に大人しくなった。

「・・・次、これは?」

「えーっと、それは『豪猛の脛当て』ですね・・・」

「豪猛の?随分と猛々しい名前ね・・・どんな呪いが・・・・」

エリィは言いながら「ん?」と何かに気が付いた。

「豪猛・・・脛当て・・・ごうもう・・・すねあて・・・剛毛・・・脛・・・」

字面で呪いの内容に思い至り、エリィは脛当てを箱に投げ入れた。

「次行ってみようか?」

「そうですね・・・・」

ランドがそれ以上何も言わない所でエリィは自分の予想が外れていない核心を持っていた。特に確認もしないけど。

「お次のこの鎧は・・・」

「あ~~~~これは、まさか!」

ランドの説明の前に胸のプレートに彫られたロゴにエリィは気が付いた。それは数年前ある商品で大打撃を受けて倒産した武器防具メーカーの物だった。

「アンチエイジング社製の鎧って事は?」

ある意味確信を持って質問すると、ランドは『正解』とばかりに頷いた。

「ええ、強制ダイエットの鎧です。付けたが最後、理想の体重になるまで絶対に外せない鎧。使用中は風呂にも入れないから全身が汗疹だらけで被れて来る、それでも脱ぐ事が出来ずに治療も出来ないという恐ろしい一品」

この商品を画期的な一品として世に出した事が、その会社の運命を決めてしまったと言う立派な『呪われた鎧』であった。

「・・・・確か全部回収されて溶解処分になったはず・・・よく残ってたね・・」

「未使用のコレが遺産分与の段階で蔵から出てきたそうです。何でも生前に奥様が買ったけどそれで満足して使わなかったとか・・・」

良くあるダイエットアイテムの扱い、買っただけで満足した奥様は呪いを受けなかったのだから世の中分からないものである・・。

「何にしろコレも溶解処分だな、確か材質はミスリル製だから・・」

思わぬ掘り出し物にエリィはルンルンと鎧を箱に放り込んだ。

バラされてガチャガチャと音を立てる鎧が若干物悲しい・・。

「さ~てと、最後はこの剣か・・」

エリィは軽いノリで剣を取ろうとして「うっ」と手を引っ込めた。

「こ、これは・・・」

「・・・さすが、一目で分かったみたいですね」

ランドは抜きもしないでその剣の危険性を見分けたエリィに感心していた。

その剣は普通の皮製の鞘に納められている飾り気も何も無い『一般的な』剣に見える。

しかしエリィには鞘から滲み出すような『何か』が見えていた。

エリィは急遽手で抜く事はせず、棚から金挟みを取り出す。

大抵の呪いの剣は鞘から抜いた時に呪いが掛かる事が多い。

実はこの金挟みは手袋よりももっと強力な魔術耐性を咥えられた処理が施されているのだ.

高価な上に使用制限がある為エリィが危険と判断した時のみ使う代物だ。

エリィは剣の柄を金挟みで掴んで刀身を鞘からゆっくりと抜いて行く。

皮製の鞘からは金属では有り得ない程の『深紅』の刀身が現れた。

「深紅の刀身・・・まさかコレ・・・」

一筋の冷や汗を流してエリィは自分の知識にある武器と照合する。

「そうです『惨殺の裂傷』手にしたら最後、使用者の意識を乗っ取り周囲の全てを切り殺すまで止まれない曰く付きの一品です」

「うは~~~~これが・・・」

エリィは金挟みで持ったまま、剣を色々な角度から見る。

深紅の刀身は『切った人々の生き血を吸ったから』何て言われているが、真意は不明だ。

赤い刀身に刃こぼれもくすみも見られず、にわか知識の者であれば「美しい」と安易に手を取ってしまいそうである。

しかし、にわかでないエリィにはこの剣から絶えず漏れ出る物をしっかりと見据えていた。

「物凄い殺気ね、この剣殺戮の意思だけはしっかりと宿しているようだ・・」

「さすがですね、そこまで分かりますか」

感心するランドにエリィは少しだけ笑って見せた。

「伝わっている逸話と、この殺気を組み合わせれば何となくね・・」

そんな事を話していると金挟みから『ピキ』と乾いた音が聞こえた。それは使用限界を超えた音、エリィがそれに気が付いた時には金挟みは粉々に砕けていた。

「あ!」

挟んでいた剣が床に落ちそうになった時、ランドは反射的に手を出してしまった。

「ダメ!ランド君!さわるな!」

「!」

慌てて叫ぶエリィの声でランドは手を引っ込めるが、柄の端が指の先端を掠めた。

その瞬間、自分ではない何かの声が頭の中に響いた。


『切りたきモノ、全て切れ』


柄が指に当たった剣は高く跳ね上がって床に突き立った。

一瞬だが剣に意識を持っていかれそうになったようで、ランドの全身からどっと汗が噴出して反射的に蹲ってしまった。

「大丈夫かランド君!すまん、金挟みの使用期限が近かったみたいだ」

「・・大丈夫です・・すみません、余計なこ・・」

気遣うエリィに顔を上げ、笑いかけて無事をアピールしようとしてランドは固まった。

跳ね上がった剣が自分に語りかけたのは何だったか・・・

まさかランドの切りたい物は『それ』だったのだろうか?

『惨殺の裂傷』はエリィの作業ズボンのベルトを切り裂いていた。その結果、ランドの目の前に大変な物があった。

ずり下がったズボンから、水色縞々の女性下着・・いわゆるパンティーが・・・。

「あ・・・・」

「うわああああああああ!すみません!僕は何も見てません!」

慌てて目を逸らすランド君、この状況で『見てません!』は『ばっちり見た』と公言しているのと一緒なのだが。

対するエリィの方が少し顔を赤くしたくらいで冷静にズボンを履き直す。

「ほんと・・・ランド君くらいね・・」


*


 呪いの魔剣『惨殺の裂傷』。

 今回の中で特に危険だと判断されたそれは、その日の内に『魔鉱炉』へと入れられ溶解された。

 呪いがキツイ物は溶解と呪いを焼き消すのに時間が掛かるからだ。

 

 しかしエリィの予想に反して紅い刀身は高温であっさりと溶解されて行く。

 

 それでも大事を取って一晩は『魔鉱炉』での高温状態を維持しなくてはならない。

 彼女の師匠、実の父親による教えだった。


 厳重な炉の扉を閉めた時、エリィはまた汗だくになっていた。

「ふう・・これで一晩ね・・リリィ!魔鉱炉見てて!」


 エリィは作業場から店内の妹へ声を上げる。

 姿は見えないが軽快な声が返ってきた。


「はいはーい・・・、飲み行くならちゃんと着替えなよ~。またランドさんに怒られ・・いや?むしろ喜ぶかな?・・・お姉ちゃ~ん、やっぱり着替えなくても・・」

「着替えるわよ!まったく!」


 顔を赤らめるエリィは気が付かなかった。

 自分の後ろにある魔鉱炉からただならぬ殺気が漏れ始めていた事に。

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