道具屋と武器屋の繋がり
「・・・そちらの守備はどうだ?」
「ブツは手に入れた。後は状況の方だな・・」
昼下がりの公園、子供連れの家族や恋人たち、熟年夫婦が散歩しているなど喉かな光景の中、背中合わせのベンチにそれぞれ座った者たちは無関係者を装って話す。
このやり取りは外部に漏れるとまずいのだ。
「舞台も整っている。既に協力者とも接触済みだ」
「さすがダークストマック、仕事が早い」
「ぬかせデスフォーチュン、貴様こそ仕入れの早さと正確さには恐れ入る・・」
背中合わせの二人は忍び笑いをして立ち上がった。
「では守備通りにな・・・」
「しくじるなよ?」
「そっちこそ・・・」
平凡な町サンライトに不穏な空気が漂っている事に公園にいる人々は気が付かなかった。
*
あなたはご存知であろうか?
俗に言う『呪いの武具』と呼ばれる物が意外と高値で取引されている事を。
剣などにはよくあるのだが、鞘から抜いた瞬間に使い手が剣に意識を乗っ取られて、仲間を惨殺してしまったなどの逸話は珍しくない。
ただ、この手の武具は結構良い素材で作られている事が多い。
それはそうだ、呪いの媒体と『成り得る』素材はタダの合金と言う訳には行かない。
そんな訳で『素材代』としてそれなりの買値となるのだ。
道具屋は呪いの有る無しを目利きが出来るかどうかで、一流かそうでないかが決まると言っても過言ではないのだ。
大体月に一度、ランドは武器屋ソードアイランドにまとめて買い取った武器防具などを流通している。
物が良いものは研ぎなおすなどして、そのまま売りに出される。
そして物の悪い物、特に呪いを持っている武器は『魔鉱炉』の高温で溶解される。
火は素材に付いた全てを浄化する。
溶解する事で呪いなど危険な要素を全て白紙に戻してただの『素材』として再び利用する事が出来るのだ。
道具屋と武器屋、大抵の町や村に一軒はあるこの二つの店は密接である事が多いのだ。
本日も出所不明の武器をランドは手押し車にガチャガチャと積んで武器屋の扉を叩いた。
「すみませーん、サザナミでーす」
店名を名乗るが返事がしない、2~3回試してみるけど同様であった。
「・・・出かけてるのかな?」
そう思ってランドがドアノブに手を掛けると鍵は掛かっておらず扉は抵抗なく開いた。
「アレ?開いてる?」
ランドが入ってみると、カウンターが一つある店内には所狭しとあらゆる武器防具が陳列されている。分かりやすい所で剣、槍、ハンマー、斧、皮製の鎧から鉄製の鎧、比較的見慣れているランドだが、扉を潜った瞬間に違う世界に迷い込んだ気分になる。
店内に入ってみても誰一人としていない。
しかし店の奥からはカーン、カーンと鉄を叩く子気味良い音が聞こえていた。
「スミマセーン!エリィさーん、ランドでーす!」
ランドがさっきよりも大きな声で叫ぶと、奥から聞こえていた音がピタリと止んだ。
そして少し待っていると良く知っている飲み仲間が汗を拭きつつ奥から出てきた。
「お~っすランド君、昼間に会うのは久しぶりかな?」
汗だくのエリィは長い赤毛を後ろで結んで、煤の付いたシャツを横で縛っている。
動き易いように下は作業用のズボン、こちらも年季が入って煤だらけだ。
「う・・・」
よく町の連中からは彼女の事を『男前だ』『カッコイイ』と表現して女らしくないと言われているのだが、ランドはそんな事を思った事がない。
むしろ健康的な美人である彼女には感じるものが色々あった。
今も丸見えのおへそを直視できずに目を逸らしたのだが、今度は汗で張り付いたシャツのせいで透けて見えるのを発見してしまい体ごとソッポを向いてしまう。
おまけに今日はサラシも巻いていない。
「ランド君、どうした?」
「エリィさん!上、上何か着て!」
耳まで真っ赤になり指摘するランドの態度でエリィもようやく自分の現状に気が付いた。
しかしエリィは動じる事もなくニヤリと悪~い笑顔を浮かべた。
「なーにぃ、気になるの?私に女を感じた?」
ふざけてポーズまで作るエリィだが、見ていないランドには分からない。
「いいから!着替えてくるなりして下さい!商売の話が出来ません!」
「はーい、あはは!あたしを女扱いしてくれるのはランド君くらいねぇ~」
カラカラ笑いながら再度店の奥に引っ込んでいく彼女、ランドが行ったかな~と振り返るとシャツを脱ぎながら引っ込んで行く彼女の生の背中がバッチリと見えて しまって、慌ててまたソッポを向く。
『ああああああああ~~~~~!ヤバイ!見てしまった!』
今年で19歳の道具屋店主は超ウブだった。




