プロローグ
王族をも凌ぐとまで言われ栄華を誇っていた歴史ある貴族。
住居は王家を差し置いて『城』と表現される程の豪華さ堅牢さを持つ立派な建物。
何が起ころうとも揺らぐ事はない、そう思われていた。
そんな歴史ある我が一族が凋落するとは誰が想像できるであろうか・・。
骨董、絵画、武器、防具、あらゆる物が差し押さえられ業者の連中が運び出していく。
最初は『自分の宝が理不尽に奪われていく』と憤っていたのに今は怒りすら沸いて来ない。
妻は使用人の男と金を持ち出して出て行った。
子供たちは『巻き込まれるのは御免』とあっさりと家名を捨てて逃げて行った。
自分に残されたのは脱税の犯罪者の汚名だけであった。
まもなく自分を捕らえる為に兵士たちがこの屋敷へと来るだろう。
その前に逃げなくては・・・・・・。
その時嵌めていた青く大きな宝石の指輪がギラリと光った気がした。
「・・・この指輪・・・・こんな物を買ったから・・」
この時になって愚かにもようやく気が付く事ができた。
何故前の持ち主が二束三文でこんな高級品を自分に譲ったのか。
全てを失った今ようやく分かった。
大体にして全てが差し押さえられて自分の衣類すら高い物は持っていかれているのに、明らかに高級そうなこの指輪だけは誰一人見向きもしないのだから・・。
「持ち主に不幸をもたらす指輪・・・・」
青い宝石がギラギラと輝きを増した。
まるで『やっと分かったか・・・』とあざ笑うかのように。
不定期に更新しますが何卒よろしくお願いします。