ドキドキの学校
次の日、お母さんに起こされて目を覚ました。
「おはよう、紗香ちゃん。」
「…おはよう…。」
眠いながらもとりあえず動こうとする。
あれっ、からだが軽い。
そうだ、昨日からわたしは1年生になったんだっけ。
「ハイ、お着替えね。」
ベッドの横に今日着る服が置いてあった。
今日の服は、ピンク色の花柄のワンピース。
昔、とても気に入っていた服だ。
デパートの子供服売り場で、わがまま言って買ってもらったやつだっけ。
買ってもらったのはよかったけど、結局大きくなったせいですぐに着れなくなったんだよね。
わたしは、そのワンピースに腕を通す。
「着替えたよ。」
そう言うと、お母さんはエプロンのポケットから学校の名札を取り出した。
そして、名札をわたしの左胸のところに付けた。
「ハイ、OK。」
そして、お母さんの一言。
「鷹見小学校1年 いしかわさん。」
「はい!」
「今日も1日が始まりました。学校の勉強、頑張ってきて下さい。」
「鷹見小学校1年 いしかわさやか がんばります♪」
「ハイ、よろしい。」
「えへへ♪」
案の定、お母さんは想像した通りの行動を取ってきた。
でも、なんだろうな。
お母さんに名札を付けてもらった瞬間、とっても気分がよかったな。
名札を付けたあとに「鷹見小学校1年 いしかわさん」って言われると、ちゃんと小学生として認めてくれたんだなって。
朝ごはんを食べたあと、歯磨きに洗顔で身だしなみを整えて、ランドセルを肩にかけていざ学校へ。
「行ってきます♪」
「行ってらっしゃい。」
わたしは、勢いよく玄関を飛び出した。
昨日まで5年生で通っていた学校も、今日は1年生での登校だ。
建物の高さ、周りの人の歩く速度、なにもかもが昨日までと違って見える。
「なんかドキドキしてきた。」
わたしは、変に緊張してきた。
というのも、1年のクラスに行ったらどういう反応をされるのかという不安を感じたからだ。
「もしかして、あなた誰とか言われるのかな?」
そうなったら、わたし登校拒否しそう…。
余計なこと考えたら頭痛くなってきた。
家から歩いて5分で鷹見小学校に到着。
5年生の教室は3階だが、1年生は1階だ。
名札の裏に学年・クラスと本名が書かれた紙が入っていて、確認すると1年2組って書いてある。
本当の1年生だったときと同じクラスだ。
でも、当時のクラスメイトは今は5年生だろうし、わたしが知ってる子はいないだろうなぁ。
2組の教室に到着し、ドアを開けて中に入る。
「おはよう。」
とりあえず、あいさつをしてみた。
うん、誰も知らない子ばかりだ。
「かとう」、「はやし」、「おおくぼ」、「たかしま」と名札で名字は確認できるけど、見たことのない顔ぶれにどう接すればいいのやら。
さすがに名字で呼んだらおかしいだろうし。
もういいや、席につこう。