3人揃っての夕食
しばらくして、お母さんの声が聞こえた。
「紗香ちゃん、ごはんできたよー。」
わたしは目を覚ました。
どうやら、1時間くらい眠ってたみたいだ。
「ハーイ、今いきまーす。」
返事をして、リビングまで行く。
知らないうちに、お父さんも帰ってきていた。
「お帰り、お父さん。」
「ただいま、紗香。」
お父さんの姿も、朝見たときと変化なしだ。
テレビのニュースも、2014年ってなってるし。
わたしだけタイムスリップした感じだろうか。
でも、今日はもう何も考えないようにしよう。
3人揃っての夕食は久々だ。
お父さんは夜遅くまで仕事することが多いので、大体はお母さんと二人きりでの夕食がメインだ。
「お父さんとごはんを食べるの久々だね。」
「そうだな。いつも仕事で遅いからな。」
「ハイ、準備ができたから食べようか。」
「いただきます♪」
食事が始まってからしばらくして、お母さんが話を振り出した。
「今日ね、紗香ちゃんったら家で泣いたんだよね。
エーンエーンとね。」
「そうなのか、紗香?」
「うん、ちょっとね。」
「どうして泣いたんだ?」
「頭、壁に当たったから…。」
とっさにわたしは嘘をついた。
本当は、この姿になったときのショックが大きかっただけど、今の状況で言えるわけがない。
「紗香は弱虫だな。壁にぶつけたくらいで。」
「あまりにもメソメソ泣くもんだから、お母さんがあやしたんだよね。」
「そうなのか。」
「これ以上泣くなら、胸に付けてる学校の名札を取り上げて幼稚園に戻ろうかって言ったら、この子ムキになっちゃってね。」
「ふーん。」
「それじゃ泣くのをやめなさいって言ったら、しぶしぶ泣き止んだってね。」
「おもしろいな紗香は。」
「お父さんまでバカにするなんて、もう!!」
「ハイハイ、ゴメンゴメン。」
「もう…。」
お父さんもお母さんもいじわるだ。
ごはんも食べ終わり、このあとはお風呂だ。
「紗香。風呂入るか?」
お父さんからお誘いがきた。
5年生のわたしだったら丁重に断るのだが、今は1年生。
「うん、入る!」
お父さんとお風呂なんて久々だなあ。
4年生のときに、恥ずかしいから1人で入るって言ってからだから、かれこれ1年ぶりくらいかな。
「それじゃ、あとから入ってきなさい。先にお父さんは風呂場で準備しておくから。」
「ハーイ。」
そう言って、お父さんは風呂場へ行った。