元に戻った!?
しばらくして、わたしは目を覚ました。
「元に戻ったのかな?」
そう思い、胸元の名札を確認してみた。
「あっ、元に戻ったみたいだ。」
名字が「いしかわ」から「石川」と漢字表記に変わっていたのを確認して、わたしは一安心した。
「とりあえず元には戻ったけど、元に戻る前にお別れのあいさつをしたかったな…。」
元に戻れたうれしさがある反面、突然の別れで少し悲しい気持ちが込み上げてきた。
「お母さん、お父さん、そしてちえちゃん。ありがとう…。」
そして、悲しみからか目から涙がこぼれてきた。
「1週間だけだったけど、いろいろ楽しませてくれてありがとう…。」
しばらく、わたしは悲しみに浸るのだった。
「紗香ちゃん。ちょっといい?」
突然、お母さんの呼ぶ声が聞こえた。
「はーい。今行くから。」
わたしは、お母さんのもとへ向かった。
「お母さん、どうしたの?」
「今から、今度行く中学校の制服の採寸に行こうと思ったけど、時間空いてる?」
中学校? 制服? お母さんは何を言ってるのだろう。
「なんで制服の採寸に行くのさ?」
「早めに制服を予約しておくと安くなるらしいし、あまりギリギリだと間に合うかわからないからね。」
いや、わたしはそんなことを聞いてるんじゃない。
どうして5年生のわたしが、中学校の制服の採寸なんかする必要あるのかを知りたいのだ。
「別に今じゃなくてもよくないかな?」
とりあえず、やんわりと断ってみた。
「でも、6年生になってから塾に行き始めたせいで、時間が空いてるときなんてないでしょう? だったら、今日のほうがいいと思うんだけど。」
えっ、6年生!?
お母さんのその言葉で、わたしは胸元の名札をもう一度確認してみた。
すると、名札のフェルトの色が5年生の紺色ではなく6年生を表す紫色だったのだ。
わたしは元に戻ったのではなく、6年生になっていたのだった。
「どうするの? 今度にする?」
再度お母さんにどうするか聞かれた。
「…それなら、今から行こうか…。」
まったく状況が飲み込めていないが、ここは素直にお母さんに従おうと思った。
「それじゃ、行く準備しようか。」
「わたしは何か必要?」
「そのままで大丈夫だよ。」
こうして、わたしは今から中学校の制服の採寸に行くのだった。




