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ちえちゃんの家

「あーあ、明日でわたしは学級委員が終わっちゃうのか。このバッジともお別れか。」

ちえちゃんは、自分の名札を見ながらわたしに聞こえるくらいの声で独り言を言い出した。

「今度は、誰がやるのかな?」

「さやか、あなたじゃないの?」

「なんで?」

「だって、今日のテストで100点取ったじゃない。先生は、今日のテストで100点取った人を次の学級委員にすすめたいって言ってたし。」

確かに、テストのときに先生は言ってたっけ。

でも、それで学級委員に決めるとは到底思えないのだが。

「それに、わたしはあなたならできそうかなって。」

「えっ!?」

「100点取るくらいの優等生だもん。できそうな気がするもん。」

明確な理由になってないけど、とりあえずちえちゃんはわたしを褒めてる感じかな。

「なんか、ちえちゃんにほめられるなんて、ビックリだなぁ。」

「ほめるのは今回だけだからね。貴重な体験だよ!」

「ハイハイ。」

相変わらず、言葉の伝え方が不器用なんだから。

でも、それが彼女らしいかな。


「ところで、さやかはこのあと暇?」

「暇だけど、なんで?」

「昼ごはん食べたら、うちへ来ない?」

「いいの? ちえちゃんの家に行って。」

「いいよ。わたしが誘うのは結構珍しいことだけどね。」

「それじゃ、食べ終わったらすぐ行くね♪」

「わかったわ。着いたらピンポンって鳴らせばいいから。」

「うん。」

「それじゃ、また後程。」

こうして、わたしはちえちゃんと遊ぶことになった。


家に着き、お母さんに昼御飯の催促をした。

「ごはんはなーに?」

「カレーライスだよ。」

「やったー♪」

「今から用意するから待っててね。」

「はーい。」

お母さんは、カレーライスを作り始めた。

そして、10分後にカレーライスができた。

わたしは、おおはしゃぎして大好物のカレーライスにありついた。

「そうだ、お母さん。」

「どうしたの?」

「このあと、友達の家に遊びに行ってくるね。」

「行ってらっしゃい。なるべく遅くならないようにね。

「はーい。」

そして、ご飯を食べ終わり急いでちえちゃんの家に向かった。


家から歩いて10分ほどでちえちゃんの家に到着し、インターホンを鳴らした。

「はい。」

「鷹見小学校のいしかわです。ちえちゃんいますか?」

「ちょっと待っててね。」

待つこと数分、玄関のドアが開いた。

「さやか、お待たせ。」

「おじゃまします♪」

「ここがわたしの部屋だよ。」

「うわー、広いなー。」

ちえちゃんの部屋に入った途端、わたしの部屋よりも大きいことに驚いた。

勉強机、ベッドが置いてあっても、友達をたくさん呼んでも入りきりそうなくらい広かった。

「さて、なにして遊ぶ?」

「なんでもいいわよ。」

「んじゃ、お話ししよ♪」

わたしは、なんとなくちえちゃんと会話をしたかった。

「ところでさ、なんでちえちゃんは学級委員をやったの?」

「お姉ちゃんに憧れてね。」

「へえー。お姉ちゃんがいたんだ。何年生の?」

「5年生。今回、児童会長やってるんだ。」

ちえちゃんの言葉を聞いて、わたしは一瞬考えた。

もしかして、わたしのクラスの大島加奈子おおしまかなこちゃんのことかな。

ちょうど、5年生の同じクラスにいるのを思い出した。

まさか、その子の妹だったりするのかな。

「それじゃ、お姉ちゃんみたいにみんなの役に立ちたいから学級委員になったわけ?」

「ううん。実際は、お姉ちゃんみたいに学校の名札に委員バッジを付けてみたかったからなの。」

「…えっ…、そんな理由…?」

「そうだよ。このバッジのおかげで、他の子より目立つじゃない。」

わたしはポカーンとした。

もっとちゃんとした理由かと思えば、ただそれだけで学級委員をやったなんて。

「お姉ちゃんが児童会長になったとき、名札に会長バッジを付けてからいろいろな子から声を掛けられるようになったっていうし、休みの日でもたまに名札を付けて学校に行っていろいろ活動してるっていうし。」

「は、はあ…。」

「だから、わたしも名札にバッジを付けたいなって思ったの。そうすれば、お姉ちゃんみたいに目立つようになるかもって。」

「それで、学級委員になって目立つようになった?」

「もちろん。お姉ちゃんほどではないけど、いろいろな子から声を掛けられるようになってよかったと思うもん。」

「ふーん。」


「ただいまー。」

ちえちゃんのお姉ちゃんが帰ってきたらしい。

「お姉ちゃんが帰ってきたみたい。ちょっと呼んでくるね。」

ちえちゃんは、お姉ちゃんを呼びに部屋から出ていった。

「何よ、ちえったら。」

「友達が来てて、さっきまでお姉ちゃんの話をしてたんだ。だから、わたしの部屋に来てよ。」

「わかったから、荷物だけ置いたらあんたの部屋に行くから。」

「うん、わかった。」

そして、ちえちゃんが戻ってきた。

「もうすぐお姉ちゃんが来るからね。」

「なんで誘ったの?」

「いいじゃないの。」

わたしには、なんでお姉ちゃんを誘ったのかがわからなった。


しばらくして、ちえちゃんのお姉ちゃんが入ってきた。

「やっと来たね、お姉ちゃん。」

「お邪魔してます。」

入ってきたお姉ちゃんの姿を見たら、やはり同じクラスの大島加奈子ちゃんだった。

だが、わたしは今1年生になってるため、加奈子ちゃんはわたしを知らないことになっているみたいだ。

「いらっしゃい。ちえ、同じクラスの子?」

「うん、そうだよ。」

「ふーん。で、話ってなに?」

「そうそう、さっきねお姉ちゃんの児童会長の話をしてたから、実際にお姉ちゃんの名札の会長バッジを友達に見てもらおうと思ってね。」

「えっ、この名札のために呼んだの?」

「そうだよ。」

「…それだけって…。」

「ほら、さやかったらお姉ちゃんの名札を見てごらんなさいよ。」

わたしは、渋々加奈子ちゃんの名札を見た。

鷹見小の校章と「大島」と刻まれた名札の板の上のところに白色のバッジが付いていて、そのバッジには「会長」って書いてあった。

「へえ、会長ってすごいなあ。」

だが、普段見慣れているはずなのに、何故か名札に見とれてしまった。

「この名札、1回付けてみたいな。」

思わずわたしは口に出してしまった。

「それじゃ、ちょっといいかな。」

すると、加奈子ちゃんはわたしの胸の名札を外しはじめた。

「今日だけ特別に会長の座をあなたに譲ります。」

わたしの胸の名札を外し終え、次に加奈子ちゃんは自分の胸の紺色の名札を外し、それをわたしの胸のところに取りつけた。

「はい、いいよ。名前が違うのはご容赦ね。」

わたしの胸には、「大島」と書かれたか会長バッジ付きの紺色の名札が付いていた。

「もしかしたら、将来ここに「石川」って書かれて、この通りの名札を付けるようになるかもね。」

加奈子ちゃんにそう言われた途端、嬉しさのあまり心臓がばくばく言い始めた。

「将来、わたしが会長…?」

頭のなかで、将来像を想像するわたしだった。

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