輪廻転生
『ゲコッ。』
広い野原が広がる田舎の小川は、シンと静まり返っていた。
時間は、まだ今さっき17時の鐘が鳴ったばかりの17時5分ほど。
この時間なら本来、子供達のはしゃぐ声が耳障りなほどに聞こえてくるものだが、何故だか今日は子供の声は愚か、虫の声も鳥の囀りも聞こえない。
そのため、蛙の、俺の声が広い大地に木霊する。
俺は蛙だ、今はな。
俺の声が消えると、大地は怖いほどに静まり返る。
悲しい、虚しい感情が込み上げてくる。
なんたって全部俺のせいなんだから。
『......マ.........す...ぉ...。』
(ん?誰かが話しかけてる?)
微かな声とも乏しい音が振動で伝わってくる。
その音が人の声だと分かったのは、それを待ち望んでいたからだろう。
暖かな、優しい日だまりに包まれたような気分になる。
心から安心できていて、とても心地よかった。
『...ママ......よぉ...。』
(ママ?.........俺に話しかけてる?)
その声はママと名乗る者が発するものであった。
つまり人間が自分に話しかけている。
そう分かった途端に現実に引き戻されたように飛び起きた...つもりだったのだが、身体が重くて精々目を見開くことしかできなかった。
そして目にした光景にまたもや驚かされた。
人間...
人間が笑っている。自分に笑いかけている。
真っ白な世界に白い人間が3人、青い人間が1人、黒い長い毛の人間が目の前に。
パニックになった。
気付けば大粒の涙が零れていた。
涙を拭こうと手を動かすが、そのあまりの小ささに震えた。よく肉のついた小さな手が視界に写る。
えっ...........................っ!?
『ママですよぉ。』
人間が発していた言葉がようやく分かった。
そして、その意味、その事実、この現状を重く受け止める事となった。
俺は人間に生まれ変わった。
ああ、輪廻というものはこんなにも恐ろしいものか...。
自分が犯した過ちに後悔などしていない。
だが、何故か、何故だか涙が止まらなかった。




