好きなんだから…それでいいじゃないっ!
「好きだ!付き合ってくれ!」
俺は今告白されている。
ただし…男から!!
好きなんだから…それでいいじゃないっ!
作:大柳 朱
俺は佐橋凜吾。ごく普通の男である。
いや、普通では無かった。俺は…女装癖のある変態である。
今日も女装で喫茶店に来ているのだが、見知らぬ男に告白をされている。
いや、見知らぬ男としたい。
相手は同級生で親友の東野千太である。
「りんご!答えは…」
「あ、あのね?私は女装であって…つか俺は男だってわかってるだろうがぁあああ!!」
あぁ!俺を見ないで!客たちが俺をみてる…店員さんまで…。
「それでもだ!」
「いや…正気に戻れって」
「正気だ」
マジ!?いや、ちょっと嬉しいって♪ってなんだ!
あぁもぉ…訳がわかんなくなってきた。
とりあえず店を出ることにした。
「おいおい…」
公園のベンチで仁王立ちする俺。
「千ちゃん!わかってるの?私はお・と・こ!これは単なる女装であって千ちゃんのことなんか好きじゃないんだからね!」
“ポカポカ”と軽く俺は殴る。
「好きじゃ…ないんだから…ね」
俺は女装の変態なんだよ。お前まで変態にはさせられないよ。
「あのさ…今日は帰るわ」
「え!?」
「もう19時だぜ?」
「…わかった」
しぶしぶ俺は了承した。
「お帰り~」
母さんに“ただいま”と返し夕飯も食べずにベッドにダイブする。
そして、今日一日を振り返る。
“ぽたぽた”といつのまにか涙が流れ出た。
いつものように遊んでいたはずなのに…千太が突然告白してきた。
いつも一緒で…笑いあって…相談にもいつものってくれて…
そういえば…俺はいつから女装するようになったんだっけ?
もう覚えてないや…
でも…本当は女の子になって千太と一緒にいたかったんだよ…
プルルル!
ケータイの音だ。ディスプレイには千太と書かれている。
「…なに?」
「おぅ…今日はすまなかったな」
どうして謝るんだよ…。
「お前も男からの告白なんて嫌だったろ?」
違う!
「またさ、友だちとしてくれよ」
「あ、あの…」
次が言えない…。
「おい!返事してく」
“プツン”
切ってしまった…。
本当は好きだって言えればいいのに…。
俺は男の子だから…女の子にはなれないから…。
気がつくと朝だった。
俺は女装もとかずに寝ていた。
とりあずシャワーを浴びよう。
ウィッグをはずして…ってはずせない!?ナニコレ!?え!?
慌ててパットもはずそうと試みるがはずれない。
「やわらかい…」
ってそうじゃないよ!!
まさか!!
「ない!?」
やはり無かった。男の象徴が。
あれ?女の子になれたの!?
ドタドタドタ!!
「かかかか母さん!」
「あらりんごちゃん。どうしたの?」
「わわ私…いや俺、女の子になってる!」
「あら、そんなこと。お母さん一服盛ってみました♪」
はぃいいいい!?
「あら~嫌だった?りんごちゃんは女の子になりたかったのよね?」
「うぅ…」
「母さんね~知り合いから性転換薬をもらったのよ♪」
空になったビンをちらつかせる母さん。
「好きなんでしょ?千太くんが」
俺は何も言い返せなかった。
「あぁもぉ!!そぉだよ!!私は千ちゃんが好きよ!悪い?好きで好きで…女装までしてた変態なのよ!」
やけくそになった俺…私は自分の気持ちを露わにしてしまった。
「昨日…告白されたの…でも男なのに男の子を好きなるなんて罪じゃない…」
気がつくと私は泣いていた。
母さんはそんな私を抱きしめた。
「ごめんね…辛かったよね…ごめんね…ごめんね…」
「かあ…さん?」
私を抱きしめながら、母さんも泣いていた。
「でもね…もう安心していいのよ…あなたは生まれ変わったの。りんごちゃんは女の子。千太くんを好きになっていいのよ」
母さんは私の頭をそっと撫でた。
「かあ…さぁああん!」
私は声を張り上げ泣いた。
気が付けば泣き止んでいた。
空を見ればもう夕方だった。
私は携帯を取り出し千ちゃんに電話をかける。
「りんご、どうした?」
「…千ちゃん。今から公園に来て」
「何かあったのか?」
「ちょっと…ね。絶対…来てね」
「お、おぅ…」
私は電話を切り、公園に向かった。
りんごからの電話を受けて俺は公園へとやってきた。
ブランコに座る少女を見つけた。りんごだ。
俺はずっとりんごが好きだった。
昔から凜吾は可愛。
言わずとも凜吾は女装して『りんご』として振舞ってくれた。
耐え切れなくて…だから昨日告白した。
結果は最悪。振られたよ。そりゃ当然だ。
俺たち男同士だし。
ブランコに座るりんごに近づく。
りんごの目の前にたった瞬間…りんごが俺の首に腕を回しキスをしてきた。
俺はそのまま受け入れ。数秒が経つ。
偽物の胸が当たる。
けど、今日はなんだか違う。
この感触…本物…本物!?
「りんご…お前…」
「千ちゃん…私…女の子になったみたい」
そういってもう一度キスしてきた。拒否する理由などありはしない。
俺たちは手をつないで歩き出した。
「私を幸せにしないとダメなんだからね!」
「はいはい。お姫様」
俺たちは…これからだ。
終わり
●あとがき●
こんにちは大柳朱です。
最近頑張っております。前回は短かったので今回は長く書く事を意識してかいてみました。
(まぁそんなに長くないですが…)
やっぱり恋はいいですね。私も恋がしたいな(笑)
書いていて二人が羨ましくなってしまいました。
こんな恋があってもいいですよね?
というわけで、今回も読んでいただきあがとうございました。
私が女になって数日が過ぎた。
最初はいじめとかにならないか心配だったがあっさり受け入れられた。
どうやらクラス内では“凜吾くんって女装したら似合うよね”やら“りんごたんハァハァ”などといった会話が飛び交っていたそうだ。
全然知らなかった…。
初めて女の姿で教室に入った時はクラス中が大変なことになった。
“りんごたんハァハァ”や“妹にしたいわ♪”とあちらこちらから聞こえた。
そんな中、千ちゃんが私を俺の嫁宣言をした。
「りんごは…俺の…嫁だ!!」
当然のことながらクラス中が騒ぎ出す。
「ふざけんな!」
「私の妹返して!」
「りんごたんハァハァ」
担任が来てHRが始まろうというのにおさまらない。仕方なく私は…
「えっと…なんだか薬の作用で女の子になっちゃって…でも前から女装はしてて…えとえと…
あぁもぉ!千ちゃんが好きなんだから…それでいいじゃないっ!」
おわり