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エピローグ

最終話になります。

 移転暦二〇年、先進諸国を巻き込んだ一応の戦乱は終結後五年を経て世界は安定化するかと思われたが、結局のところ、史実の第二次世界大戦後と同じような状況に至りつつあった。特にアフリカと南米が内戦あるいは独立戦争が多く発生していた。中でも、アフリカの状況は史実以上にひどいものだといえただろう。


 これら地域には皇国は領土を有してはいなかったため、介入することはなかった。軍事介入したほうが今後のためにもいいのであろうが、他の先進国がそれを許さなかったのである。もっとも、この世界でも、ブラジルを含めた南米のいくつかの地域に日系移民が多かったことから、程度の差はあれど介入は行われたが、大規模なものではなかった。


 移転暦一七年に本格的に稼動し始めた国際連合において、皇国の立場は常任理事国として決して軽いものではなかったが、英米に主導権を譲った皇国はフランスと同じく、地域大国へと移っていたといえた。南北戦争終結後、にわかに世界に目を向け始めた米国のブレーキ役ともいうべき立場になっていた。そして、中央アジアや中東に進出を始めたソ連、そんなソ連に対抗するために軍備を増強する東ロシア国は皇国の頭痛の種となりつつあった。


 皇国は基本的には太平洋と東アジア地域の国際安定化のために、軍を派遣するが、それ以外の地域には要請がなければ軍を派遣することはなかった。が、例外として、中欧や東欧には軍を派遣することとなっていた。これは大戦前の皇国の思惑通り、ソ連に対するものであり、英米仏には強硬な姿勢を示していたといえた。また、すでに発生しているベトナム内戦には介入しない意向を示し、東アジアにその存在を示したい米国が史実と同じように介入の意向を示していた。また、中華中央での紛争にも米国は介入の姿勢を見せていたが、皇国はあえて反発は示していなかった。


 東アジアでの中華中央問題、東南アジアやアフリカの民族紛争、南米の内戦多発が世界の暗部となりつつあった。しかし、史実では冷戦崩壊後に問題となる中央アジアはソ連が手綱をがっちりと締めているいま、問題の発生はまだ先のことであろうと思われていた。そんな中で救いといえたのは、満州国の存在、東ロシア国の存在もあって、朝鮮半島は比較的平穏であったことであろう。


 少なくとも、半島は皇国の友好国である満州国や東ロシア国、東エルサレム国が存在することで、史実のような朝鮮戦争の発生は起こらないだろうといわれていた。もしも、ソ連と国境を接していたらまた別であっただろうが、権力争いもしくは内戦ですむだろうと考えられていた。


 そんな中、もっとも安定していたのが太平洋の島々であり、東欧であったかもしない。少なくとも、皇国が関与した太平洋地域はこの年、無事に独立を果たしていた。教育水準も高く、史実とは異なる国家として存在していたといえる。中でも、東西分割されていた史実とは異なり、サモア国は貿易立国あるいは観光でそれなりの発展をみせていたといえる。また、ツバルやヴァヌアツといった周辺国に引きずられ、フィジーやフレンチボリネシアンといった地域も史実とは異なる発展をみせていたといえる。


 そうして、国際的にも皇国連邦という言葉が使われることとなった。少なくとも、戦前の欧州先進国と同等の水準にあることから、史実のハワイ以上に経済が発展していた。未だハワイが開放されていない以上、皇国からの観光客はこれら地域に流れることとなった。もっとも、日本語が基本言語となりつつあり、それら地域の固有の言語が失われつつあることで、国際的な問題となっていたことも事実であった。


 これら地域は基本的に漁業を基本産業としていたが、捕鯨が続けられていること、漁業技術(保存のための冷凍施設完備も含めて)の発達もあって十分な外貨を得ていたといえる。むろん、皇国は海洋資源の保護にも力を入れており、十分な魚果を得られていた。もちろん、漁業を補完する他の産業も整備されていた。


 東欧においては、世界大戦後の皇国の関与(今でも西欧からは賛否両論であるが)したことにより、形の上では多民族国家ではなく、単一民族国家として成立している。一時問題となった混血児については、各国ともに選択権を与え、それによって帰化を認めるという、皇国的な考えが定着、大きな問題は発生していない。


 経済的にも皇国の影響が強く、皇国企業の進出が多く、西欧への輸出あるいは進出の基地となっていたといえる。少なくとも、直接的に西欧への進出が避けられ、東欧というワンクッションをおくことで製品の進出が可能であったといえた。問題がまったくないとは言えず、常にソ連の脅威は存在するが、それも、技術的に優れた皇国製の装備を配備すること、そして、バルカン条約機構が結成されたことでそれを補っていたといえた。少なくとも史実の東欧とは異なり、安定した地域であり、大きい問題は発生していない。


 皇国には世界の警察たらんとする意思はなかった。史実の世界の米軍と同じく、国家経済に対する悪影響を考慮したため、と考えられる。しかし、皇国内、特に旧日本国内からは世界に関与することで、史実での悲劇を防ぐべきではないか、という意見が一部の学者から出ているのも事実であった。積極的に関与することにより、世界各地で発生する悲劇を防ぐことができるというのであるが、政府はそれを否定していた。その理由は軍事予算がGDP比率で三パーセントから四パーセントに増えること、経済的に負担が大きいことをあげていた。


 結局のところ、経済のためには多くの民間人が世界に出てゆくが、軍人を世界に出したくない、というのがその根底にあったと思われる。この世界では、皇国軍は世界から感謝こそされても、非難されることは少なかったが、移転という方法でこの世界に現れた旧日本国は、史実の世界での体験を引きずっていたということも考えられた。もっとも、若い世代からはそのような意識はなく、それがゆえに、軍に対する見方が変わってきてもいたといえる。それが明確に現れているのが、本来は志願制であったが、現状では兵役制が導入されていることあるといえた。


 もっとも、移転前のアメリカの兵役制と異なり、皇国の企業も含めた体制が整えられていたといえる。兵役未経験者と兵役経験者との間には、給料など待遇面で明確な格差があったからである。兵役経験者の場合、未経験者のそれに比べて一割は高く、昇進も早いという。これは兵役教育にある。つまるところ、軍では階級がすべてであるため、各企業がその教育を受けたものを優遇したということであろう。


 平時においては、兵役期間中、各種資格を取得できるようになっており、それが原因のひとつでもあった。ただ、資格を取るだけではなく、実務経験も積めるようになっていたからである。これは移転前の自衛隊においても同様であり、それが引きつかれているといえた。結局のところ、資格社会、というのはこの世界でも続くこととなっていたのである。しかし、旧日本国以外の各州では初めてであり、それが受け入れられた、そういうことになるだろう。


 そういうわけで、世界的にも皇国は史実のフランスと似た地域大国、という地位にあったといえた。アメリカ追従ではなく、反対意見は躊躇なくいえる、そういう国家であった。そのよい例がベトナムであり、南米でのアメリカに対する行動であった。東南アジア以西では東欧と中欧に影響力を持つが、アメリカとはまた違った対応をとっていた。


 これがこの世界で選んだ日本皇国のあるべき姿であった。ここにきて、旧日本国の影響が強く出たともいえる。それが良かったかどうかという結果は二〇年あるいは半世紀を経なければ答えは出ないのかもしれない。


あとがきにかえて


 ここまでお付き合いいただき感謝いたします。

 最後はしりきれとんぼのようになりました。


 実際、今の日本が移転したとして、持てる武力で世界制覇などありえませんし、国民の事なかれ主義、政府の対応を見ればまずありえないことでしょう。それで、日本の考え方を少し変えるため、戦後間もない平行世界から日本やそれに準じた国、聨合艦隊を出現させました。これで多少なりとも対外対応は変わるかと思います。


 結局、よきにつけあしきにつけ、現代日本を引きずるような結果となりました。現代日本が中心となっている以上、たぶん、そうなるであろうとの考えからです。


 根本的に見て、現代日本周辺で発生している問題の文中での解決の方法を模索した結果、大陸および半島はこのようになりました。半島はともかく、歴史的にみて、蒋介石率いる中華民国とは共存共栄は不可能だと思いますし、共産中国ではなおさらでしょう。さらに、欧米に文句を付けられないようにするにはどうするか、という問題もありました。


 平時の軍備については実のところ、少し多いかな、と思います。しかし、国連常任理事国、東アジアや東欧、中欧に影響力を残した結果、これら地域の安全保障上、部隊の駐留は必要になるでしょう。とすれば、国土や人口比率からこれくらいでは?と考えました。


 現代日本が仮に国連常任理事国に昇格した場合、現在の自衛隊戦力では対応できないと思います。少なくとも八万人から一〇万人程度の増強は必要ではないでしょうか。海外派兵だけではなく、周辺問題も考えれば、そうなると思われます。さらに、考えたくないことですが、核武装も必要になるかもしれません。赤い半島や大陸に好き勝手にさせないためにも・・・・。


 いずれにしても、あくまでも架空の物語です。現世界の日本では民主党政府にはもっと適切な対応を望みたいものです。第二次世界大戦終結後の一〇年ほどの出来事を確認すれば、解決の方法はあると思われるのですが、期待したいものです。


 駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。また、次回作でお会いできるかも・・・・・・しれません。


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