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北大西洋艦隊戦

艦隊決戦 もどきを書いてみました。難しいですね。まあ、戦艦を沈めるための章なんですが、かなり無理があります。あまり突っ込まないでください。後十話ほどで終わる予定です。戦後を細かく書いていたらだらだらと続きそうなので切り上げるつもりです。外伝も書きますが、かなり間が開きそうです。といいながら他の話しを書いていたりします。誰か書いてくれないかな、などと思うこのごろです。お楽しみください。


 『大和』が敵一番艦を夾叉したころ、その周囲に敵弾が降り注いでいた。その数一八発。同航戦とはいえ、まったく並行しているわけではなかったからである。約一○○〇mほど敵艦隊が前に出ていた。そのため、敵一番艦と二番艦は『大和』を狙って砲撃していたのである。しかし、『大和』に続いて三番艦である『陸奥』が敵三番艦を夾叉、『金剛』が敵四番艦を夾叉したことで状況が変わることとなった。


 打撃部隊で最初に命中弾を出したのは『金剛』であった。『金剛』の放った八発のうち、三発が『ウィスコンシン』の第二砲塔基部、艦橋基部、後部甲板に命中したのである。本来、主要部は対四〇.六cm防御で固めている『ウィスコンシン』に『金剛』の三五.六cm砲弾は弾かれるはずであった。しかし、そうはならなかった。後部甲板に命中したそれは、水上機格納庫を突き抜けて最下部で信管が作動して爆発した。艦低に僅かな亀裂を生じさせたのである。艦橋基部に命中したそれは、周辺の機銃と高角砲を破壊している。第二砲塔基部に命中したそれは、その場で爆発、僅かだが砲塔に衝撃を与えた。


 なぜ『金剛』に搭載の三五.六cm砲がこれほど威力があるのか、その秘密は砲身にあった。砲身の寿命が尽きていたため、新しい砲身を搭載していたのである。本来であれば、四五口径で一六.○ニmであったが、新しい砲身は五五口径で一九.五八mもあったのである。これは「長門」型搭載の四五口径で一八.二七mを上回る。さらに、装薬や砲弾にも変更が加えられ、その威力は旧来の砲に比べて格段に強化されていたのである。


 『金剛』に次いで命中弾を出したのは『大和』であった。『大和』の放った九発のうち、二発が『アイオワ』の煙突基部、第三砲塔の中央の砲身基部に命中したのである。対四〇.六cm防御が成されてはいたが、四五.七cm砲弾はやすやすとそれを貫いた。煙突基部に命中したそれは、最深部である機関室で信管を作動させて爆発、重油焚×八基のうち、六基を破壊した。第三砲塔の中央の砲身基部に命中したそれは、給弾口で爆発し、一瞬で熱風と炎が弾薬庫に達した。『アイオワ』は第三砲塔を一〇〇mほど吹き上げた後、大爆発を起こしたのである。


 『アイオワ』が大爆発を起こしたころ、『陸奥』が放った八発のうち、四発もの砲弾を『ミズーリ』に命中させていた。第一砲塔直前の甲板、第二砲塔基部、煙突基部、後部甲板へと満遍なく命中したのである。対四〇.六cm防御が成されていない第一砲塔直前の甲板を突き破ったそれは、艦底部で爆発、巨大な亀裂を生じさせた。第二砲塔基部に命中したそれは、その場で爆発し、砲塔をターレットから外した。煙突基部に命中したそれは、『アイオワ』と同じように機関室で爆発し、重油焚×八基のうち、四基を破壊した。後部甲板に命中したそれは、『ウィスコンシン』のそれより遥かに大きい亀裂を生じさせた。


 『陸奥』が『ミズーリ』に命中弾を出す少し前、『ニュージャージー』を狙っていた『長門』は二発の命中弾を出していた。直前の航空攻撃において損傷していた彼女は本来ならこの戦いから離れていて良かったのだが、宇垣中将は参加させていた。『長門』の放った砲弾のうちの一発は、艦橋下の水線部に命中したが弾かれていた。もう一発は煙突に命中し、破壊していた。しかし、『ニュージャージー』にもっとも被害を与えたのは三発目、至近弾となったそれは、魚雷のように水中を進み、四つのスクリューうち、左舷側二つを破壊したことにあった。


 その直後、『陸奥』が『ミズーリ』に命中弾を出す直前、『ミズーリ』の放った砲弾のうち、三発が『長門』に命中した。一発は第一砲塔天蓋に命中したが、かろうじて弾き返した。二発目が後楼のあった位置に命中、対四〇.六cm防御を突き破ってそこで爆発した。三発目は後部甲板の外付けVLSに命中、そこを破壊して一層下の甲板で爆発、炎と爆炎を吹き上げた。


 『金剛』から命中弾を受けた『ウィスコンシン』であったが、彼女の標的は『長門』から『陸奥』に変更されており、三斉射ほど前に夾叉していたが、ついに命中弾を出すこととなった。彼女の放った九発の砲弾のうち、二発が命中したのである。一発は第二砲塔頂部、もう一発は後部甲板の外付けVLSに命中した。VLSに命中したそれは、底を破壊してさらに甲板で爆発、炎を吹き上げた。対四〇.六cm防御が成された砲塔は弾き返すかと思われたが、砲弾は貫通して弾薬庫で爆発、『陸奥』は第二砲塔を二〇〇mも吹き上げた。


 VLSはともかく、なぜ第二砲塔がやすやすと貫通されたのか、それは直前の航空攻撃にあった。『陸奥』は第二砲塔に対艦誘導弾を受けており、ほんの僅かな窪みが発生していたのである。『ウィスコンシン』の砲弾は偶然にもその窪みにほぼ垂直に命中し、応力が低下していた砲塔を貫通したものと思われた。そして、誘導弾はともかくとして、大口径砲の砲弾に対する脆弱性を露呈したのがVLSだといえた。もっとも、この世界でも、航空主兵、誘導弾主兵となっていくことが確実であるため、改造されることはなかった。


 『陸奥』に命中弾を出した『ウィスコンシン』であったが、『金剛』から三度命中弾を受けていた。そして四度目の命中弾が彼女を襲うこととなった。一発は第二砲塔、一発は艦橋基部、最後の一発は後部甲板であった。後部甲板に命中したそれは、最初の命中弾と同じく、艦低部で爆発し、生じていた亀裂を大きくした。第二砲塔に命中したそれは、わずかばかりめり込んで爆発、砲塔内を焼き尽くしてさらに下へ、弾薬庫へと広げていった。艦橋基部のそれは亀裂を発生させ、爆風を吹き込むこととなった。


 打撃部隊最後尾の『霧島』は『インディアナ』を袋叩きにしていた。当初は『マサチューセッツ』を標的としていたのであるが、何度目かの斉射で至近弾を出して以後、『マサチューセッツ』がいつの間にか脱落していたのである。実はその至近弾で、推進軸が曲がり、艦隊速度を維持できなくなっていたのである。そのための脱落であった。『インディアナ』は『霧島』の砲撃を受け、艦上構造物のほとんどが何らかの損害を受けており、その中にはレーダーアンテナも含まれていた。ために、統制射撃が不可能となり、命中率は極端に落ちていた。主要防御区画は破壊されておらず、まだ航行には支障がなかったため、艦列に加わっているという状況であった。


 前を行く『榛名』は『霧島』とは対照的に、『ケンタッキー』からの命中弾を受け、艦上構造物の多くが破壊されており、第三砲塔は沈黙している状態であった。『ニュージャージー』がスクリューを破壊されたころ、『ケンタッキー』の放った砲弾のうち、一発を第三砲塔の右側砲身基部に受けた。それは砲塔内で爆発、揚弾機に載っていた砲弾を誘爆させ、その衝撃は弾薬庫まで達し、砲塔が一〇〇mほど吹き上げられた。


 『ケンタッキー』の砲弾が命中する直前に『榛名』が放った六発の砲弾のうち、二発が相次いで『ケンタッキー』の艦橋中央部に命中、電路を破壊するとともに、戦闘艦橋を破壊し、艦長以下の主要な乗員を殺傷した。『榛名』は自らの存在と引き換えに、その戦闘力のすべてを奪うことに成功していた。


 『比叡』はこの打撃部隊の中で、もっとも数奇な運命にあった戦艦であった。ワシントン軍縮条約の期間中は、装甲を一部剥ぎ取られて練習戦艦へと類別され、条約明けには再び戦艦として復帰している。『イリノイ』と砲撃戦を交わしていた『比叡』であったが、命中弾を出したのは一番最後であった。夾叉は早い段階で出していたが、命中弾がなかなか出なかったのである。『比叡』の放った命中弾の多くは主要区画を貫くことはなかったが、小さな損傷は数多く与えていた。対して『イリノイ』の命中弾は数えるほどであったが、最後の命中弾が彼女の運命を決めることとなった。それは煙突基部へのものであり、対三五.六cm防御しかなされていなかった彼女の主要区画で爆発し、機関を破壊しただけではなく、弾薬庫までその影響がおよんだのである。


 『ニュージャージー』が打撃部隊の隊列に突っ込んだことで、双方の隊列が乱れ、砲撃戦は停止することとなった。皇国側損害は、『陸奥』『比叡』『榛名』が爆沈、『長門』が沈没、『金剛』は中破、『大和』『霧島』が小破というものであった。対する米連合側は『アイオワ』『ウィスコンシン』が爆沈、『ミズーリ』が沈没、『ニュージャージー』『インディアナ』『ケンタッキー』『イリノイ』が大破、『マサチューセッツ』が中破、駆逐艦二隻沈没、六隻が大破というものであった。


 この砲戦において、米連合側の駆逐艦が突撃し、雷撃を行わなかった、否、行い得なかったのは、二隻の巡洋艦が対艦誘導弾で彼女たちを攻撃したことにある。少なくとも、皇国の誘導弾の性能は米連合国のそれを上回っており、僅か二隻でその役目、主力の護衛という任務、を十分に果たしていたといえる。二隻の巡洋艦を伴ったこの点だけは宇垣中将の好判断といえたかもしれない。


 こうして、移転後最初で最後の、この世界でも最後の戦艦による砲撃戦が終わったのである。錬度と技術格差、幸運による勝利であったといえた。しかし、その影には四〇〇〇人を超える戦死者を出し、五〇〇〇人を超える負傷者を出した。この戦いのこともあったのか、宇垣纒海軍中将は中津島へ帰還後、軍を退役、東北に引きこもることとなった。


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