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北大西洋

「メキシコ湾のフロリダ半島沖で両米国が交戦を開始した模様です。第六艦隊旗艦『香取』からの通報では、米合衆国第二〇任務部隊(機動部隊)が米連合国の哨戒にかかったようです」

「うむ、打撃部隊の位置は?」オペレーターに山口が問い正す。

「第六艦隊からの通報では、プエルトルコ沖東二五〇浬を北上中です」

「参謀長、打撃部隊は遊兵になっていると思わんか?」

「はっ、おっしゃる通りです。もともと、打撃部隊はわれわれが東海岸に接近するのを支援するための行動ですが、その役は米合衆国の第二〇任務部隊が果たす形になっています」

「うむ、ここはもう少し東海岸に接近させるほうがよかろうな?」

「はっ、私もそう考えます」


 当初の作戦計画では、聨合艦隊のうち、打撃部隊を北大西洋を北上させ、米連合軍の注意を引き、その隙に機動部隊の<雷電>四八機で攻撃目標である、ノーフォーク近郊のレーダーサイトを破壊せしめ、<流星>による三派攻撃を行い、その後打撃部隊による艦砲射撃を行う予定であった。しかし、現状では打撃部隊は敵潜水艦や敵哨戒機の接触を受けておらず、遊んでいる兵力、つまり、遊兵となっていたのである。


「参謀長、我らの位置は?」

「ノーフォーク沖東北東六〇〇浬です。途中、潜水艦と接触していますが、いずれも撃沈破していますので、われわれの位置は米連合軍には知られていないと考えます」

「攻撃隊発進には少し遠いか?」

「そうですね、<雷電>による攻撃なら可能です。予定では、<雷電>による攻撃も、<流星>による攻撃も、あと一〇〇浬西進してから実施されることになっています」

「よし、攻撃は今夜予定通り行う。打撃部隊には沿岸から六〇〇浬西に航路を取らせよう。連絡してくれ」

「はっ!」


 こうして、移転暦一二年一二月八日○○三○、米連合海軍最大の軍港である、ノーフォークに対する攻撃が決行されることとなったのである。第一次攻撃隊はF-6戦闘機<雷電>四八機による周辺のレーダーサイトの破壊とされた。四八機のうち、半数の二四機は○四式対レーダー誘導弾を二発搭載、残る二四機のうちの二二機はは護衛のための対空装備、AAM-4対空誘導弾四発を搭載、最後の二機には、電子戦ポッドを搭載しての出撃とされた。


「しかし、<雷電>は大きいな。それに黒い塗装のため、視認性がよくない。敵と誤認されることはないかね?参謀長」八隻の空母から発艦する<雷電>を旗艦『白根』の艦橋から双眼鏡で見ていた山口が後ろに控えている大井にいった。

「はっ、あの塗装はレーダー波を吸収、完全ではありませんが、するためのものです。機体形状とあの塗料により、敵レーダーには捉えられにくいものとされています。IFF(敵味方識別装置)のため、まず誤認することはないでしょう」


 F-6戦闘機<雷電>は空海共用機として開発された最初の機体であった。対空戦闘および対艦攻撃に優れてはいたが、対地攻撃はF/A-5戦闘攻撃機ほど高くはない。諸元は次のようになっていた。全幅一二m、全長一八m、全高四.二m、乗員一名、自重一万二八六○kg、全備重量二万五九○○kg、発動機石川島播磨重工F-7-IHI-100ターボファン推力九八○○kg×二、武装二○mmバルカン砲一基(弾数六三〇発)、空対空誘導弾×六、ASM-2対艦誘導弾×四など最大誘導弾八発を胴体内に格納、外部ポイントに三○〇〇kgまで搭載可能、最大速力M二.○、航続距離四八○○km(増槽使用)、戦闘行動半径一〇○○km、上昇限度一万八〇〇〇mというものであった。


「第一次攻撃隊の松永少尉より入電、我、攻撃に成功せり、ノーフォーク一帯のレーダー波停止を確認、なお、港湾には大型艦は確認されず、です」

「どうやら多くの艦はフロリダ方面に向かっていたようだね、参謀長」

「はっ、第二派攻撃隊は予定通り港湾施設の破壊を命じます。が、ニューポートニューズへの攻撃も予定通り行います」

「うむ、極力軍事施設、もしくは製造施設に限定するようにしてくれ」

「はっ、既に命じております」


 この世界でも、ノーフォークは米連合最大の軍港であり、後に三大軍港の一つと称されることになる。ちなみに、残る二つは、英国のスカバフロー、そして皇国の佐世保である。旧日本国最大の軍港であった横須賀は、内海に面したことから、多くが佐世保に移動したのである。ニューポートニューズは造船所が多く集まり、米連合国最大の艦艇建造数を誇るが、この世界では横須賀や佐世保、呉には劣る。が、ここを壊滅させられば、米連合は海軍の再建が大幅に遅れることとなる。未だ、ニューポートニューズに一極集中している状態であったからである。


 第二次攻撃隊が発艦してしばらく後、第一次攻撃隊が帰投、着艦作業が行われる。各空母の甲板、特に斜め甲板は真昼のように明るい。これはダイオード球が張り巡らされているからである。当然として、艦橋に設置されているサーチライトもそうであった。むろん、常に明るいわけではないが、夜間着艦の事故を防ぐための手段とされていた。もっとも、既に第三次攻撃隊の準備も行われているため、必要な明るさであったともいえた。


 敵機が向かっていたら危険極まりないが、現状では確認されていない。ちなみに、艦隊より三二〇km西に早期警戒管制機<ホークアイII>が飛行していた。米連合国主力戦闘機であるF-4戦闘機<ファントム>であれば、十分攻撃範囲に入る海域であったからである。もちろん、史実ほどの高性能ではないが、それでも、艦隊にとっては脅威となる航空機であったといえた。


「第二次攻撃隊の村田中佐より入電、我、敵機の迎撃受くも、攻撃に成功せり、です」

「やはり迎撃を受けたか」

「はっ、おそらく沿岸監視、もしくはコーストガードによる通報ではないかとおもわれます」

「第三次攻撃隊はどうする?」

「はっ、ほぼ壊滅させたと考えられます。まず偵察を行うべきであると本官は考えます。その結果で判断すべきかと思われます」

「偵察にはどの部隊を出す?」

「『雲龍』の<雷電>隊を出そうかと考えています」

「よかろう。任せる」

「はっ、直ちに準備にかかります」


 そんな中、南から北上している打撃部隊から凶報が彼らの元に届いたのである。


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