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マルタ島沖海空戦

 移転暦八年五月一二日、機動艦隊と戦艦部隊に護衛された第二海兵旅団乗船の「扶桑」型強襲揚陸艦および「おおすみ」型輸送艦一〇隻からなる、チュニス攻略部隊はポートサイトを出港した。遣欧艦隊全力による出撃となったのはそれなりの理由があった。皇国としては、チュニス攻略以外にも任務があったといえる。それは周辺の地図を見れば判るが、至近にシチリア島があるため、同島を航空攻撃するためであった。


 その目的は、マルタ島の安全確保とジブラルタルへの航路途中の航空攻撃軽減にあったといえる。遣欧艦隊の目的に、地中海の制海権確保とジブラルタルへの航路の安全化が含まれていたからである。むろん、史実でも行われたシチリア島上陸作戦は行われるであろうと思われるが、米連合国や米合衆国が参戦していない以上、英仏軍で行わなければならないであろうから、少しでも楽をさせたいと考えたからであろう。


 むろん、それだけではなく、皇国の輸送船団が英本土に向かう際の航路安全化のためにも必要であったからである。地中海のように狭い(太平洋や大西洋に比べてという意味で)海では、制海権と制空権を得ることは非常に重要であった。地中海南岸の安全確保と制海権および制空権の確保だけで、地中海航路の安全は増すからでもあった。


 遣欧艦隊は三群の輪形陣、先頭に第一機動艦隊、その四時後方二〇kmに第二機動艦隊、第一機動艦隊の六時後方二〇kmに戦艦部隊と輸送艦という形で西に向かっていた。出港して半日、第一機動艦隊で五隻、第二機動艦隊で四隻、合わせて九隻の枢軸軍潜水艦を撃沈していた。上空には、三二機の<流星>があり、戦艦部隊からも対潜ヘリが四機上がっていたが、潜水艦撃沈は彼らではなく、駆逐隊のアスロックによる攻撃であった。


「主席参謀、イタリア海軍が動かないのはなぜだろう。どう思う?」『白根』のCICで山口が大井に問うた。

「はっ、少ないといえ、マルタには戦力がありますから、あえて水上艦は出していないと考えられます。マルタより西方にはシチリア島およびサルデーニャ島がありますから、そこを根拠としている部隊が出てくると思われます」

「ふむ、戦力は判るかね?」

「英軍の情報によれば、対艦誘導弾装備の巡洋艦が八隻、駆逐艦が二四隻と見られています。空母は二隻有していると思われますが、本国近海から出ていないと考えられます」

「航空戦力は?」

「はっ、こちらも英軍の情報によれば約二〇〇機と見られていますが、うち、半数は爆撃機と見られています」

「ふむ、潜水艦はまだあるだろうね?」

「はっ、英軍の情報によれば、五〇隻は下らないとのことですから、これから出会う可能性が大です」

「よし、明朝○五○○時、チュニス攻撃隊は一機艦から計三二機、『飛龍』の八機は空対地誘導弾装備、他の二四機は通常爆弾装備、二機艦から計一六機の護衛隊、それとは別に『飛龍』から四機、対レーダー誘導弾装備で出そう」

「はっ、通達します」

「攻撃隊発艦の前に上空の直援隊を交代させよう。対空迎撃の第一陣は彼らだ。対潜警戒を厳となすよう通達せよ」

「はっ!」


 マルタ島沖、南南西一〇〇kmの地点で機動部隊はチュニス攻撃隊を発艦させた。むろん、対潜、対空哨戒を厳重に行いつつであり、一機艦『隼鷹』、二機艦『赤城』から一機ずつの早期警戒管制機E2D<ホークアイII>が上空に上げられていた。また、各空母から二機の<流星>が上げられ、CAPに就き、巡洋艦からは対潜哨戒ヘリが上げられていた。


 発艦作業もほぼ終わろうかという○五二三時、『赤城』の早期警戒管制機E2D<ホークアイII>、カラス三番機が北北西から接近する五〇機の編隊をそのレーダーで捉えていた。海上からの不審電波の発信、おそらくは潜水艦から、は二度確認されていたが、遠距離であったため、対処してはいなかった。


「カラス三番より入電、前方一時、大型機二六、小型機二四の編隊確認、大型機は高度六〇〇〇、速度三〇〇、小型機は距離二五〇、高度八〇〇〇、速度八七○」

四水戦『由良』搭載ヘリが敵潜発見、本艦より四時方向、距離五〇、深度三〇、接近中」

「マルタ島の影にいたか。全艦に通達、武器使用自由!各個に迎撃および攻撃に当たらせろ!」山口がいう。

「はっ、通達いたします」大井が復唱して通信参謀に伝え、さらにいう。

「電子戦戦闘はいかがいたしますか?」

「駄目だ、管制員やパイロット、それに艦艇乗員も慣れておらん!今回も禁止する。徹底させよ!」

「はっ、徹底させます」


 最新鋭電装を備えているから、当然として対レーダー、対誘導弾欺瞞などの各種ジャミング、スポットジャミングから広域ジャミングまで可能であるが、聨合艦隊所属の軍人においては訓練期間が短く、また幼少時から電子機器に慣れ親しんでいた現代人と異なり、操作が難しいため、これまで実戦において使用されることはなかった。訓練時に置いても、艦艇乗員はともかくとして、パイロットなど航空機搭乗員の場合、失敗が頻出、結果的に使用禁止が決定されたのである。もっとも、この時期ではそれほど高度な電子戦は行われていないため、特に問題視されてはいなかったといわれる。


 そういうこともあり、聨合艦隊所属軍人は現代航空機および艦船の能力の六割しか発揮できていない、というのが皇国軍上層部の認識であった。もっといえば、皇国構成州においても同様であり、各州においては訓練中であった。聨合艦隊においても訓練は継続されており、わずかなりとも対応能力は向上していたといわれている。


「直援隊、対空誘導弾発射!交戦が始まりました!」

「一六駆『松』『竹』『梅』、対潜ロケット弾発射!対潜戦闘が始まりました!」

「これで敵水上艦がいたら対応が難しいが、まだ現れないみたいだな・・・」山口がそこまでいったとき、オペレーターがいった。

「前方一〇時、水上レーダーに感あり、中型艦二、小型艦八、速度三〇、接近中!」

「五水戦を攻撃艦に指定、対応させろ!」

「はっ、五水戦を指定します!」

「前方一時より高速飛翔体六!、距離七○、速度速い!」

「四水戦に対応させろ!」

「四水戦を指定します!」


 迎撃隊は小型機二〇機撃墜、大型機二四機撃墜するも、対艦誘導弾六発を発射されてしまったが、四水戦が見事に撃破に成功していた。敵航空機は五機が引き返している。航空攻撃による艦隊への被害はなかったが、敵戦闘機の空対空誘導弾により、一機が撃墜された。が、搭乗員二名は脱出している。負傷していたが、命に別状はなかった。これは、敵戦闘機の発射した誘導弾に対する欺瞞が遅れたためであった。


 五水戦は対艦戦闘の結果、イタリア海軍巡洋艦一隻と駆逐艦六隻を撃沈、うち、巡洋艦と駆逐艦四隻は轟沈であった。残る巡洋艦一隻と駆逐艦二隻を大破漂流させ、戦闘終了後に魚雷による撃沈処分としている。乗員二六〇〇名のうち、救助されたのは六〇〇名に満たなかったとされている。対艦戦闘による被害は皆無であった。


 対潜戦闘において、イタリアおよび独海軍潜水艦一○隻を撃沈、四隻を撃破していた。浮上した六隻は乗員脱出後に魚雷による撃沈処分が行われた。後の調査で、このときの作戦に投入されていた潜水艦は独海軍一二隻、伊海軍が六隻あり、無事に基地に戻った潜水艦は独海軍潜水艦四隻であったとされている。なお、対潜戦闘における被害も皆無であった。むろん、魚雷攻撃は受けていたが、短魚雷によって迎撃に成功していた。


 後にマルタ島沖海空戦と称されるこの戦いにおいて、皇国海軍はほぼ完璧な勝利を収めている。そして、この後行われた一連の航空攻撃において、イタリアおよびヴィシーフランス軍を早期に降伏させる布石となりえた、とする軍関係者が多いのも事実であった。


相変わらず戦闘シーンがへたくそです。申し訳ないです。実際、海上自衛隊の艦ではこれほどの対話はないと思いますが、旧帝国海軍将兵の戦闘ということで書いています。リンク14機能など装備されているとしても、将兵が使えないという設定です。偵察衛星もあるという設定ですが、これも使えない。ちぐはぐですねぇ

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