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マダガスカル島へ

 移転暦七年九月一日、第一機動艦隊と補給艦二隻、タンカー二隻からなる部隊はインド洋を経済速度の一六ktで西進していた。急遽予定が繰り上げられ、攻撃開始時期が早まったことで慌しい出港となったが、ここまでは何の問題も発生していなかった。特に独潜水艦と接触することもなく、艦艇に異常は見られなかった。一日遅れで後方を進む第一艦隊と輸送船の方はといえば、途中独潜水艦と接触し攻撃を受けたが、対潜作戦のスペシャリストともいえる第一護衛艦隊および第三護衛艦隊がいたことで、被害もなく、逆に一隻を撃沈していた。


「主席参謀、妙だと思わんかね?第一艦隊の方は潜水艦と接触しているが、こちらは接触していない」

「ええ、長官。おそらく、セーシェルかモーリシャス、レユニオン辺りで待ち伏せしている可能性があります。いずれもフランス領ですが、ヴィシー側についています。バレンバンから得た情報では、多くのタンカーが何度も出入りしていたといいます。石油をマダガスカルも含めたこれら地域に輸送していたと思われます」

「先にこれらの島をたたいておくべきかな?手付かずでは後背を襲われる可能性がある」

「それはなんとも。偵察の結果によりますが、航空戦力が確認されれば、叩いておく必要があるかと思います。まさか、空母が二隻もインド洋に入ってるとは思いませんでした」

「機動部隊同士の対決になるかな?」

「あると考えたほうがいいでしょう。われわれは接触しませんでしたが、後続部隊が独潜水艦と接触していますから、マダガスカル島襲撃の可能性は感じているでしょう」

「彼らの勢力圏では戦わんほうがいいか。下手をすれば、空中、海上、海中の三箇所から攻撃を受けることになる」

「今回はASM-2(九三式対艦誘導弾)ですから、射程が一五〇kmあります。先に見つければ何とかなるでしょう。しかし、速度が遅いので迎撃される可能性があります」

「ふむ、どちらにしてもやるしかなかろうな」

「はっ!」


 大型輸送用外部燃料タンクと偵察ポットを装着した<流星>が二機、護衛用<流星>二機が『飛龍』から発艦していったのは一七○○時であったが、三時間後に無事帰艦する。その結果、少ないながらも航空機の存在が確認されていた。結局、海軍本部の立てた作戦、モーリシャスとレユニオンの各個撃破という、を実行することとなった。もっとも、この偵察は単なる偵察ではなく、○六式対地誘導弾の標的選定のためでもあった。目標は航空基地とされた。


 本来、旧日本国自衛隊は対地誘導弾(巡航誘導弾)を開発・装備しなかった。侵略的兵器であると、周辺国から批判を受けるからである。しかし、統一戦争終結後、その必要性を感じた皇国は、ASM-2の派生型として開発、装備していた。それは射程一五〇kmの空中発射巡航誘導弾ともいえた。中途半端とはいえ、対空迎撃誘導弾の射程外から発射できる対地誘導弾を欲していたのである。


「長官、明朝、各地に攻撃隊を差し向けます」

「うむ、攻撃目標は?」

「管制施設と滑走路の一時的な破壊です」

「セーシェルはどうする?」

「マダガスカル島から離れているため、あえて攻撃の必要はないかと」

「そうか、明朝攻撃隊を発艦させよう」

「はっ」


 ともあれ、翌早朝、それぞれの目標に対して二機の攻撃隊、二機の護衛戦闘機が編成され、発艦していった。攻撃機は○六式対地誘導弾四発とAAM-3空対空誘導弾二発、護衛機はAAM-4空対空誘導弾四発とAAM-3空対空誘導弾四発を装備しての出撃であった。モーリシャスには友永丈一大尉をリーダーとした四機が、レユニオンには板谷少佐をリーダーとする四機が向かった。


 その後も対潜ヘリの発艦、早期警戒管制機の発艦と続き、『飛龍』を除く三空母からの各四機のCAP発艦と続いた。対空、対潜哨戒のためである。その間も艦隊はマダガスカル島北部へと向かっていた。そうして一時間後、攻撃隊のリーダーである友永大尉から通信が入った。


「長官、友永大尉から入電、読みます。我、攻撃に成功せり、管制塔および滑走路の破壊を確認せり、以上です」大沢通信参謀がいう。

「どうやら友永大尉は基地上空に侵入したようです」

「板谷からはまだかね?」そこまで山口がいったとき、通信室からの電話が鳴った。大沢が受話器を取る。

「長官、板谷少佐からです。我、攻撃に成功せり。機銃攻撃が激しく、詳細未確認なり、以上です」

「長官、攻撃は成功したと見るべきです。これで、しばらくは両地域からの攻撃はないでしょう、むろん、警戒は必要ですが」大井がいう。

「うむ、ここからが問題だな。おそらく、攻撃の報はマダガスカルや独艦隊にも届くことだろう。対空対潜警戒を厳にせよ」

「はっ!直ちに通達します」そういった大沢が受話器を取る。


 攻撃隊が帰還し、上空の<流星>や対潜ヘリが交代して上がってまもなく、二kmほど西を、つまり、艦隊の最先頭を進んでいた『村雨』がレーダーで航空機を探知した。ほんの少し遅れて『白根』も探知する。


「艦隊より一〇時、航空機探知!距離二五〇、高度六〇〇〇、機数二!本艦に向かう!」電惻員が叫ぶように伝える。このとき、E2D<ホークアイII>は交代のため、一機も上空にいなかった、発艦直前だった『隼鷹』所属機が慌てて上がることとなった。


「主席参謀、上空の二機を攻撃に向かわせよ。攻撃隊の発艦準備をさせよ。敵艦は近いぞ!」

「はっ!」


 上空に在った機体は八機であり、兵装はすべてAAM-4を装備していた。ちなみに、このAAM-4は長射程(一〇〇km以上)を誇り、かつ、打ちっぱなしが可能という誘導弾であった。その理由は、誘導方式がアクティブ・レーダー・ホーミングだからであった。F/A-5<流星>のもっとも標準的な装備可能な兵装の一つであり、皇国空海軍の対空戦闘の主力装備であった。通常はこれを四発とAAM-3(短距離空対空誘導弾)四発装備して出撃することとなっていた。


 このとき、第一機動艦隊に向かってきたのは、フォッケウルフTa185Cであり、推力五〇〇〇kg級のエンジン二基を搭載した可変翼機とされ、外形的には史実のF-111に似ていた。後に判明するが、設計者は史実でも有名なクルト・タンク博士であったという。このときの二機はAAM-4の高性能さによって撃墜することができた。が、既に母艦への通信はなされた後であったことがわかる。


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