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プロローグ

今話は前作の焼きなおしてす。面白くないかもしれません。ですが、三話以降はまるっきり異なります。週一で更新できればいいかな、と考えています。

移転暦六年二月-秋津州南秋津市


 正確には秋津重工南秋津造船所というのであるが、日本皇国海軍聨合艦隊将兵からは秋津工廠といわれることが多い。なぜなら、本土の造船所、三菱重工や川崎重工、三井造船所、石川島播磨などの造船所よりも聨合艦隊艦艇に対する建造や改装が多く行われていたからである。そのドックの中でも六万トン級の船を建造できるといわれる、第七号から第一〇号ドックでは四隻の軍艦が竣工前の最終段階にあった。その艦名を『隼鷹』『飛鷹』『大鷹』『冲鷹』といった。


 竣工を控えたその艦形には軍艦として当然あるべき艦体に見合った艦橋は存在していなかった。最上甲板は平坦であり、艦幅に比べるとかなり広い甲板に申し訳程度、といっても実はかなり大きい艦橋が存在していた。そう、煙突は艦橋と一体型の傾斜煙突が採用されていたのである。それは知っている人が見ればすぐにわかる艦橋であった。そして、その艦体は「キティホーク』型航空母艦を参考にして設計されていた。


 そう、「飛龍」型と名付けられたこの航空母艦は第二次世界大戦後に日本国が建造した初めての航空母艦であった。その心臓部には時代錯誤と称されてもおかしくない、蒸気タービン機関を搭載していた。なぜなら、現代日本の軍艦、海上自衛隊では護衛艦と称した、にはガスタービン機関を搭載することが当たり前とされているからである。しかも、その出力は桁外れだといえ、現代日本艦艇では搭載したことのない二〇万馬力を誇る。ではあるが、竣工後に行われる引渡し式が終わらない限り、航空母艦とは呼べない、否、軍艦とも呼べない。引渡し式が終われば日本皇国海軍最大の航空母艦となる。


 この四隻の航空母艦建造は起工から竣工までわずかに一年という短期間で成された。むろん、日本皇国において以前から予定されたものではなかった。本来であれば、起工から竣工まで四年から五年の期間をかけて行われるのが旧日本国での建艦ペースとされていた。しかし、日本皇国を取り巻く環境がそれを許してくれなかったのである。内地では次型の「翔鶴」型航空母艦四隻が起工されており、こちらはゆっくりと時間がかけられており、再来年後半には竣工予定であった。


 それだけではなく、この地に現れた旧大日本帝国海軍艦艇二〇〇隻の改装および代艦建造が急ピッチで行われているのである。中でも、もっとも急がれているのが軽巡洋艦および駆逐艦であった。ご存知のように、戦艦や空母などの主力艦があっても、それだけでは艦艇を運用することができない。主力艦を護衛する護衛艦艇がなければ、艦隊行動は取れないのである。


 この四隻、実はこれまでの艦艇とは運用方法が根本的に異なる。旧日本国海上自衛隊においてはヘリコプター母艦の運用経験はあっても、固定翼機搭載の艦艇の運用経験はない。旧大日本帝国海軍では固定翼機の運用経験はあっても、ジェット機の運用経験はないのである。そう、これら四隻の搭載する艦載機は多くがジェット機であった。むろん、レシプロ機も搭載してはいるが、それは戦闘機ではない。ただし、一つだけ救いがあったといえるのは、日本皇国聨合艦隊が有するジェット機は全天候性であるのに対して当面の相手はそうではない、ということにあった。


 その七号ドックの隣、やや小さい六号ドックには戦艦『長門』が入っていたが、そちらも人の数が多く、作業もそろそろ終盤になろうかと思われた。海にあっては水線下に隠れる部分を露呈し、大穴が開けられていた。機関の換装工事を行っているのである。むろん、それ以外の工事も平行して行われている。しかし、内地でもそうであるが、戦艦の工事はそれほど進んでいるようには見えないが、それは主砲など大掛かりな工事を必要とする場所には手をつけられていないからであろう、と思われた。その『長門』を見ながら話す二人の男がいた。


「長官、喜ばしい知らせです。戦艦以外の艦艇は四月にはすべての改装工事および新造が終わる予定です。これで訓練には時間をかけることができると思われます。やはり『長門』がお気にかかりますか?」長官と呼ばれた男は日本皇国海軍(旧海上自衛隊)第一種軍装の襟に大将の襟章をつけていた。その男が声の主に答える。

「連絡武官か、ごくろう。『長門』はかって聯合艦隊旗艦を勤めていたからな。どう生まれ変わるのか見ておきたかったのだよ」

「申し訳ございません・・・」連絡武官といわれた男がすまなそうに声を返す。

「かまわんよ。まだ戦艦として手元に残るだけでも良しとせねばな。大井大尉、君たちにとっては歴史上の艦かもしれん。だが、我々にとっては思い入れのあるふねなんだよ。ましてやそれに乗り込んでいたわしとしてはな」

「はあ・・・」

「もっとも、戦艦であっても活躍する機会は少ないだろうがね。そう思っている」

「長官、私は戦艦はまだ有用であると考えています。現在確認されている敵性国家は空母を持っていますが、もし、海上で接触することがあった場合、艦隊決戦となる確率は高いと思われます。その場合、私は何の役にも立てません」

「大井大尉、そうはいうがな、現代戦においては砲雷撃戦は起こりえんよ。起こるとしてもミサイル戦だろう。我々には想像も付かなかった戦い方であるが、それがために『長門』と『陸奥』を含めた戦艦は改装せざるを得なかった。理解はしているつもりだよ」長官と呼ばれた男、日本皇国聨合艦隊司令長官山本五十六海軍大将は『長門』から視線を外し、部下を見ながら言った。

「そうかもしれません。しかし、電子戦など自然の前では無力なことも事実です。そのときに役立つのは確実に相手を攻撃できる兵器、つまり、備砲を持つのは我々の主力護衛艦を見てもお判りかと思います。『大和』に搭載されている四五.七cm、『長門』と『陸奥』の四○.六cmは強力です」大井大尉といわれた男、日本皇国海軍連絡武官大井保海軍大尉はそう言葉を返した。


 この世界では精度はともかくとして、各国とも誘導兵器を装備していた。多くは大型のものであり、艦艇に搭載されているのは艦対艦誘導弾や艦対空誘導弾、艦対地誘導弾などであった。魚雷においても多くは誘導魚雷を装備していることが多かった。むろん、戦艦を保有している国は多数あったが、多くは誘導弾発射のプラットフォームとして運用されており、備砲による艦対艦戦闘は起こりえないとされていた。


「なるほどな、肝に命じておこう。ところで、重巡洋艦部隊の配備状況はどうかね?」

「はっ、六戦隊と八戦隊は習熟訓練中、それ以外はすべて揃っております」

「うむ、重巡洋艦はミサイル戦の中心として改装されているから、護衛艦がなければ主力は動けん。欧州に派遣することになるやも知れんからな。できるだけ急がせたいのだ」

「はっ、できるだけ早くこちらに向かわせます。「雪風」型は整備も終わり、いつでも動かせます。軽巡洋艦部隊もすべて動かせますのでいざというときには護衛部隊として付けられます」


 旧海上自衛隊で運用していた「はつゆき」型護衛艦の基本設計をそのままに、機関をガスタービンから蒸気タービンに換装し、備砲を一二七mm速射砲に換装、ヘリコプター運用能力を取り去って艦隊型駆逐艦として建造したものが「雪風」型であった。むろん、電装関係は最新のものを採用していた。


「イージスシステム、と言ったか、あの「あたご」型の搭載システムは。あれはすばらしいな。今回は間に合わなかったが、準イージスシステムを搭載した重巡洋艦群には期待しているんだよ。実は聞きたいことがある。艦隊司令部を重巡に置くことが可能か、その場合の長所と欠点を知りたいのだ」

「はっ、通信システムは充実しておりますので司令部を置くことは可能かと思いますが、艦隊防空の矢面に立つので被弾する危険があります。また防空戦闘中においての通信管制は難しいでしょう。空母は個艦防衛能力は高くありませんから、艦隊防空や対潜護衛はすべて護衛艦艇である重巡や駆逐艦に頼ることとなりますが、通信管制においては余裕があると思われます。ですので、対空護衛任務である重巡に司令部を置く場合は限られた状況になると小官は考えます」

「やはりそうか。長所より欠点のほうが多いか。仕方あるまい。空母に司令部を置くしかないか」


 「あたご」型護衛艦はいわずと知れた旧海上自衛隊二代目イージスシステム搭載護衛艦であり、艦隊防空の要といえる護衛艦であった。出現した重巡洋艦にはイージスシステム搭載の案も出たが、準イージスシステムとも言われる「たかなみ」型に準じた改装にとどめられていた。指揮艦艇としての運用は可能であろうが、戦時の今では常に防空戦闘の矢面に立つこととなり、被弾の可能性がもっとも高い艦艇といえた。そのため、司令部を設置することは非常に危険であると考えられていたのである。


「いいえ、一つ方法があります。時間を要することとなりますが」

「ほう、どんな方法だ?」

「「はるな」型および「しらね」型DDHを指揮巡洋艦として採用することです」

「退役予定ではなかったかね?あの四隻は」

「はっ、ですが、もともとは旧海上自衛隊護衛艦隊の指揮艦艇でしたから、通信機能は充実しています。確かに建艦から年数は過ぎていますが、いま少しでしたら十分働いてくれるでしょう。戦艦や空母に司令部を置くよりは有効であると小官は考えます」

「なるほど、いわれてみれば確かにそうだな。突貫工事で改装したわれらの艦艇よりも安定しているといえるな。時間がかかるとはどういうことかな?」

「はっ、航続力が短いので改装する必要があるかと思います」

「判った。上に話してみよう。何とかなるだろう」

「ありがとうございます」

「さてと、あまりここにいても仕方があるまい。ホテルに戻ろうか」

「はっ」


 数奇な運命に巻き込まれた人間たちの物語がこうして始まった。彼らのそして日本皇国はこの地においてどんな道を進むのであろうか。


一年で建造できないでしょうねぇ、普通。今の工業力と技術力でかつ、史実の第二次世界大戦前となれば可能であろうと判断しました。基本的に空母が好きなので海上自衛隊にあれば面白いと思っています。現実的には予算の都合上ありえないと思いますけどね。

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