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出会い

 ふと、空が綺麗だなあと思った。お昼時——学校の屋上から見上げた6月10日の空は雲一つない晴天だった。

 私は、屋上の柵に足をかけると柵をまたいだ。呑気に嗚呼、死ぬのかなんて思っていたりする。そして、ついに足を地面から離そうとしたとき。


「何してんの」


 と、不意に声がかかった。おかしいなと思う。来るときに誰もいないことを確認していたのに。


 私は足を一旦戻すと後ろを向く。見ると、お弁当を広げて食べていたであろうチャラい男が目に入った。


「誰ですか」

「んなことどーでもいいっての。何しようとしてたのか聞いてんだから。名前なんてあとで教えてやらぁ」


 自分の質問には答えさせる癖にと、思う。

が、どうせ死ぬんだからと渋々応じてやることにした。


「見たらわかるでしょう? ここから落ちて逝こうとしてるだけです」

「ほんと何考えてんだか。ちょっとこっちきなよ。そこ危ないし」

「嫌です」


 私の即答に、チャラい男は返答に困っているように見えた。


「んー、ならどうせ死ぬんでしょ? だったら、死にたい理由くらい教えてよ、ね?」


 そう言われると、妙に納得してしまう。

私は、またもや渋々柵をまたぎ、チャラい男がいる元へ向かった。


「で、なんで死にたいわけ?」


 私は、少々嫌な顔をしてやった。


「別に、あなたに関係なくないですか。強いて言うなら私、施設育ちなんですけど、それでイジメられてたんです。中学時代に。親から愛情もらってないやつが恋愛できるわけないだとかなんとかで。別に恋バナ的なものをした覚えはないんですが」


 言うつもりはなかったが、言い始めると勝手に口が動いてしまった。


「え? 別に施設で育っても恋愛していいっしょ。てか、愛情注いでもらってないとか偏見じゃね? わけわかんねぇ」


 こういう人でも不思議そうにするんだなと思う。


「だって、簡単に言えば、親なし=愛情なし。つまり、彼氏彼女作っても愛せないってことですよね」

「いや、好きになる時点である程度愛せてるだろ」

「確かに」


 思わず、納得してしまった。中学では毎日あれを言われていたから、それが自分の考えだと錯覚していたのかもしれない。そして私は、「あ」と続ける。


「そういえば、なんでここにいるんですか? 見るからに友達多そうですけど」

「ん? ああ、昼は一人で食うようにしてんだ。単に気分で。俺は校則違反しまくりだからな。教師も黙認してるし」


 自覚してるんだな。もっとやばいやつだった。


「やばいですね」


 私がそう言うと、向こうはちょっと気まずそうな顔をした。


「まあ、そこと虐めは置いといて、結局恋愛したいの?」

「したいかしたくないかと言われたら、うーん。好きな人ができたらしたいですね。あと、高校に私が施設育ちって知ってる人いないので虐めはもうないです。死のうとしたのは虐めも一部ありますが、失恋したときのことが怖いからです。だから、早めにリスクは断とうと思いまして」


 私が答えると、「ふーん」とつまらないのか理解できていなのかよくわからない返事をされた。


「なら、失恋しなかったらいいんだ?」

「まあ、そうなりますね」

「そっかあ。ねえ、名前は?」

「先にそっちが答えるべきじゃないですか」


 すると、男はあ、そういえばという顔をしてから、口を開いた。 


「悪い悪い。俺は高園葉琉。高校一年」

「あ、同級生だったんですね。私は落宮悠音です」


 高園は「そうか」とつぶやくと、口角をふっと上げた。


「なあ、落宮。俺たち付き合わね?」 

「あ、無理です」

「え!? 今の雰囲気で!?」


 確かに、ちょうど風が吹いて、髪がなびいていたし、それっぽい雰囲気で俗に言うエモい状況が再現されていた。が、それとこれは別である。


 私は嘘くさく咳払いすると口を開く。


「まず、金髪は校則違反。ピアスも校則違反だし、あと屋上へ来るのもここでお昼ご飯食べてるのも校則違反。校則違反まみれですね。あと、ネクタイが制服のものじゃない。靴下も黒色以外なのでアウト。それから、カラコンもアウトですね。あと———」


 そして、私は昼休みが終わるまで永遠に語り続けた。


そして思う。

——死ぬのは明日にでもしようと。




これからも、この作品を読んでいただけると嬉しいです!!

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