#1 妙なスキルをいただきました
いきなりだが、諸君はスライムを食いたいと思ったことはあるだろうか?
子供の頃、誰しもが頭に過っただろう……スライムの味はどんな味かと。
プルプルおいしいソーダゼリー?
コリコリ歯応えのあるひんやりスイーツ?
「どれ……スライムの刺身、試してみるか」
討伐したスライムを千切って、恐る恐る口に運ぶ。
「んぐっふ!?」
驚いたね。こんな食材がこの世に存在するとは。
口にした瞬間、粘膜に張り付く不快感。
噛んだらぶにゅっと潰れる気色の悪い歯応え。
中の液体が漏れると、鼻に突き抜けるは排水溝のような臭い。
酸っぱくて苦くて、とにかく臭い。
舌が溶けそうな程に痺れている……勿論悪い意味で。
何がスライムの刺身だこの野郎。
エイリアンのゲロじゃねえか。ふざけんな。
「調理が必要だなこりゃ……おぅえ”」
────
──
「んぁ? どこだここ?」
自分の店の厨房でタバコを吸おうとしたら、いつの間にかこんな場所に突っ立っていた。
確か、設備不良でガスが充満してて、そこでライターを付けたらなんか大爆発してそれで……あれ、俺もしかして死んだ?
脳内で情報整理をしていく中で、俺はある一つの答えにたどり着く。
「異世界転生した?」
本で見たことはあるが、まさか自分がするなんて。
まあ、いいか。過去は振り返らないタイプだ。
理由もわから見知らぬ世界にず放り出され、あてもなく平原を彷徨うこと数分。なんと村を発見した。
村に入り、村一番の物知りだという老人──ウィキーペ=ディアン老に話を伺った。
この世界について要約するとこうだ。
・ここは魔王と魔物が支配する魔の世界。
・数十年に一度【スキル】を持った人間が現れる。
・この世界は魔王軍との戦争が100年も続いており、慢性的な食糧難の時代。
・魔物は倒すと塵になってしまうので食料にできない。
ざっとこんな感じか。
そしてなんとビックリ俺がその【スキル】持ちだという。
ディアン老は魔力を感じ取れるらしく、それで見抜いたとか。
フッ、どうやら俺はこの世界でも選ばれし者らしい。
どんな【スキル】なのか聞いたら、なんとビックリ。
【強欲な料理人】というわけのわからん【スキル】だった。
魔物を塵化させずに倒せるらしい。
え、それだけ? なんだそれ?
よく知らないが、世界を救う超絶チート能力とか貰えるんじゃないのかよ。
ショボすぎるぞ俺の【スキル】よ。
項垂れる俺だったが、ディアン老は魔物を物資にできるなら、食料にもなるのでは? と呟いた。
俺に電流走る。
全てが結びついた気がする。
飢餓に苦しむ世界……塵化してしまう魔物……料理人の俺……そして魔物を塵化させない【スキル】と。
ああ、今分かったぞ。俺がこの世界に来た理由が。
俺が魔物を食材にし、そして料理して、世界から飢餓を救えということだ!
「料理人としての、腕の見せどころというわけだな」
何を隠そう俺は料理人である。
包丁を手に母から生まれ、コンソメスープの産湯に浸かり、食い初めでフレンチフルコースを食い尽くしたという、ナチュラルボーンの料理人。
1歳でフライパンを握り、3歳で都内一の天才料理人と評された。5歳になれば、自分の店を持つようにもなった。
そして、若干20歳にして3つ星レストランのシェフを務めた天才料理人──田部満秀とは俺のことよ。
俺はディアン老にもらった地図を頼りに、まずは王都に向かうことにした。




