スーツで泳ぐ
祭りのような騒ぎの橋を歩いていた。三百メートルはあるその橋をスーツ姿で何人かと話しをしながらわたっていた。橋を渡り切ると、堤防に降りた。一人がそのまま川に入った。見習って走ってスーツのまま川に入って泳ぎ始めた。先を行く一人に追いつこうと泳ぎ続けると川の半分近くまで来ていた。川岸から呼ぶ声がした。戻ることにした。衣類を着ていては重い体のはずなのに、そのような感覚はまるでなく、普通にクロールで泳いで反転すると岸までは平泳ぎに変更した。橋を歩く誰一人として泳いでいることを指摘する人はおらず、また他に川に入って来る人もいなかった。堤防に上がるとようやく水を含んだスーツの重さを感じた。これでどこへ行こうと言うのか。が、連れはそんなことはお構いなしに行こうと誘って来る。一つぶるんと体を震わせるとスーツは乾いてしまった。私は大人しく連れについて行くことにした。