一匹目 オッサン異世界に行く
私の名は猫街 史郎何処にでも居る、中年オッサンの四十代だ………太ってるが、まあ別に服と職業と苦手な、飲み会やらパワハラと経済的苦境以外は普通に暮らしてるね、生きる為に働く毎日だ………たまには趣味にお金使いたいなぁ~。
とある新年の冬の日、親父が亡くなり早数年の冬だった、その日は出戻りまあ親父が嫌いで一人暮らししてた妹が家に戻ったが、仕事は向こうのままなのでお正月でも三連休でも仕事だ、県内のコンビニの問屋関連なので仕方ない。
「次の唐揚げの、新作はなんだろうな…………」
妹曰く「知らん、その内に分かる」と無感情に言われた、少しは疲労で死んだテンションで無い方で、言って欲しいが。
「冬なのにアイスが売れて地獄、発注が元旦翌日が悪夢だったけど、まだ何故か売れててワケわからない」
私に言われても知らんがな、まあやる気出せよ妹よ。
そして母はと言えば、お正月過ぎの安売りを見に買い物に行った、まあ安く鏡餅やお正月グッズで食べられる安いのを、近くの物価が高い全国にあるあの店に行ったのだろう、もう一つの店は歩いて行くのに少し遠いからね。
そしてバカ親父の死因は、酒の飲みすぎによる馬鹿なアルコール中毒と、脳卒中も合併した臓器の病気だ。
まあ定年退職の酒の席で、腹踊りしながら酒を飲んで、陽気にぽっくりと逝き恥だらけの葬式だった、色々同情はされたが……………でもウケは良かったらしい、一応和気あいあいとした土方の建設会社だったし、宮大工の弟子入りしてたらしき親父だが結局、大工らしい姿は見た覚えはない…………そして、大抵休みはパチンカスかゴルフだったし、子供の頃の想い出の大半は母方の祖父母の家での想い出のみ。
あんまり親父が、私や妹を連れ遠出した想い出は少ない、某隣県のリスのランドに行って、観覧車に乗った位だろうか?
新年最初の三連休の初日、私は仕事始めで疲れた身体を労りつつ、ウェブ小説『異世界行ったらハーレムに本気出す』を、何となく読んでたが…………良いよね、モテる容姿に成って人生やり直すなんて、私には無理な事だと思う。
主に地球の食生活を知った魂で、異世界転生し選べない不味い飯を食べ生きるなんて、私なら記憶を消して転生したいもんだな、そうすれば美味い不味いの知識無く、その世界の食に順応出来る。
だけど出来れば地球より発展した世界で、今より政治と金に汚い天下りと官僚が居ない、クリーンな世界で将来の暖かな光すら見えない、未来を見る今より良い世界に、転生したいもんだ。
明日はどんど焼き前日だが、他ではたまに日曜日の朝や昼にどんど焼きをする、昔は日曜日の夜にどんど焼きをし、五円玉やお菓子を拾ったな…………小学生までだったけど。
私はウェブ小説を閉じ、少し甘いコーヒーでも飲もうと、ドリップ機械に電源を入れようとしたら、何やら音がする。
神経を研ぎ澄ませ、音が頭上の二階から木がしなる音がする……………、二階から音がする? 親父でも、あの世から逃げて来て二階に逃げ込んだか? まあ、帰って来なくて良いあの世に居ろ、酒を飲み過ぎた罪を清算しろ、だがら帰って来いとは頼んでないから、地獄で鬼に説教されに戻れ。
だがそう思っても、まったく事態は変わらない、普通に考えて古い家だし私の部屋の真上だし、もしかして野良猫でも何処かの古い壁の隙間から…………と少し期待をした。
だが猫の体重で、二階が軋む程やわな古い民家でもない、人間位の体重でない限り……………まさかな。
私は一応木の棒と、少しのチンチンと熱いお湯を湯呑みに入れ、戦闘態勢で二階に向かう…………湯呑みが熱い……失敗だ、マグカップにするべきだった。
階段の途中に湯呑みを置き、熱かった手を冷ます…………熱かったな…………失敗だ、だが二階に着き見ると不思議な生き物が居た、親父に翌年連れて逝かれた様に寝床で息を引き取った飼い猫の死から、未だに飼い猫が飼えないで居たがまさか巨大な猫が家に現れるとは。
向こうも私に気付いたみたいだ。
そして私は思った事を、この目に写る何か魔法使いなコスプレチックな青毛の猫に対して言う。
「音がしたから来たら、二階に巨大な猫が…………居る…………モフモフして良いよね?」
「何だこの人間、ヤバくね?」
こうして私は、異世界のケット・シーて不思議な亜人? 妖精族? に出会った、しかもダンディー声だが某ダンディーボイス声優の田○さんの声に似てる。
「……………巨大な猫が喋った、ケット・シーは地球に居たんだな………だが此処は日本だし、ヴェネチアではないけどな」
私は某懐かしいアニメを思い出しながら言う、水先案内人の素晴らしき女性主人公の物語を、まあ何故に居て何故に高校時代から集めたファンタジー小説を、このケット・シーが持ってるのか不思議だが、一応何が目的か聞かないと話しは進まないだろう、私は警戒しながら言葉を発する。
「着ぐるみの、変態泥棒なら倒す」
「我輩は泥棒ではない、異世界人を我等の世界に招待に来た者だ」
今ので思考が冷静に成った、私の本音を言おう。
「胡散臭い」
「胡散臭いと言うでない!」
本音だから仕方ない。
「それで、本当の狙いは泥棒か? 家は裕福ではないぞ?」
「違うわ、あとその不思議な四角い物はなんですかな?」
冬用の作務衣のズボンの、ポケットから取り出した私のスマホを指差し、怪しげなモフモフ…………もといケット・シーらしき着ぐるみが言う。
「犯罪者を、国家権力の警察に連絡する為さ」
「さっきの台詞と、今の台詞に矛盾無いか?」
「犯罪者には人権は無いと、何処かの大先生の小説が言ってたぞ」
「だから、我輩は泥棒ではない!」
納得出来ん、本当にケット・シーか確めた……………、近くに行き一応一言言ってから。
「少し確認させて貰う……………」
「何故か凄く怖いのだが……………て、我輩に抱き付くな! 体臭を嗅ぐな…………くすぐったい」
「この毛触り、この温かさ…………本物だと!?」
私は驚いた、体臭が何故か獣臭くないのに。
「だから、異世界人を招待に来たと言っただろうがぁ!」
そんな事を言われて、『はい、そうですか』では済まないのが世の中の摂理なんだよ、一応異世界の亜人だか妖精だかのケット・シーよ。
「それにしても暗いし、寒いな……………」
「年明けの冬だし、暗いのは引き戸で閉めてるからな………二階より一階の方が楽だし、暖房の灯油を二階に運ぶ程面倒な事は無い」
「・・・・・今、冬なのか?」
「ああ、新年を数日過ぎた冬だな、寒いから私の部屋で話さないか?」
寒いから、このモフモフに提案した。
「………………何もせんだろうな?」
「・・・・・・・」
「オイ!?」
焦ったように大声を出す、コスプレ姿のケット・シー………意外に面白い異世界の客人だ、本当に異世界から来てればね。
「冗談だ」
まあ、猫じゃらしが通用するか見たい好奇心はある、あと今牛乳しか猫の飲み物無いが、猫に牛乳は腹を壊すリスクが高いし…………お湯で良いか。
「私は猫街史郎だ、モフモフさん」
「我輩はモフモフではない、アステネリア王国の大賢者ガリレオである、名はガリレオだぞシロウ」
何故に片言で、私の名を言う………ガリレオさんよ。
こうして一応自己紹介はしたが、何とも聞き覚え在る名前だった、あと大魔法使いであり天才魔道師であり(自分で天才魔道師て自称だろう?)、そして大賢者らしい…………大賢者てジジイに成った権威在る魔道師だと思うが、全くガリレオさんからそんな風な威厳はまったく感じない、そう威厳の威の字もまったくだよ。
こうして私は、この異世界の大賢者ガリレオと出会ったが、何か何処かで聞いた様な名前だな……………、ヨーロッパのサラブレッドだったかな?
「靴は履いて無いよね? ガリレオさん」
「さっき脱いだから、問題ない」
さっきまで履いてたのかよ、後で二階を掃除だな……絨毯の下は畳だし余り湿気をあの部屋に入れたくはない、本が湿気を吸ってヨレヨレに成る。
「何とも不思議な構造の、小さな家だな」
「うっさわ!」
此れでも大正時代の家らしいし、前の家主は一室しか使って無かったらしいし、しかも大工なのに親父はまったく家を綺麗に維持する気無いし、まったくエセ大工だったな……………親父は。
「私より身長低いわりに、私より恰幅良くない」
「うるさいですぞ、此れは寒いから毛が立ってるだけだ!」
コスプレケット・シーのガリレオさんを連れ、我が部屋に入るとガリレオさんが歓喜の声を上げる。
「素晴らしい、紙が普通に在る」
「まあ保々ポスターかコミックだが、それは触るなよ一応去年の畑の肥料をした時の、肥料の配合と作物の植えた資料だから…………、今年はどう作物を植えるとか、記録にもしてるファイルだから」
ガリレオはファイルの字を見て、ガリレオは一言言う。
「我輩には読めんが、此れが異世界の文字か……………字が汚いのは理解した」
「うっさいわ!」
まったく一言多いな、ガリレオさんにお湯出すのやめようかな……………。
「それにしても、コーヒーカップやティーカップが異世界にも在るとは、案外我輩の住む世界と変わらないかも知れん」
「まあそんなもんじゃない、さて私は飲もうとしてたコーヒーでも飲むかな」
「我輩は葡萄酒で」
葡萄酒て確か、ワインの事を指してたよね…………何て贅沢な、私は少しムッとしながらガリレオさんに言う。
「朝から飲む物ではない」
「あるのか!?」
目を輝かせるガリレオさん、だが私は出す気はない…………勿論、こんな訳の分からんのに飲ませるのは勿体ないから。
「ワインがな、だが出さんよ」
「そんな、酷いではないか!」
酷くはない、朝から飲むな…………私のワインを。
「仕方ないから、氷入りの水道水…………」
「冷たいではないか!」
「冷たく冷え冷えだ」
「うん? 水道とは何ですかな?」
水道が珍しいのか分からないが、仕方なく台所に案内し水道を見せたら…………。
「我輩が知る水道とは違うな、我輩の世界は自然界のエーテル魔力が結晶化して魔結晶に成り、それを道具にセットし魔力を流すと水が出るが、結晶石はピンキリが激しく相場が高い、魔法石でも水は出るが魔法石は高い」
近年のファンタジーの、魔石的なのかな? 結晶だから使ったら消えそうだな、魔法石も魔石的な物だよね? 精霊石とかファンタジーな、武器とかに嵌めるアーティファクトとかで無いよね?
ガリレオさんに、日本の水道の話をする。
「我が国も水道の水は安くない、私の街は比較的山沿いだから水源が豊富だから安いが、水道も不純物を浄化し飲める水にしてから、水道水として送ってるからな」
何故かガリレオさんは、私の話しに興味津々だがファンタジー水よりは、手間が掛かってると思うぞ、まあ水道代の費用の話を続けた。
「まあ水道の維持管理費で、水道代が発生するから無料ではないな」
「我輩の世界よりは、たぶん安いと思うぞ」
金額の比較が不明な為、何とも私は言えん。
「仕方ない、高級紅茶で」
「一般の安月給の家に、高級茶葉なんて無いよ!」
「…………仕方ない、紅茶なら何でも良い」
何か微妙に投げ遣りに言うガリレオさん、まったく贅沢な異世界のケット・シーだな。
「猫なのに紅茶かよ!」
「我輩はケット・シー族だが、普通に食事をするぞ…………まあ我が国の主食は魚だが」
私はズッコケそうな体勢を回避し、ガリレオさんに思った事を全力で言う。
「猫まんまや、ねぇーかぁー!」
「・・・・・・それより紅茶を」
何だかなぁ~
何か少し面倒な気がして来た、私は仕方なく白ワインフレイバー入りのハーブティ系の、ティーパックを出しお湯を注ぎガリレオさんに出した。
「何か不思議な物が出たな、でも色は紅茶…………香りは果物のあまい香りと、ワインの様な芳醇な香りが・・・・・」
普通、紅茶の香りを匂いで分かるかね?
まあ人間ではないし、異世界人的な存在だからだろう。
「まあ熱々《ちんちん》の熱い湯だから、ゆっくり飲んでくれ」
私は再び電源を入れ、フラットホワイトのカプセルをセットし、マグカップに少しグラニュー糖を入れてから、ハンドルを下げ機械を起動しコーヒーをマグカップに注ぐ。
「!? それはカフヴェか?」
私はガリレオさんに言う。
「違う、コーヒーだ………まあ、フラットホワイトてエスプレッソミルクコーヒーだが」
何か納得いかない顔のガリレオさん、前に某動画で『カフェ』と成る前は『カフヴェ』と、呼んでたとか見た様なきがする。
「あとこのテーブルは、何ですかな?」
人差し指から爪を出し、今度はコタツを聞く。
「コタツだよ、電気代勿体ないから二年前から部屋のテーブルに成ってるが」
熱心に電気コタツを見るガリレオさん、絶対にガリレオさんはコタツの魔の手から逃げれないだろう、だって猫だし歴代の猫は電気が無くても、コタツの暗い場所が好きらしく長く寝てる時もあった、電気を入れ暖かくしたら更に出ない。
そしてガリレオさんは、一息着き話を始めた。
「手短に説明すると、我が国にシロウの世界の技術が欲しい、我が国の国王キャスバル様がご希望であり、周りの国から技術革命の遅れは致命的なのだ」
ガリレオは、自分が仕出かした事は伏せ話した。
また一口紅茶を飲み、違う溜め息をするガリレオさん。
「そして無茶苦茶、我が王はめんどくさい」
「・・・・・一応家臣ですよね? ガリレオさん」
「認めたくはないが、我輩は王国上級魔道師ではある……………凄く面倒だが」
最後はもう本音だね、疲れた様な顔をし再び紅茶を飲む。
「私も暇ではないしな、そもそも三連休初日だし…………なにも言わずに家を出たら、色々騒ぎに成ると思うのだが」
「そこら辺は、我が世界の時風創造の女神様が何とかしてくれるらしい、我輩その女神様の眷属でもあるしその女神様も、シロウの世界のスイーツを所望している」
異世界の創造の女神か、何処かの女神アニメが数個頭に過る…………未成年には過激なのも含めて、まあ某お花畑女神や駄女神でなければ良いなと思う、とある高次元のマッドな女神も困るが…………て、異世界のお菓子を所望て、どんだけお菓子に飢えた女神様何だよ!
私は仕方なく、一回行ってから考える事にした。
「そっちの世界で、交渉してから決めるか…………」
まあ交渉と言っても、話してみて馬鹿らしいとか無理なら、その場からさっさと帰る気で居る、面白ければ居ても良いかなと少し思ったけど、そもそももう四十過ぎのオッサンに、異世界で需要は無かろう、無い筈だ…………たぶん。
「うむ、それでは参ろう…………さっきの場所に入口がそのままだし、我が国は今春だから寒くは無いぞ、今年《《後期》》の春だからな」
今何か、二回春が在る様な事を言われた様な…………まさかね、私は玄関に靴を取りに行き、エコバックに渋々ポテチとポツキンミルクイチゴ味と、余り出したくないお気に入りのクッキーと、一応財布とスマホと用心の為に獣追い払い用の、爆竹とチャッカマンをエコバックに入れた、装備はしたがたぶん目眩まし程度の、自己防衛アイテムにしか成らないだろう、一応暇潰しに学生時代の青春の『小説』を持って行く。
私はガリレオさんの案内で、何か家には無い鉄製の黒いマンション扉の様な扉が在り、ガリレオさんが開いた扉の先には木製の床に外から日が差し込み、暖かそうな温度が扉の先から吹いて来る。
家とも外の香りとも違う香り、知らない言葉が流れ込むと同時にガリレオさんは先に扉の先に行った、私も扉の前で靴を履き一歩扉を潜ると何か不思議な感覚が、身体を通過する……………何だ? 今の引っ掛かりの様な不思議な感覚は?
「ようこそシロウ、此処が自由都市ウィールデンだ」
私はふと窓を見ると、沢山のコスプレ外国人…………いや良くファンタジーとか、異世界物……………宇宙規模を除く以外の様な人々が歩く、白髪の頼り無さそうな赤目の少年冒険者らしき、軽胸甲冑や独特のツインテールの金髪の、女子高生らしき少女や鬼角した少女等が外に見える。
しかもガリレオさんの格好は、コスプレではなかったみたいだ。
「その格好は、コスプレでは無かったのか…………」
「何かは分からんが、何故か馬鹿にされてる気がするな」
「気のせいだ、ガリレオさん」
だが驚くべきは、下校中らしい異世界女子高生の服装だ、ファンタジーならその世界のマントやらローブやら制服ぽいのだが、この街だけかも知れないが…………セーラー服やブレザーの制服女子高生が居る、しかも日本レベルのデザインの制服だ。
「異世界だよな?」
私は一応ガリレオさんに聞くと。
「シロウからしたら、我が世界は異世界だな」
ガリレオさんはさも平然と言う、まあガリレオさんからしたら地球は異世界だしな、それにしても地球の北欧とかの外国人とは違い、日本人に近い顔の造りで目鼻立ちはヨーロッパ系に近いが、ヨーロッパの人より若く見える………要するに外国人の基準が、異世界では顔付きから全く同じではない。
「まあ、ガリレオさんも違うしな」
「何がだ?」
「地球の地域による、人の見分け方とか」
「確かに、ケット・シーでも産まれた場所では毛並みが違うな」
何か知らんが、ケット・シーあるある言われても分からん。
「・・・・・・知らんがな…………」
「まあ、その内分かるさ」
何か定住ありきな事を、ガリレオさんから言われてる様な……………。
こうして私は、死んでも転生もしてないが異世界にやって来た、お手軽にパスポートとか無しに…………ラッキーだよねたぶん、海外移住よりは安いよね…………たぶん。
次回に続くよ。
・魔法石 モンスター等を倒すとドロップする、属性付与された宝石であり売ればお金に成る、主に魔道具や魔科学等の技術開発に使われてるが、未だに魔道師の杖や武器の製錬などに使われてる希少な資源。
・魔結晶 自然界のエーテル魔力エネルギーが、高濃度の場所や結晶化し易い場所で発掘や採取される、因みに金山や温泉でも採取可能であり、魔法石よりも値は安価だが基本魔法石よりも扱いの幅が小さい資源。