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豹変

「憎い......殺したい......全てを壊したい......」


俺は何が憎い?誰を殺したい?なんで壊したいなんて思ったんだ?

頭の中でさっきの言葉がずっと繰り返されている。急にどうしたんだ、俺。

困惑していると先程のゴブリンジェネラルがとどめを刺しに来ていた。棍棒を振り上げ、凄まじい勢いで俺の頭を狙って振り下ろされる。

俺はあぁ、死んだなと思った。けど俺の身体は勝手に動いていて、持っていた短剣で攻撃を受け流していた。


『憎い、憎くて憎くて......殺したい程憎くて、もう何もかも、全て壊したい』


声がより鮮明に聞こえるようになった。男か女か分からない声でずっと頭の中で言葉が木霊している。

どうしてだろうか、心がとてつもなく虚しい。

まるで何か大切なものを失った後のような......そんな感覚だ。喜怒哀楽がなく、ただただ憎いという感情が心を支配している気がする。

なんとなく手に持っている短剣を見てみると前よりか禍々しさが増し、とてつもない魔力を帯びていた。武器屋はこの武器を拾ったと言っていたっけな......じゃあこの思いは前の持ち主の思いなんだろう、きっと。



「俺が、その憎しみを必ず無くしてやる。だから......今は俺に力を貸してくれ。俺に使われてくれ」


俺はそう言わなければならないような気がした。例え、この武器に意思がないのだとしても俺はこの短剣に込められた憎しみをなくしてやりたいと思った。だって、こんなにも虚しく、憎いという思いだけが湧き上がるんだから。

思いが伝わったのか、帯びていた魔力が俺に流れてくる感覚がする。


「ありがとうな。安心しろ、約束は必ず守るから」


魔力が増えたからといって身体の痛みが消えた訳じゃないし、実力が上がった訳じゃない。

けど......手数で押すことはできるだろ?


「『テイム オール』」


俺は短剣から得た魔力の殆どを使い、近くにいるゴブリンジェネラルを含むゴブリン全員に『テイム』を使った。成功したのは180体中134体、半数以上成功したんだから充分だ。更に細かく分けるとゴブリンジェネラル2体、ゴブリンソルジャー98体、ゴブリンウィザード10体、ハイゴブリンソルジャー20体、ゴブリンプリースト4体だな。正直ジェネラルがテイムできるとは思ってなかった、俺は結構運が良いらしい。


「じゃあお前ら、俺は頭を取りに行く。お前らは周辺のゴブリンを一掃しろ!!」

「「「クギャ!!」」」


痛みを我慢しつつ走っているとキングの横にいたクイーンらしきゴブリンがこっちに向かって走って来ていた。


「まずはお前か、『従魔召喚』」


俺とゴブリンクイーンとの間にジェネラルを二体召喚した。ちなみに片方はさっきまで俺を虐めていた奴だ。


「お前ら、こいつを殺すのを手伝え」

「「クギャォ!」」


俺が命令するとさっきまで手下だったんだよな?と疑いたくなる程なんの躊躇いもなく攻撃をしている。


「まぁ......いいか。おい、肩を貸せ」


片方のゴブリンジェネラルの肩を貸して貰い、クイーンの首を狙えるようにする。


「お前はもういいよ、さっさとキングの所に行かせてもらう『首狩り』」


ジェネラルの肩からクイーンの首めがけて飛び降りそのまま首を切った。無事着地したがそれなりに高かったからか足に強い衝撃がきた。


「『従魔召喚』」


後ろの方で待機させていたゴブリンプリーストを一体召喚身体を治癒させる。まぁ応急処置位にはなったのだろう、少しだが身体の痛みが軽くなった。奥の方を見ると気持ち悪い笑みが消え、代わりにこちらを強く睨んでいるゴブリンキングが見えた。


「さぁ、本番はここからだ。気を引き締めろよ、ジェネラル達」

「「クガァ!」」

「うん、いい返事だ」

「おい、貴様ァ!!よくも我が伴侶を殺してくれたな!!」


へぇ......キングなだけあってこいつはある程度知能があるんだな、少なくとも『魔獣言語』がちゃんと翻訳してくれるレベルの言葉を話せるくらいには。だが......


「あ゛?向かわせたのはお前なのによくもそんな事が言えるな。そもそも、お前の伴侶が死んだのはお前が無能なせいだろ?」

「ほぉ......我を煽るのか。良かろう、貴様を捻り潰してくれよう!!」


あぁ、どうしてこんなにも怒りが湧いてくるんだろうか?強い怒りと憎しみが心の底から湧き出てくる。


「死ねぇ!!」

「『従魔召喚 ゴブリンソルジャー』」

「クギャ!!グッ!?」

「『速切り』!」


ゴブリンソルジャーを壁、兼踏み台として利用してゴブリンキングの腕を切りつける。結果としては切り傷程度しか与えられなかった。


「貴様、容赦なく仲間を切り捨てるのだなぁ?」

「それで煽ってるつもりか?残念だが......なんの煽りにもなってないぞ?」

「ッ!!『王者の威厳』!!」


全身がとてつもないプレッシャーに襲われた。

まるで生物としての格の違いを見せつけられているようだ。クソッ!今のでゴブリンジェネラルが気を失ってるな......俺は遠くに居たから助かったらしい。


「はっ!スキル一つでも動けないのか?やはり、所詮は煽ることしかできない雑魚だな」

「言ってろ、ちゃんと煽る事すらできない低脳野郎が」

「ふんっ!所詮は負け犬の遠吠えだな。死ねぇ!」


目の前に大剣が迫ってくる、決めるならこのタイミングしかないな。奴は俺を戦えるギリギリの状態だと思っている、つまりは攻撃に隙しかないんだ。だから攻撃のタイミングなら......!


「『カースド スラッシュ』!!」

「ぐぬぅ!?」


俺の【憎い】という感情と【怒り】を短剣に込め、『呪い』に進化させて纏わせ『初級短剣術』にスキルとして落とし込んだ。心做しか心が軽くなった気がするがそれは一瞬だけでまた虚しさに包まれた。今更だが不思議な感覚だ、虚しさを感じるのに【憎しみ】や【怒り】も同時に感じるなんてな。そこには確かな矛盾が生じているはずなのに成立してしまっている。脳は一つなのに......なんでだ?


「ほう、我の腕を切り落とすか」

「どうだ、負け犬に腕を切断せれた気分は?」


勿論ここでも煽っておく。怒りに我を忘れて存分に暴れてくれ、その方が動きがより単調になって攻撃しやすくなるからな。ちなみに心の矛盾だが今は考えない事にした、今考えても仕方ないしな。


「残念だが......我は『再生』持ちだ」

「っ!?」


さっき切ったはずの腕が既に生え始めていた。

なんというか......すごい気持ち悪い!!筋肉がうにょうにょと動きながら治っていってるけど遅いし気持ち悪いわ!!


「さぁどうするテイマー!このまま斬り殺されるか!?」

「誰がこのまま殺されるって!?まずはその煩い口を塞いでやるよ!!『従魔召喚』!」

「ふぉが!?」


『従魔召喚』は目に見える範囲であればどこにでも従魔を出すことのできるスキルだ。そしてゴブリンキングは大口開けて叫んでる、じゃあやる事は一つしかないだろう。口の中にゴブリンソルジャーを召喚だ。

結果として相手は顎が外れ、口内に剣が刺さったのか口から血が溢れ出ている。召喚したゴブリンソルジャーは......あぁ、今口から吐き出されて殺されてしまった。まぁ......良いか。ゴブリン達が死んでも不思議と何も感じないしな。


「さぁ、そろそろ死んでくれ」

「っ!!!」

「武器もないのに突っ込んで来るなよ、低脳が『従魔召喚』」

「クギャ!」

「お前は囮を頼む」

「クギャ!」


ハイゴブリンを召喚して囮をやらせる。まぁどうせあの低脳は俺しか狙わないだろうから丁度いい壁だな。


「『カースド マナ』」


もう一度、最初と同じように短剣から感じる感情を魔力に変える。これで魔力は当分無くならないだろう。


「まずは目だな、『従魔召喚』いつまで気を失ってるんだ、起きろ」

「ク、クギャ!!」

「よし、起きてそうそう悪いが働いてもらうぞ。俺を乗せて突っ込め!」

「クギャ!」


ゴブリンジェネラルを一体だけ起こして足りない身長を補う。にしても......肩に乗るのってバランス悪いな、いつか乗り心地の良い魔物でもテイムするか。


「ッ!!!!」

「まずは目を削らせてもらうぞ!『速切り』!」

「ッ!?」


片腕を失い、顎も外れ、口内をズタボロされても戦う選択をするのには最早敬意を抱くな。

というか......いつの間にか【憎しみ】とか【怒り】とか薄くなった?虚しさも消えてるし.....まさか短剣から感じる感情を魔力に変換したからか?となると......首を切るのに火力不足では!?

ニロの魔剣なら......けど一気にここまで来るのは無理だし......よしっ!


「『従魔召喚』!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一体、ご主人様の身に何があったのだろうか?

二体目のゴブリンジェネラルによって吹き飛ばれたのは見えた、けどその先はゴブリン達が邪魔で見れなかった。

ただ分かっていることは一つ、ご主人様が何かで魔力量が一時的にとんでもなく跳ね上がったこと、そして従魔の数が一気に増えた事だ。

いくら知性の乏しいゴブリンとはいえ、こんなに多く従魔契約(テイム)を行えるのだろうか?多分ご主人様は問題を解決せず魔力量でゴリ押ししたのだろう、あとは運次第......にしては豪運過ぎないだろうか?もしかして......いや、絶対にそうだ。ご主人様はこの戦闘中にレベルアップを繰り返してる。一般的に考えて、成り立ての冒険者があそこまで怪我をして動ける訳が無い。たけどレベルアップを繰り返しているのだとしたら、HPが上昇してギリギリだけど動ける状態を保っているのかもしれない。というかそうじゃないと動けている説明にならない!


「っ!ホーリーちゃん!!」

「っ!!」


ニロさんに名前を呼ばれ、呼ばれた方向を向くとゴブリンがボロボロの剣を振り上げていた。『硬化』は間に合わない、咄嗟に動ける訳でもない。ニロさんが何かをしようとしているが多分、間に合わない。

あぁ、死ぬんだな。と、そう思ってしまった。


「クギャ!?」

「えっ.....?」


驚いた事に私を剣で殺そうとしたゴブリンの首から上をハイコブリンソルジャーが切っていた。辺りを見渡すと似たような光景があちこちで起こっている。

ご主人様は手数で押すつもりなんでしょうか......?

何はともあれ助かった、一旦ニロさんに合流してそれからご主人様の方に......

そう思っていたら気づいたらご主人様が真横にいた。


「え??」

「ごめんホーリー、手伝ってくれ。あのクソデカ野郎の首を取りに行く為に」


ご主人様が指差した先にはゴブリンキングがいた。

なんか口から血出てますね......あっしかも片腕失ってる、まぁ再生され始めてますが......って再生!?


「あ、あの、ご主人様!ゴブリンキングの腕が.......」

「あぁ、厄介な事に相手は再生持ちらしい」

「えぇ......」


やっぱりそうですよねぇ......って事は長期戦は不利、それにご主人様じゃあ火力不足って事なのでは?けど私はあまり火力の足しには......


「あの、どうして私を召喚したんですか?」

「あぁ、ニロをここまで連れてくる為だ。今からニロのいる位置に飛ばすから先に送ったゴブリン達と共にここまで来てくれ。頼んだぞ?」

「っ......!はい、任せてください!」


ご主人様から私に頼み事なんて始めての事だ、好きな存在に頼られて嬉しくない生物などどこにいるんでしょうか?


「それじゃあ、頼んだぞ!」

「はい、任せて下さい!!」


そう言って私はご主人様と別れた。にしてもご主人様......どこか楽しそうだった気がしますね?

アフタちゃん「えーっと......ハク二重人格??」

サブちゃん「いえ、違いますね」

アフタちゃん「だよねぇ......いや、短剣のせいっていうのは分かるんだけどね?だとしても自分の中で間違いだってしてたのに壁にしたのはちょっと......ね?」

サブちゃん「まぁ短剣の『呪い』を解放した状態のハクは短剣の意思とハク自身の意思が混合している状態ですしね、じゃないと虚しいのに【憎しみ】や【怒り】なんて感情持たないですよ。あっ、どっちがハクでどっちが短剣かは今はご想像にお任せします」

アフタちゃん「いやそんなの明白じゃん!?」

サブちゃん「ちなみに最後にホーリーが楽しそうだったと感じていますが、憎い相手を自分の思い通りにできている、なんて状況で楽しくない人間っていると思います?つまり、そういう事です」

アフタちゃん「というか毎回思うんだけどね?やっぱい旧作と違い過ぎ......」

サブちゃん「それじゃあ今回はここまでですね!!次回もお楽しみに〜!」

アフタちゃん「強引過ぎない!?」


※以下作者の弁明?解説?ネタバレ?なので読み飛ばして抱いて構いません


という訳で、どうも作者です。

いや〜今回のハクはハクらしくありませんでしたね〜普段なら絶対煽らないハクですが今はアドレナリンとか短剣の溜まりに溜まった『呪い』とかで性格変わってます。だから短剣の感情を魔力に変えた時に少し元に戻ってるんですよね。

今回の話はここまでにして本題に入りますね。

と言っても主に旧作との今後の違いですね、あっ旧作読んだこと無いって人は是非読んで下さると幸いです。

で、違いですが勇者関連だけだったのが主人公関連も変更になったんですよね。

勇者関連はまずメンバーの変更ですね、流石に多すぎたので四人に減りました。剣、杖、斧、盾の四人ですね。役割で言うなら剣はメインアタッカー、杖は回復兼魔法攻撃、斧はサブアタッカー、盾は守護兼回復ですね。

それで主人公関連なんですがまず従魔についてですね、ラス(スライム)関連が消え、短剣関連に変わりました。腕の中にスライムの核があって腕が伸縮自在とかもうテイマーじゃないじゃん......ってなったからですね。後はいわゆる成長イベントの発生ですね、今回の後に起きる師匠との訓練編がこれになります。訓練編では狐が従魔となります。この狐の正体は......旧作と変わらないです。

とまぁこんな感じになります、作者の気分次第で変わったりしますがそれでも良いよって方や面白ければ良いって方はこれからも読んで下さると幸いです。

また、それ以外の方はここまでご愛読ありがとうございました、続きも読んで下さいお願いします!

<(_ _)>〈 ゴン!〕


という訳で作者でした〜


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