表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

1,仮)ですが、売られました7

「アルドラムダ様、さきほど少し休まれていたので、歩けますか?

今日は、このまま出発をします。まだ、魔物が近くにいる可能性もあるので、ここは早く離れたほうがいい。昨日の方たちの血の匂いで、他の魔物や獣が集まってくるかもしれない。

それに、近くの村へ行って、魔物が出たことも伝えてあげなければ、新たな被害がでるかもしれません」

カイトは荷物を背負うと、すぐに歩き出す。

私も慌てて自分の荷物を取ると、カイトの後を追いかけた。

死んだ人たちからは荷物をもらってくるけど、近隣の村への注意喚起はしてあげるんだ。非道な面もあるし、優しい面もあるし、何というか、カイトという人物はある意味では、とても合理的なのかもしれない。

死んでしまった人には荷物はもう必要ないけど、今生きている人には必要な情報なら教えてあげたほうがいい。もしかしたら情報提供を上手に利用して村に恩を売っておいて、何か対価をもらってくるかもしれない。

そんなことを考えていたら、カイトは本当に村からたくさんの芋や大根など野菜をもらって戻ってきた。

「私、あなたが一緒にいてくれて本当に心強いわ」

カイトの両手に持たれた麻袋からのぞく野菜たちをみて、感嘆の溜息と一緒に本心からの気持ちがするりと口からでる。

危険な時の咄嗟の判断力や状況を把握する能力、行動力、なおかつ利用できるものは何でも利用する頭のよさもあり、この人と一緒にいれば、最悪飢え死にすることはなさそうだという安心感がある。サバイバルに持っていくならナイフじゃなくて、このカイト様を選びたい。

私から崇拝の目を向けられて、カイトは居心地悪そうに苦笑しながら、村からもらってきた荷を詰め替える。

ああイケメンは、はにかんでもイケメンだわ。180度、360度、どっからみてもイケメンだわ。

カイトのきれいな横顔に見惚れていたら、急に視線がこちらを向きドキリと心臓が跳ねる。

み、み、みてたのがばれたかしら、、、

「アルドラムダ様、あの、、、大変申し上げにくのですが、、、」

カイトは申し訳なさそうな、言葉を探しているような、神妙そうな顔をしている。

ごめんなさい、ごめんなさい、勝手にイケメンを鑑賞してました、ちらちら盗み見ては首筋セクシーとか、おしりもキュートですね、とか心の中で呟いてました、ごめんなさい、ごめんなさい。

声には出してないので、許してください。

「これからは、少し話し方に注意を向けてくださると助かります」

「は、話し方?」

てっきり私のちらちら盗み見ていた視線に気が付いていて、実は不快に感じていますとセクハラで訴えられると思っていたら、そうではないようだ。少しほっとした。

「これから町が近くなるにつれ、人に偶然出会う可能性もあります。できるだけ、そういう偶然は無いように私が気を付けますが。ただ、町に着くとそこにはたくさんの人がいます。

その、アルドラムダ様はとても男らしいといいますか、その、話し方は見た目と差異があるといいますか、、、」

前半の、できるだけ人目にはつかないように配慮するという隠密行動宣言や、それなのに町には普通に入るつもりのようだ、というのは疑問だけど、それを聞いても教えてくれないことはもう知っているので、もやもやするけどスルーする。

「あ、ああ、そうよね。見た目は男性なのに、話し方は女性っぽいって、こっちの世界ではやっぱり珍しいのかしら」

「こっちの世界?」

まあ、あっちの世界でもマイノリティではあったけど、多様性ではあったからと思っていたら、やばい、うっかり口が滑った!!

「い、いやいや、き、記憶があいまいで、えっと、世界じゃなくて、今の世の中的には、そういう人たちっていないのかしらって。あはははははは」

手段が、笑ってごまかすしかないって、どうなのよ、自分。心の中で泣きたくなる。

「いなくはないですが、どうでしょうか、ほとんどの人は隠しているかもしれないです。中には、隠さないで、堂々としているような人もいますが、、、、」

カイトが何かを思い出したように、すごく嫌そうな顔をした。

男の人から告白でもされたのかしら、まあ、これだけイケメンで性格もよくて、いろいろ優秀なら、老若男女を虜にしても不思議ではないよね、、、と思っていたら、カイトが大きく息を吸って、「とにかく」と続ける。

「これからアルドラムダ様は、男性的な話し方を心掛けてください。私と二人の時もそうです。うっかりなどないようにお願いします」

「わ、わかったわ、じゃなくて、わ、わかったぜ」

こ、これでいいのかしら、、、、とカイトをみたら、カイトの顔には不安しかないという表情が浮かんでいる。

が、頑張るから、お願いだから、そんな残念そうな子をみるような視線を向けないでーーー。

心の中では泣きながら、空元気で、カイトに「そんな顔するなって、大丈夫大丈夫」と笑ってみせた。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ